16 / 112
16 嫌われ者
しおりを挟む
天蓋付きのベッドで目覚めた。隣には誰もいない。ぼんやりした思考のまま起きあがろうとして、腰に走る痛みで断念した。顔が熱くなる。枕に突っ伏した。
あられもない嬌声を上げさせられ、限界まで広げられて奥深くまで抉られた。あんな夜は知らない。あんな強引なくせに惹かれてしまうような手管なんて知らない。同じ男なのに。同じ行為をして来た筈なのに。絶対に同じじゃない。かつてのお相手に謝りたくなるほど、よすぎて何度泣かされた事か。
体が清められている。起き上がれないから諦めた。そんなの想定済みなんだろう。だいたいモノのサイズが違う。あんなの受け入れたら普通は裂ける。媚薬的なものを使用された、弛緩させる効果のあるものだろう。癖になったら機能として果たせなくなる予感がして怖い。何度も続けては無理だ。
「大丈夫か? 今日はゆっくり休め。食事は部屋に運ばせよう」
首筋にキスされる。
見上げればもう着替えているハーツの姿がある。
「そうさせてもらうよ」
溜息混じりに言うと、優しい笑みを浮かべる。
「愛してる」
頬にキスされてたてがみにくすぐられる。直に触ったたてがみの感触を思い出した。愛してるは昨夜も何度も言われた。そう言ってもらえるくらいには、この体を気に入ってくれたのだろうと思う。痩せて肋が浮いているけど、受け入れる事は出来た。大量の精液を奥に受けたのも覚えている。未だに奥にある気がするし、なんなら入ってる気もする。
「行って来る。夕食は一緒に取ろう」
それには頷き返して、名残惜しそうに髪を撫でて行った。ドアを出て行くまで見送って、交代で黒服の執事が入って来て、サイドテーブルに朝食と飲み物を用意して出て行った。
至れり尽くせりだ。でも未だに処遇は明かされていない。飽きられたら捨てられる気がしている。だってあんな高級な獣人なんだ。こんな30歳のおじさんなんて相手にせずに、もっと若くて見目の良い人を手に入れられる。知っているマサキとかトオルとか。良いに決まっている。
ハーツの従者は皆人だ。もし可能性があるのなら、従業員として働くのも良いな。雑用とか庭作業とか、いろいろありそうだ。でもここには爬虫類の獣人もいるのか。ハーツの領地にはいないよね? いたら会いたくない。たとえ暴力を振るった獣人ではないとしても、見るだけで思い出してしまうから嫌だ。
ぼんやりと庭を見る。中庭なのだろうか、向かいにも建物がある。十字に切った白い道があって、中央に噴水がある。芝生に白い花が咲いている。小さな鳥が飛んでいる。普通の光景の普通の日常。いつまでこうしていられるのかな、と思う。
ドアが開く。ノックの音が聞こえなかったな、ぼんやりしていたからかなと思っていると、早足で近づいて来た人が薄いカーテンをガッと開けてシーツを引っ張った。
「まだいたの?」
と冷たく言われ、反対側へ落ちるように降りた。腰が立たない。身勝手にシーツを剥がし、布団をバサバサする。埃でゴホゴホしていたらベランダへ追いやられた。部屋の掃除が始まる。邪魔だったんだ、仕方がない。
獣人語が聞こえて来る。彼らは日本語と獣人語を使い分けている。でも分かる。冷めた視線が時折こちらを向いて、嘲笑うから、馬鹿にしているか文句を言っているかのどちらかだ。
「人ごときがいい気になるな」
最後に聞こえた日本語だ。おかしいな、彼らも人なのでは?
良くわからないが、彼らに嫌われている事だけは理解した。
あられもない嬌声を上げさせられ、限界まで広げられて奥深くまで抉られた。あんな夜は知らない。あんな強引なくせに惹かれてしまうような手管なんて知らない。同じ男なのに。同じ行為をして来た筈なのに。絶対に同じじゃない。かつてのお相手に謝りたくなるほど、よすぎて何度泣かされた事か。
体が清められている。起き上がれないから諦めた。そんなの想定済みなんだろう。だいたいモノのサイズが違う。あんなの受け入れたら普通は裂ける。媚薬的なものを使用された、弛緩させる効果のあるものだろう。癖になったら機能として果たせなくなる予感がして怖い。何度も続けては無理だ。
「大丈夫か? 今日はゆっくり休め。食事は部屋に運ばせよう」
首筋にキスされる。
見上げればもう着替えているハーツの姿がある。
「そうさせてもらうよ」
溜息混じりに言うと、優しい笑みを浮かべる。
「愛してる」
頬にキスされてたてがみにくすぐられる。直に触ったたてがみの感触を思い出した。愛してるは昨夜も何度も言われた。そう言ってもらえるくらいには、この体を気に入ってくれたのだろうと思う。痩せて肋が浮いているけど、受け入れる事は出来た。大量の精液を奥に受けたのも覚えている。未だに奥にある気がするし、なんなら入ってる気もする。
「行って来る。夕食は一緒に取ろう」
それには頷き返して、名残惜しそうに髪を撫でて行った。ドアを出て行くまで見送って、交代で黒服の執事が入って来て、サイドテーブルに朝食と飲み物を用意して出て行った。
至れり尽くせりだ。でも未だに処遇は明かされていない。飽きられたら捨てられる気がしている。だってあんな高級な獣人なんだ。こんな30歳のおじさんなんて相手にせずに、もっと若くて見目の良い人を手に入れられる。知っているマサキとかトオルとか。良いに決まっている。
ハーツの従者は皆人だ。もし可能性があるのなら、従業員として働くのも良いな。雑用とか庭作業とか、いろいろありそうだ。でもここには爬虫類の獣人もいるのか。ハーツの領地にはいないよね? いたら会いたくない。たとえ暴力を振るった獣人ではないとしても、見るだけで思い出してしまうから嫌だ。
ぼんやりと庭を見る。中庭なのだろうか、向かいにも建物がある。十字に切った白い道があって、中央に噴水がある。芝生に白い花が咲いている。小さな鳥が飛んでいる。普通の光景の普通の日常。いつまでこうしていられるのかな、と思う。
ドアが開く。ノックの音が聞こえなかったな、ぼんやりしていたからかなと思っていると、早足で近づいて来た人が薄いカーテンをガッと開けてシーツを引っ張った。
「まだいたの?」
と冷たく言われ、反対側へ落ちるように降りた。腰が立たない。身勝手にシーツを剥がし、布団をバサバサする。埃でゴホゴホしていたらベランダへ追いやられた。部屋の掃除が始まる。邪魔だったんだ、仕方がない。
獣人語が聞こえて来る。彼らは日本語と獣人語を使い分けている。でも分かる。冷めた視線が時折こちらを向いて、嘲笑うから、馬鹿にしているか文句を言っているかのどちらかだ。
「人ごときがいい気になるな」
最後に聞こえた日本語だ。おかしいな、彼らも人なのでは?
良くわからないが、彼らに嫌われている事だけは理解した。
2
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説


僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。

王子様から逃げられない!
白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる