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6 朝食バイキング
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地下2階でドアが開く。左右に伸びた廊下があって、彼は左へ歩いた。薄暗い廊下は少々カビ臭い。
重そうなドアを開けると中から食べ物の匂いがして、続いて食器の音や会話のざわざわ感が伝わって来る。彼に続いて部屋に入り、部屋の中の明るさに目がシバシバした。
「このトレー持って好きに食事を取って、向こうの席で食べるんだよ。一緒に食べる?」
トレーを取ってさっさと行く彼に頷いて見せた。
ビジネスホテルの朝食バイキングだ。違うのはフルーツやデザートが充実している点とカップラーメンが種類豊富に山積みにされている点だ。
紘伊はまだいろいろ疑っていて緊張もしているから、ホットコーヒーと食べやすそうな菓子パンを選択して、彼が取り終わるのを待った。連れ立って奥の席へ向かう。左右白壁の簡易な部屋で、広い部屋内は区画があり、最初のテーブル区画の奥にはソファが置かれた談話室のような場所があり、その奥にはクッションが並べられ、寝転んでくつろげるシアタールーム的な造りの場所があった。既視感を覚える。
「おはよう」
テーブルにつく彼の横に座れば、向かいに座っていた20歳くらいに見える彼が挨拶をよこして来た。彼と一緒におはようと返して普通さに困惑する。
「僕はマサキ、こいつトオル、親に売られたって」
「ヒロイです」
だんだん分かって来た。この部屋の既視感と違和感にも。
「もしかしてここ、猫カフェ的な感じの……」
そう呟くとマサキが白けた視線を向けて来た。
「僕らが猫的な?」
向かいのトオルが笑う。
「そんな可愛らしい感じじゃないけどね」
獣人カフェの反対の人間カフェなのだろう。そうするとこの先にあるのは、獣人とおしゃべり? 獣人と添い寝? ゾクゾクしたものが足元から這い上がる。それは紘伊にとってご褒美でしかない。
「むしろ援交部屋でしょ、例えるなら」
マサキがポテトを口に入れながら言う。中学生から聞くセリフではない。
「援交って、君が?」
トオルならまだ分かる。成人済みだろうし。だがマサキは未成年だ。違法営業になる。そう思っているとマサキが察したのかため息混じりに言う。
「獣人の成人は15歳なんだって」
そういう問題なのか? 獣人国の法が適応される? ではここは獣人国内ということ? ワクワク感が透けて見えたのか、トオルが乾いた笑みを見せた。
「ヒロイさんは獣人好き? でもそんなの初めてだからだよ。そのうちウンザリしたり気が狂いそうになったりするよ」
トオルの視線が背後に向く。
「あの辺りの人はもう1月以上ここにいるらしいよ」
視線を辿れば、重い空気を纏った人が数人クッションの間で寝転んでいる。
「娯楽は限られているし外出できないし、エッチもできないし。中には獣人嫌いな人もいて、毎日恐怖に怯えているんだよ」
部屋の隅に身を寄せて、クッションに隠れるように寝転んでいる人。ぶつぶつと何かを言っている人。震えて目の焦点があっていない人。
「ふたりは大丈夫なの?」
マサキとトオルが視線を合わせる。
「僕らは固定客に指名されてるし、もうすぐ身請けされる予定だから、まだマシかな」
マサキが言うとトオルが頷いている。
「俺はさ、けっこう良い家柄の長男だったんだけど、ゲイバレして売られたんだ。売られ先が獣人でも身分のある奴の所でさ、この先の生活は保証されてる。ここへは検査とか管理の為にいるだけなんだよ」
「そんな制度があるのか?」
人と獣人の間に結ばれた身請け制度なのだろうか。
「知らないよな? 人間社会の闇なんじゃないの?」
マサキが白けた声でつぶやいた。
重そうなドアを開けると中から食べ物の匂いがして、続いて食器の音や会話のざわざわ感が伝わって来る。彼に続いて部屋に入り、部屋の中の明るさに目がシバシバした。
「このトレー持って好きに食事を取って、向こうの席で食べるんだよ。一緒に食べる?」
トレーを取ってさっさと行く彼に頷いて見せた。
ビジネスホテルの朝食バイキングだ。違うのはフルーツやデザートが充実している点とカップラーメンが種類豊富に山積みにされている点だ。
紘伊はまだいろいろ疑っていて緊張もしているから、ホットコーヒーと食べやすそうな菓子パンを選択して、彼が取り終わるのを待った。連れ立って奥の席へ向かう。左右白壁の簡易な部屋で、広い部屋内は区画があり、最初のテーブル区画の奥にはソファが置かれた談話室のような場所があり、その奥にはクッションが並べられ、寝転んでくつろげるシアタールーム的な造りの場所があった。既視感を覚える。
「おはよう」
テーブルにつく彼の横に座れば、向かいに座っていた20歳くらいに見える彼が挨拶をよこして来た。彼と一緒におはようと返して普通さに困惑する。
「僕はマサキ、こいつトオル、親に売られたって」
「ヒロイです」
だんだん分かって来た。この部屋の既視感と違和感にも。
「もしかしてここ、猫カフェ的な感じの……」
そう呟くとマサキが白けた視線を向けて来た。
「僕らが猫的な?」
向かいのトオルが笑う。
「そんな可愛らしい感じじゃないけどね」
獣人カフェの反対の人間カフェなのだろう。そうするとこの先にあるのは、獣人とおしゃべり? 獣人と添い寝? ゾクゾクしたものが足元から這い上がる。それは紘伊にとってご褒美でしかない。
「むしろ援交部屋でしょ、例えるなら」
マサキがポテトを口に入れながら言う。中学生から聞くセリフではない。
「援交って、君が?」
トオルならまだ分かる。成人済みだろうし。だがマサキは未成年だ。違法営業になる。そう思っているとマサキが察したのかため息混じりに言う。
「獣人の成人は15歳なんだって」
そういう問題なのか? 獣人国の法が適応される? ではここは獣人国内ということ? ワクワク感が透けて見えたのか、トオルが乾いた笑みを見せた。
「ヒロイさんは獣人好き? でもそんなの初めてだからだよ。そのうちウンザリしたり気が狂いそうになったりするよ」
トオルの視線が背後に向く。
「あの辺りの人はもう1月以上ここにいるらしいよ」
視線を辿れば、重い空気を纏った人が数人クッションの間で寝転んでいる。
「娯楽は限られているし外出できないし、エッチもできないし。中には獣人嫌いな人もいて、毎日恐怖に怯えているんだよ」
部屋の隅に身を寄せて、クッションに隠れるように寝転んでいる人。ぶつぶつと何かを言っている人。震えて目の焦点があっていない人。
「ふたりは大丈夫なの?」
マサキとトオルが視線を合わせる。
「僕らは固定客に指名されてるし、もうすぐ身請けされる予定だから、まだマシかな」
マサキが言うとトオルが頷いている。
「俺はさ、けっこう良い家柄の長男だったんだけど、ゲイバレして売られたんだ。売られ先が獣人でも身分のある奴の所でさ、この先の生活は保証されてる。ここへは検査とか管理の為にいるだけなんだよ」
「そんな制度があるのか?」
人と獣人の間に結ばれた身請け制度なのだろうか。
「知らないよな? 人間社会の闇なんじゃないの?」
マサキが白けた声でつぶやいた。
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