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本編
26 獣と獣人
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「シン様がお手伝いをしたいって言われた時は驚いたけど、ずいぶん上手になりましたね」
アルルが来た時に料理を手伝いたいと言って驚かれたけど、もう何度も手伝っているからだんだん慣れて来た。なにより俺が作ったと言ってブラッドに食べてもらうのが嬉しくなって来ている。といってもアルルの指示を受けて言われた通りに作っているだけなのだけど。
「掃除は必要ないって言われた時はびっくりしたよ」
俺がそう言うと、アルルも一緒に驚いて見せてくれる。
「そうなんですよ、ブラッド様のお力はすごいですよね? このお屋敷はブラッド様のお力でいつも綺麗なんて、でも孤児院は違うんですよ? お掃除も慣れないとダメだってブラッド様が」
「しつけってことかな? ブラッドって変なところまで気づくよね」
学校に掃除の時間があったのと同じだろうか。分担していろんなことに挑戦するのも教育ってことかな。
「騎士団に所属されていた時に掃除や料理もしたって言っていましたから、シン様もおねだりしてみたらどうですか?」
アルルはそう言って笑った。
「えーブラッドの手料理か。なんか響きが良いよね、手料理」
ブラッドは何が作れるのかなと思うと我慢できなくなる。
最近はブラッドと普通に話せるようになっていて、今は同居人っていう感じ。でも全部お世話になっているから、居候ってところか。
「ブラッド、ブラッド、料理作れるって本当?」
夕食の席でそう言うと、ブラッドは手を止めて俺を見た。
「作れると言っても大なべ料理ですよ? スープや煮込み料理とあとは焼くだけのものです。アルルのように家庭料理は作れませんよ?」
「っていうかさ、狩りとかした? 遠征で狩りして焼いて食べたり、野営したり」
俺の頭の中にあるのはゲームの世界とアニメの世界。懐かしい想像にわくわくする。
「シンはそういうものに興味があるのですか?」
「実際は無理だな、俺、体力も力もないし、剣も使えないから。でも憧れはあるよ」
「憧れですか? またかわったものに憧れるんですね」
「ここってさ、ブラッドの力に守られているけど、外はどうなってる? 確か自治領には獣がいるんだろ?」
俺が気軽にそう言うと、ブラッドは表情を硬くする。
「シン、獣人たちにとってその辺りのことは繊細な問題なのですよ。私には良いですが、あまり口にしない方が良いです」
ブラッドに窘められて、やっと気づく。人を襲いに行くような獣と、獣人。人にとってみれば最近まで変わらない存在だった。
「ごめん、ありがとう」
「いいえ、不思議に思うのも仕方のないことですし、私に聞くのは大丈夫ですから」
そう言って区切りをつけたブラッドは、獣と獣人のことを教えてくれた。
「元々の獣と獣人との関係は良くわかっていません。ただ知能が低く、言葉を操れない者を獣として、知能が高く、言葉を操ることのできる者を獣人としています。獣の姿をとっていても、人語を話せる存在もあるので、非常に難しく、見ただけではわからないこともあります」
「えーそうなの? じゃあ、戦乱の時に出て行ったのはどっち?」
「あれらは獣人の変化後です。きっちり統制が取れていたでしょう?」
確かに、人語は話していなかったけど、命令通りに動いていた。
「じゃあ、昔、人や家畜を襲っていたっていうのが獣っていうことだよね」
「そうですね、どうでしょうか。ある程度の集団になると、その指揮を執る獣人がいて、総ている場合もありますから、その場合は獣ですが、獣人を刺激することになりますし。力を付けた獣が覚醒して人語を解する場合もあります。ですが、シンの言っている人や家畜を襲うというのは、人から見た獣の話ですよ。獣から言えば、食料を手に入れている、襲われた報復をしているにすぎません。獣たちは弱肉強食ですから」
「確かに、そうかも」
そう言って頷くと、ブラッドは口に手を当てて笑った。
馬鹿にされているようで、少し剥れると、ブラッドが悪かったという表情をする。最近はそういう表情も見せてくれるようになって、とても自然に話せて嬉しい。
「シンに狩りは無理ですよ。だって子どもが転んで少し怪我をしただけで、大丈夫だったか、手当はしたのかと心配ばかりしているでしょう。それなのに獣を狩って肉になどできると思えません」
「あーそうかも。ここにいる獣人はみんな耳が生えているとか尻尾があるくらいだから、違和感がほとんどないけど、よく考えたらお肉が食べれなくなりそう」
「シンにはキノコや木の実を採っている方が良いのでは? 今度、一緒に行きますか?」
一緒に行く。その言葉に嬉しくなる。
「行く! ブラッドの結界の外が気になっていたんだよ。前は一瞬で外だった……から……」
思わず言ってしまって後悔した。ブラッドはそれに気づいたのだろう。でも何事もなかったように会話を続けてくれる。
「外に出るのなら、髪と目の色を変えないといけませんね。薬を用意しておきますね」
「うん、ありがとう、楽しみにしてる。でも髪と目の色はこのままで良い。変えたからって良いことなかったから」
「そうですか? わかりました」
ブラッドは優しい。俺がここにいるのを許していてくれる。なんの見返りも求めず、俺の好きなようにさせてくれている。俺はずるい。それに甘えてただの同居人のまま、何の答えも出さないまま。ブラッドが求めているのは、恋人としての俺だ。死ぬまで一緒にいると誓う相手。そう思うのに、出て行くことも、ブラッドに応えることもできずにいる。
アルルが来た時に料理を手伝いたいと言って驚かれたけど、もう何度も手伝っているからだんだん慣れて来た。なにより俺が作ったと言ってブラッドに食べてもらうのが嬉しくなって来ている。といってもアルルの指示を受けて言われた通りに作っているだけなのだけど。
「掃除は必要ないって言われた時はびっくりしたよ」
俺がそう言うと、アルルも一緒に驚いて見せてくれる。
「そうなんですよ、ブラッド様のお力はすごいですよね? このお屋敷はブラッド様のお力でいつも綺麗なんて、でも孤児院は違うんですよ? お掃除も慣れないとダメだってブラッド様が」
「しつけってことかな? ブラッドって変なところまで気づくよね」
学校に掃除の時間があったのと同じだろうか。分担していろんなことに挑戦するのも教育ってことかな。
「騎士団に所属されていた時に掃除や料理もしたって言っていましたから、シン様もおねだりしてみたらどうですか?」
アルルはそう言って笑った。
「えーブラッドの手料理か。なんか響きが良いよね、手料理」
ブラッドは何が作れるのかなと思うと我慢できなくなる。
最近はブラッドと普通に話せるようになっていて、今は同居人っていう感じ。でも全部お世話になっているから、居候ってところか。
「ブラッド、ブラッド、料理作れるって本当?」
夕食の席でそう言うと、ブラッドは手を止めて俺を見た。
「作れると言っても大なべ料理ですよ? スープや煮込み料理とあとは焼くだけのものです。アルルのように家庭料理は作れませんよ?」
「っていうかさ、狩りとかした? 遠征で狩りして焼いて食べたり、野営したり」
俺の頭の中にあるのはゲームの世界とアニメの世界。懐かしい想像にわくわくする。
「シンはそういうものに興味があるのですか?」
「実際は無理だな、俺、体力も力もないし、剣も使えないから。でも憧れはあるよ」
「憧れですか? またかわったものに憧れるんですね」
「ここってさ、ブラッドの力に守られているけど、外はどうなってる? 確か自治領には獣がいるんだろ?」
俺が気軽にそう言うと、ブラッドは表情を硬くする。
「シン、獣人たちにとってその辺りのことは繊細な問題なのですよ。私には良いですが、あまり口にしない方が良いです」
ブラッドに窘められて、やっと気づく。人を襲いに行くような獣と、獣人。人にとってみれば最近まで変わらない存在だった。
「ごめん、ありがとう」
「いいえ、不思議に思うのも仕方のないことですし、私に聞くのは大丈夫ですから」
そう言って区切りをつけたブラッドは、獣と獣人のことを教えてくれた。
「元々の獣と獣人との関係は良くわかっていません。ただ知能が低く、言葉を操れない者を獣として、知能が高く、言葉を操ることのできる者を獣人としています。獣の姿をとっていても、人語を話せる存在もあるので、非常に難しく、見ただけではわからないこともあります」
「えーそうなの? じゃあ、戦乱の時に出て行ったのはどっち?」
「あれらは獣人の変化後です。きっちり統制が取れていたでしょう?」
確かに、人語は話していなかったけど、命令通りに動いていた。
「じゃあ、昔、人や家畜を襲っていたっていうのが獣っていうことだよね」
「そうですね、どうでしょうか。ある程度の集団になると、その指揮を執る獣人がいて、総ている場合もありますから、その場合は獣ですが、獣人を刺激することになりますし。力を付けた獣が覚醒して人語を解する場合もあります。ですが、シンの言っている人や家畜を襲うというのは、人から見た獣の話ですよ。獣から言えば、食料を手に入れている、襲われた報復をしているにすぎません。獣たちは弱肉強食ですから」
「確かに、そうかも」
そう言って頷くと、ブラッドは口に手を当てて笑った。
馬鹿にされているようで、少し剥れると、ブラッドが悪かったという表情をする。最近はそういう表情も見せてくれるようになって、とても自然に話せて嬉しい。
「シンに狩りは無理ですよ。だって子どもが転んで少し怪我をしただけで、大丈夫だったか、手当はしたのかと心配ばかりしているでしょう。それなのに獣を狩って肉になどできると思えません」
「あーそうかも。ここにいる獣人はみんな耳が生えているとか尻尾があるくらいだから、違和感がほとんどないけど、よく考えたらお肉が食べれなくなりそう」
「シンにはキノコや木の実を採っている方が良いのでは? 今度、一緒に行きますか?」
一緒に行く。その言葉に嬉しくなる。
「行く! ブラッドの結界の外が気になっていたんだよ。前は一瞬で外だった……から……」
思わず言ってしまって後悔した。ブラッドはそれに気づいたのだろう。でも何事もなかったように会話を続けてくれる。
「外に出るのなら、髪と目の色を変えないといけませんね。薬を用意しておきますね」
「うん、ありがとう、楽しみにしてる。でも髪と目の色はこのままで良い。変えたからって良いことなかったから」
「そうですか? わかりました」
ブラッドは優しい。俺がここにいるのを許していてくれる。なんの見返りも求めず、俺の好きなようにさせてくれている。俺はずるい。それに甘えてただの同居人のまま、何の答えも出さないまま。ブラッドが求めているのは、恋人としての俺だ。死ぬまで一緒にいると誓う相手。そう思うのに、出て行くことも、ブラッドに応えることもできずにいる。
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