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本編
17 戦乱の代償
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領主が王城からの使者に呼び出された。
領主はそれに応じ、リヒトとアイザックに領を任せ、数人で領を発った。
俺はというと、普通に生活している。
主に孤児院に行って子どもたちと遊んでいることが多い。あとは羊や牛の世話。野菜の収穫も手伝った。はじめは俺の見た目に驚いて、遠巻きにしていたみんなだけど、子どもは慣れるのが早かったし、思ったことを口にしてくれるので、自分の気持ちを話すきっかけになってくれた。子どもたちと話す俺を見て、大人たちも打ち解けてくれたんだと思う。すごく普通の生活ができて、異世界生活ではじめて日常を暮らしていると思えた。
「今日はね、シュヴァルツの手入れを習った。俺の他にさわらせないから、あいつ。みんながすごいねって言ってくれて嬉しかったよ」
夜、アイザックの部屋で、今日何をしていたかをお互いに話す。それが日課になりつつあった。
「牛小屋の藁の上で昼寝してたと聞いたが? 無防備すぎやしないか?」
「ええ、誰に聞いたの? 誰にもみつかってないって思ってた」
この領の人たちは本当に優しくて、普通に接してくれる。アイザックの恋人だという認識があるから、性的な目で見て来る人もいない。だから外で昼寝もできる。
「おまえにその気がなくとも誘っているんだぜ? いたいけな若者を惑わして犯罪者にするなよ?」
「えーひどい、その言い方はひどいよ。タグ、付けた方がいい?」
そう言ってポケットからタグを出すと、アイザックの前に掲げる。これを付けたらアイザックにも襲われない。しかもブラッドや自治領の者に操られる可能性がある。タグに施された付加が何か、見ただけではわからないから、警戒しておいて損はない。
アイザックはソファに座って資料を読んでいたんだけど、立ち上がり、俺の前に来て、キスをした。
「国が替わった。タグも有効かどうかわからんが、付けて欲しくねえな」
「ついにそういう発表がされたの?」
アイザックに抱き着いて、アイザックに甘える。
「おやじと定期的に連絡を取っているんだが、おそろしいぜ? 領民はそのままなんだが、領主は殆どが獣人になったらしい。それを受け入れさせる為に、領主会議が開かれている。ここにもそのうち獣人が来る予定らしい」
俺は驚いてアイザックを見る。獣人? ますます異世界っぽくなった。
「獣人っているの? アイクは見たことある?」
「ねえよ、あの巨大な獣でも常識外だっていうのに、獣人? 想像もつかねえ」
ああ、そうか、と思う。俺は日本でそういった漫画やアニメを見ているから、獣人っていうとああいう感じかな?って思える。でもここでは獣人なんて想像もできない架空のものなんだろう。
「ごめん、俺、わくわくして来た」
「は? 訳も分からん状況になっているんだぞ、わくわくってなんだ?」
「だって猫耳の生えた子とかふさふさのしっぽとか生えた人間型の生き物なんだよ? もふもふさせてくれるかな?」
そう言うとアイザックは俺の顔を両手で挟んでぐりぐりした。
「あのなあ、凶暴で悪いヤツだったらどうするんだ? うちには子どもがたくさんいるんだ。あの子たちにこれ以上、辛い思いをさせたくねえよ」
俺はアイザックの言葉を聞き、自分の考えなしが恥ずかしくなった。
「ごめん、ちゃかすような話じゃないね」
アイザックに抱きつく。ホント、なんで俺なんか好きになってくれたのかわからない。いつ見放されてもおかしくない。付き合ってみたら思ってたのと違ったってフラれるの、よくある事だ。
アイザックの手が頭を撫でる。大丈夫っていうように、優しく抱きしめてくれる。
「いや、俺が悪く考えすぎた。もうすでに事は始まっている。受け入れなければならんのに……悪いな」
「アイクは悪くない。そういう優しいところ、すごい好き。俺の悪いところ指摘してくれるのも」
「おまえは俺には甘えてるんだろ? そういうの知ってるから気にするな。子どもたちに何かあった時、一番に助けるのはおまえだよ。その点は疑う余地もねえ」
そうか、何でも考えなしに話せるのは甘えているからか。そう言われたら心の中が楽になった。許されるっていう甘い疼きがソワソワする。
「アイク」
熱を込めた目で見上げれば、アイザックはじっと見つめて、はあっとため息を吐く。
「おまえな、毎日じゃ辛いかと思って、今日は我慢しようと思ってたんだ。そんな目で誘うな」
「誘ったのはアイクだよ。俺がしたくなるようなこと、言うからだよ」
アイザックの肩から首に手を回し、背伸びをする。引き寄せてキスをすれば、アイザックは逃げられない。
「疲れてる? だったら一回で良いんだ、俺を愛して」
欲しいって顔をしていると思う。日が経つにつれて、アイザックの側にいられないかも、という危機感が大きくなる。俺がその時、どういう選択をするのか怖い。
「おまえに誘われて一回ですむわけねえよ。ぜんぶ、くれるんだろ?」
深く唇を合わせ、舌を絡める。荒い息を交わして、熱に浮かされる。
好きだ。アイザックが好きだ。なのに自分を信じられない恐怖がある。考えるのが怖くて、アイザックに抱かれている間は忘れていられるから、甘えている。
「ぜんぶ、アイクのものにして」
願いを口にしたら涙が溢れた。隠すように背を向け、寝室に向かった。
領主はそれに応じ、リヒトとアイザックに領を任せ、数人で領を発った。
俺はというと、普通に生活している。
主に孤児院に行って子どもたちと遊んでいることが多い。あとは羊や牛の世話。野菜の収穫も手伝った。はじめは俺の見た目に驚いて、遠巻きにしていたみんなだけど、子どもは慣れるのが早かったし、思ったことを口にしてくれるので、自分の気持ちを話すきっかけになってくれた。子どもたちと話す俺を見て、大人たちも打ち解けてくれたんだと思う。すごく普通の生活ができて、異世界生活ではじめて日常を暮らしていると思えた。
「今日はね、シュヴァルツの手入れを習った。俺の他にさわらせないから、あいつ。みんながすごいねって言ってくれて嬉しかったよ」
夜、アイザックの部屋で、今日何をしていたかをお互いに話す。それが日課になりつつあった。
「牛小屋の藁の上で昼寝してたと聞いたが? 無防備すぎやしないか?」
「ええ、誰に聞いたの? 誰にもみつかってないって思ってた」
この領の人たちは本当に優しくて、普通に接してくれる。アイザックの恋人だという認識があるから、性的な目で見て来る人もいない。だから外で昼寝もできる。
「おまえにその気がなくとも誘っているんだぜ? いたいけな若者を惑わして犯罪者にするなよ?」
「えーひどい、その言い方はひどいよ。タグ、付けた方がいい?」
そう言ってポケットからタグを出すと、アイザックの前に掲げる。これを付けたらアイザックにも襲われない。しかもブラッドや自治領の者に操られる可能性がある。タグに施された付加が何か、見ただけではわからないから、警戒しておいて損はない。
アイザックはソファに座って資料を読んでいたんだけど、立ち上がり、俺の前に来て、キスをした。
「国が替わった。タグも有効かどうかわからんが、付けて欲しくねえな」
「ついにそういう発表がされたの?」
アイザックに抱き着いて、アイザックに甘える。
「おやじと定期的に連絡を取っているんだが、おそろしいぜ? 領民はそのままなんだが、領主は殆どが獣人になったらしい。それを受け入れさせる為に、領主会議が開かれている。ここにもそのうち獣人が来る予定らしい」
俺は驚いてアイザックを見る。獣人? ますます異世界っぽくなった。
「獣人っているの? アイクは見たことある?」
「ねえよ、あの巨大な獣でも常識外だっていうのに、獣人? 想像もつかねえ」
ああ、そうか、と思う。俺は日本でそういった漫画やアニメを見ているから、獣人っていうとああいう感じかな?って思える。でもここでは獣人なんて想像もできない架空のものなんだろう。
「ごめん、俺、わくわくして来た」
「は? 訳も分からん状況になっているんだぞ、わくわくってなんだ?」
「だって猫耳の生えた子とかふさふさのしっぽとか生えた人間型の生き物なんだよ? もふもふさせてくれるかな?」
そう言うとアイザックは俺の顔を両手で挟んでぐりぐりした。
「あのなあ、凶暴で悪いヤツだったらどうするんだ? うちには子どもがたくさんいるんだ。あの子たちにこれ以上、辛い思いをさせたくねえよ」
俺はアイザックの言葉を聞き、自分の考えなしが恥ずかしくなった。
「ごめん、ちゃかすような話じゃないね」
アイザックに抱きつく。ホント、なんで俺なんか好きになってくれたのかわからない。いつ見放されてもおかしくない。付き合ってみたら思ってたのと違ったってフラれるの、よくある事だ。
アイザックの手が頭を撫でる。大丈夫っていうように、優しく抱きしめてくれる。
「いや、俺が悪く考えすぎた。もうすでに事は始まっている。受け入れなければならんのに……悪いな」
「アイクは悪くない。そういう優しいところ、すごい好き。俺の悪いところ指摘してくれるのも」
「おまえは俺には甘えてるんだろ? そういうの知ってるから気にするな。子どもたちに何かあった時、一番に助けるのはおまえだよ。その点は疑う余地もねえ」
そうか、何でも考えなしに話せるのは甘えているからか。そう言われたら心の中が楽になった。許されるっていう甘い疼きがソワソワする。
「アイク」
熱を込めた目で見上げれば、アイザックはじっと見つめて、はあっとため息を吐く。
「おまえな、毎日じゃ辛いかと思って、今日は我慢しようと思ってたんだ。そんな目で誘うな」
「誘ったのはアイクだよ。俺がしたくなるようなこと、言うからだよ」
アイザックの肩から首に手を回し、背伸びをする。引き寄せてキスをすれば、アイザックは逃げられない。
「疲れてる? だったら一回で良いんだ、俺を愛して」
欲しいって顔をしていると思う。日が経つにつれて、アイザックの側にいられないかも、という危機感が大きくなる。俺がその時、どういう選択をするのか怖い。
「おまえに誘われて一回ですむわけねえよ。ぜんぶ、くれるんだろ?」
深く唇を合わせ、舌を絡める。荒い息を交わして、熱に浮かされる。
好きだ。アイザックが好きだ。なのに自分を信じられない恐怖がある。考えるのが怖くて、アイザックに抱かれている間は忘れていられるから、甘えている。
「ぜんぶ、アイクのものにして」
願いを口にしたら涙が溢れた。隠すように背を向け、寝室に向かった。
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