普通の男子高校生ですが異世界転生したらイケメンに口説かれてますが誰を選べば良いですか?

サクラギ

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本編

13 告白

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「アイザックの領はどこにあるの?」

「東国境門に近い位置にある小さな領だ。ここから一晩休んで、次の日の夕方くらいには着くよ」

 馬車が並んで道に連なっている。背方向に王城があるから皆んな逃げている人たちだ。獣の姿を見たら、内乱だけでなく自治領も加わったことが知れる。どこまで争いが広がるかわからないから、できるだけ遠くに避難するのだろう。

「アイザックも貴族だって言ってたね」

「ああ、一応な。祖父が功績の褒美として受けた肩書きと領地だ。小さいし、貧しい領だが許してくれ。なにせ金が無くてな、領民を養うのにも精一杯で、上の兄弟も皆、働きに出ているくらいだ」

 アイザックが照れたように笑う。

「俺は、貴族とか、わからないから……」

 俺は異世界から来たから、領地と言われても思いつくのはゲームや映画の世界だ。そこに生活感はない。

「……そうか」

 心臓が跳ねる。じっとアイザックの横顔を見る。本当のことを伝えるべきか、記憶喪失だと嘘を吐くか。

 胸を押さえて深呼吸をする。アイザックの反応を見てみたいと思った。最初に会った時からずっと優しく接していてくれる。獣から身を呈してまで守ってくれた。側にいない間も心配してくれて……そんな相手に嘘をつくことはできない。たとえ信じてもらえなくても。

「俺は貴族制度のない国から来た。ここよりずっと文明が発達しているけど、あんな大きな獣はいないし、タグみたいに不思議な力は使えない場所。たぶんこの世界とは違う遠いところ」

 アイザックは何も言わないし、表情も変わらない。その横顔を見て怖くなる。

「ここではこの髪と目の色が珍しいって言うけど、ほとんどの人がこの色なんだ。でも美形じゃないよ? 人それぞれだけど。俺にしたら聖騎士の方が美形だし、アイザックだって格好良いよ。筋肉付いてて強い男の方が女性にモテる。俺なんて軟弱だし、特に秀でた所もない、良く言って平均なんだよ」

 力なく笑う。自分を下げて言うのは日本人特有だろうか。この国では美形だって可愛いって言われるけど、自分が釣り合わなすぎて逃げたくなる。

「おまえはおまえだ」

 アイザックがフッと笑う。
 じっと見ていると、すっと視線を向けられて、髪をガシガシ撫でられた。

「俺はおまえが可愛い。無防備な所もみんな好ましく思っている。貴族を知らなくてもこれから覚えれば良いし、俺が教える。俺は今のおまえが好きだ。それではダメか?」

 アイザックの視線から視線を外した。顔が熱い。まさか告白で返って来るとは思わなかった。心臓が痛いくらい高鳴る。突然の告白だからなのか、アイザックだからなのかわからない。

 アイザックがじっと見ているのがわかる。言葉を探したが見つからず、どうして良いかわからない。
 アイザックの手がまた俺の髪を撫でた。今度は優しい。

「別に返事は期待してないから良いぜ? 言いたくなったら言ってくれ、待つのは得意だ」

「ん」

 と小さく返事をする。
 アイザックが視線を外したから、横顔を見る。

 自分が告白に揺れるような経験をするとは思わなかった。まるで乙女の思考だ。恥ずかしすぎて居た堪れない。
 ズボンのポケットの中でタグのチェーンがチリリと鳴った。

「兄弟が7人いて俺は真ん中。時期が時期だからな、二番目の兄が軍に行っている以外はみんな領にいるぜ?」

「7人? 多いけど、お兄さん心配だね」

 アイザックが普通の話題を振ってくれる。ホッとして話題に乗った。

「兄はまぁ、良いんだ」

 アイザックは薄らと笑う。家族だから心配なのは当然だろう。しかも獣が向かった。気丈に笑ってくれているのだと思う。

「国境に近いと言っただろ? だから孤児が逃げて来るんだ。奴隷商人が売れない子を置いて行ったりな」

 俺は聞きながら暗い気持ちになる。異世界の闇の部分だ。この国に奴隷制度はないと聞いたが、他国にはある。そうなればこの国から奪われる人もいるのかもしれない。

「悪い、暗い話がしたいんじゃねえよ」

 俺が沈んだ気分なのを察したアイザックが肩を撫でてくれる。

「俺の領には孤児院があって、そういう子を引き取って育てている。勉学や仕事を教えて、将来、自分で生きて行けるように手助けをする場所。だから子どもがたくさんいる」

「そっか、じゃあ、俺も一緒に勉強する」

 別の場所では戦乱があり、人が傷ついている。でも俺は普通の顔をして、まるで関係のないフリをして、アイザックの横にいる。温かい未来を想像して、涙が溢れて来た。せっかくアイザックが普通の会話をしてくれているのに、俺は別のことを考えている。

 本当はあの迎えに来た男に着いて行く方が正解だった。俺をきっかけとして始められた戦乱だ。俺がブラッドの気を惹いてしまったから、国の均衡が崩れた。俺の罪はブラッドのせいにしろとアイザックが言ってくれたけど、それは逃げなんじゃないかと思えて怖い。

 泣くのを堪えていると、アイザックが体を引き寄せてくれた。
 アイザックにもたれたら、耐えられずに泣いた。アイザックの手が肩を引き寄せる。
 怖い。この国に災いをもたらす為に転生したのかと、消えてしまいたくなる。

「俺が行くと迷惑がかかる」

 泣きながら言うと声が変になってた。

「だってあの人が迎えに来るって言った。アイザックの領に来たら困るだろ? しかも獣も着いて来るのかも」

 ブラッドのことは避けた。ブラッドが来たら、それを考えるのも怖い。自分がその時、どうするのかわからないから。

 俺の肩を抱くアイザックの手が強く引き寄せる。

「今は気にするな。気にしてもどうにもならねえよ。その時、考えれば良い」

「それで良いの?」

「……ああ、構わない」

 アイザックは優しい。
 俺のことばかり考えている。

「戦乱が終わるまでお世話になっても良い? 終わったら……」

 あの人達について行く。
 そう言いたかったのに、アイザックはキスで俺の口を塞いだ。

「ん、んんっ」

 湿った音が耳に響く、大人のキス。

 そんなこと、言わなくてもわかっている。だから言うな。アイザックの心の声が聞こえた。
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