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【2】軍生活
4・夜会
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夜会は、貴族街の裏にある、花街の一角の屋敷で行われる。そこは貴族でも上位の者か、その者の紹介がなければ入ることができない場所だ。
その日、レティウスが出かけたことは、ギルバートには筒抜けで、誰かが密告しているのだと思われる。
ユーリはギルバートが用意してくれた貴族服を身に着けている。過去の姿を彷彿とさせるその姿だったが、以前よりも大人になり、細いだけだった体も筋肉がつき、男らしい姿になっていて、貴族服が良く似合った。
「色気が出るな」
ギルバートは馬車の向かいに座るユーリを見て、感想を述べる。
「あまり見られたくないのですが……」
ユーリの控えめな態度にギルバートは皮肉な笑いを見せた。
「見られるに決まっているだろう。その髪色、瞳の色、それだけじゃない、特別な光がある。しかも男の気を惹く色気まである。女は寄れないだろう。自分より美しい存在など邪魔だからな。男に気を付けろよ」
「レティウスに会うために行くだけです」
「まあ、そうなんだろうけど」
心配するギルバートの気持ちを一言で打ち切ったユーリだ。いったい何がこんな態度にさせているのかとギルバートは思った。昔はわがままだったが可愛げがあった。駄々を捏ねる姿は馬鹿らしかったが、人間味があった。
しかし今のユーリは暗く沈んでいる。それは王に見限られたという現状もあるのだろうが、それだけではないと思う何かがあった。
ユーリを連れて馬車を降り、所定の場所から屋敷に入れば、濃く甘い花の香りが身を包んだ。それと煙草の香りと酒の香り。どれもユーリには馴染みのないものだった。
レティウスはユーリとの繋がりを断っている。でもユーリは感じていたから、レティウスがどこにいるのかすぐにわかった。
ギルバートが示す前に、ユーリはレティウスの方へ向かっていた。
ギルバートの視線の中、ユーリがレティウスの前に立つ。ソファに座るレティウスがふっと存在に気づき、見上げると、普段は変わりもしない表情が曇り、一瞬、視線を逸らしたかと思うと、艶やかに笑んで見せた。
「そうしていると昔を思い出しますね、ユーリ」
立ち上がり、ゆっくりとした態度でユーリを抱きしめる。
ユーリは動かずにそれを受け止めた。
「犯人はギルバートですね? こんなところへ貴方を連れて来るなんて。おっしゃってくだされば、私が迎えに行きましたのに」
「かまわない。口づけをひとつ、するだけだ」
そう言って、昔より近くなった唇を奪えば、レティウスの舌は酒の味と煙草の苦みがした。
くちゅっと舌先が湿った音をあげる。唾液を交換するような口づけは、まわりの人の視線を誘う。
レティウスの相手が誰か見極めようと、周りの視線がねばりつくように二人の姿に絡んだ。
「今までで一番まずい口づけだった。また来る」
ユーリは微笑むレティウスの視線から逃れるように背を向けると、ギルバートの方へ歩いた。
「馬車使っていい? ひとりで帰るから」
ギルバートの横を抜ける時にそう言うと、ギルバートはエスコートするように隣を歩いた。
「本当にどういう関係なんだ? おまえら」
今にも泣きそうな表情のユーリをひとりで帰せるわけがないと、ギルバートは一緒に馬車に乗り込んだ。
あからさまなレティウスの笑みも普通ではない。
夜会に参加して一度も笑わなかったレティウスがユーリには笑う。その姿がとても痛々しく映った。
その日、レティウスが出かけたことは、ギルバートには筒抜けで、誰かが密告しているのだと思われる。
ユーリはギルバートが用意してくれた貴族服を身に着けている。過去の姿を彷彿とさせるその姿だったが、以前よりも大人になり、細いだけだった体も筋肉がつき、男らしい姿になっていて、貴族服が良く似合った。
「色気が出るな」
ギルバートは馬車の向かいに座るユーリを見て、感想を述べる。
「あまり見られたくないのですが……」
ユーリの控えめな態度にギルバートは皮肉な笑いを見せた。
「見られるに決まっているだろう。その髪色、瞳の色、それだけじゃない、特別な光がある。しかも男の気を惹く色気まである。女は寄れないだろう。自分より美しい存在など邪魔だからな。男に気を付けろよ」
「レティウスに会うために行くだけです」
「まあ、そうなんだろうけど」
心配するギルバートの気持ちを一言で打ち切ったユーリだ。いったい何がこんな態度にさせているのかとギルバートは思った。昔はわがままだったが可愛げがあった。駄々を捏ねる姿は馬鹿らしかったが、人間味があった。
しかし今のユーリは暗く沈んでいる。それは王に見限られたという現状もあるのだろうが、それだけではないと思う何かがあった。
ユーリを連れて馬車を降り、所定の場所から屋敷に入れば、濃く甘い花の香りが身を包んだ。それと煙草の香りと酒の香り。どれもユーリには馴染みのないものだった。
レティウスはユーリとの繋がりを断っている。でもユーリは感じていたから、レティウスがどこにいるのかすぐにわかった。
ギルバートが示す前に、ユーリはレティウスの方へ向かっていた。
ギルバートの視線の中、ユーリがレティウスの前に立つ。ソファに座るレティウスがふっと存在に気づき、見上げると、普段は変わりもしない表情が曇り、一瞬、視線を逸らしたかと思うと、艶やかに笑んで見せた。
「そうしていると昔を思い出しますね、ユーリ」
立ち上がり、ゆっくりとした態度でユーリを抱きしめる。
ユーリは動かずにそれを受け止めた。
「犯人はギルバートですね? こんなところへ貴方を連れて来るなんて。おっしゃってくだされば、私が迎えに行きましたのに」
「かまわない。口づけをひとつ、するだけだ」
そう言って、昔より近くなった唇を奪えば、レティウスの舌は酒の味と煙草の苦みがした。
くちゅっと舌先が湿った音をあげる。唾液を交換するような口づけは、まわりの人の視線を誘う。
レティウスの相手が誰か見極めようと、周りの視線がねばりつくように二人の姿に絡んだ。
「今までで一番まずい口づけだった。また来る」
ユーリは微笑むレティウスの視線から逃れるように背を向けると、ギルバートの方へ歩いた。
「馬車使っていい? ひとりで帰るから」
ギルバートの横を抜ける時にそう言うと、ギルバートはエスコートするように隣を歩いた。
「本当にどういう関係なんだ? おまえら」
今にも泣きそうな表情のユーリをひとりで帰せるわけがないと、ギルバートは一緒に馬車に乗り込んだ。
あからさまなレティウスの笑みも普通ではない。
夜会に参加して一度も笑わなかったレティウスがユーリには笑う。その姿がとても痛々しく映った。
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