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【1】追放

13・思い 1

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 口が滑ったどころの話ではない内容を話して行ったディーノは、ユーリの方からレティウスを見限って、レティウスに消されれば良いと思っていると、ユーリは考えていた。

 レティウスもまた、ディーノがユーリの傍に現れたのを知っているのだろう。ユーリが遠くの会話を聞くことができるのだ。レティウスにできないわけがない。知っていて見逃している。ユーリの出方を試しているのだ。

 ユーリの出方は決まっている。
 レティウスが何者かなど初めから気づいていた。詳細ではなく、とんでもなくすごい存在なのだろう、ということをだ。命を繋ぐ魔術を使える。そんなの破格の存在でしかない。

 あの日、王城から連れ出され、白い煉瓦の道に蹲っていたあの時、レティウスが受け入れてくれたら、レティウスを信じると決めた。レティウスの行為を全て受け入れる覚悟をした。なのにレティウスは愛してくれた。それが偏った愛情だとしても、ずっと幸せにぬくぬくと浸っていたい。

「ただいま」

 屋敷の扉を開け、中に入れば、いつも通りレティウスが迎えてくれる。
 軽く抱きしめてくれて、髪に頬をうずめて「おかえり」と言ってくれる。
 汗を流しに湯殿へ行き、出て行くとやわらかなタオルで体をふいてくれる。
 レティウスが何者だとしても、このぬくもりは幸せでしかない。

「かわりませんね」

 レティウスが小さく言う。
 ユーリは口づけをせがみながらレティウスに抱き着き、望みのものを手に入れた。

「かわらないけど、かわったこともあるよ」

「なんですか?」

 レティウスの腕の中は居心地が良い。そのままソファに座り、いつも通り、髪をふいてもらい、魔力の風で乾かしてもらう。

「っていうか、盗み聞き?」

「いえ、ユーリもわかっていたんでしょう? それを盗み聞きとは言いませんよ」

「まあ、確かにね。でも許してくれないと思ってたから」

「あまり束縛してしまうとユーリは逃げてしまいそうですからね。少しずつ、私に近づいて欲しいと思っているだけですよ」

「ディーノを使って?」

 ユーリは後ろにあるレティウスの表情を見る為に膝に乗る向きを向かい合わせに変えた。

「あれは非常に口が軽いですから、言い出し難いことを語らせるのには役にたつのですよ」

「でも最初の時は来てくれたでしょ? 今回はなぜ?」

 レティウスは見上げるユーリの口に啄むような口づけをすると、目を細めて笑った。

「ユーリに危害が及ばないとわかれば良いのですよ。最初の時は敵意が見えましたからね。今回は完全に面白がっていたので、まあ良いかと」

「なるほどね」

 ユーリはレティウスの笑みが好きだ。愛しいというように細めて見つめられると嬉しいのに鼓動が早鐘を打つ。どうしようもないのだ。レティウスの容姿が偽りだと言われようとも、もうすでに魅了されてしまっている。好きだと思い知らされるだけで、他はどうでも良くなってしまう。愛に弱い自分はもう仕方がないと諦めている。

「好きだよ、レティ」

 どうか思うよりも長く飽きないでいてほしい。願いは日々募って行く。

「私もですよ、ユーリ。どうかまわりの言葉に流されないで、私だけを見ていてください」

「信じさせて、レティ」

 レティウスの背に手を回し、唇を寄せて行けば、ユーリの願いは叶えられる。
 レティウスはユーリを抱きかかえたまま立ち上がり、二階にある寝室へと向かって行った。
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