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「でもおまえの方が可愛いと思ってた」

「はぁ? ありえないよ。あの子と比べてってことでしょ? っていうか比べる価値もないよ」

 だいたい男の俺をどういう目で見たらそうなるのか。ろくに話した事ないし、愛想笑いがよそよそしいんだろ?

「絶対怒ると思うけど、おまえあの日、浴衣着てただろ」

「着てたよ。っていうか半分くらいは着てたよね? 普通だよ」

 地元の夏祭りだ。浴衣とか甚平とかTシャツに半パンとか、格好なんて好き好きだ。

「おまえさぁ、無防備なんだって。顔隠したくて前髪伸ばしてるんだろうけど、なんかそそるんだよな。それに合わせが乱れてて、チラチラ乳首見えんの、マジでやられたからな、俺ら」

 思わず手をクロスして自分の両肩を持つ。カーッと頬が熱くなる。

「俺らって——俺らってなに? 本気で言ってんの?」

「だから怒るなって。仕方ねえだろ? チラチラピンクでかわいい乳首見えてて、色白で足とか腰とか細くてさ。高2の性欲なめるなよ」

「意味わかんねえ、ってかそんな目で見るなよ、ありえないから」

 本気で恥ずかしい。あの日楽しくて、浮かれてはしゃいでた。なのにみんなにそんな目で見てたとかイジメでしかない。

 肩でため息をつくな。逃げられないようにガッチリ腹でホールドされてるのがすごく嫌だ。

「彼女よりもおまえに触りたかった。ホテル行ってもおまえ抱きたいって——」

「ありえないから、そういうの気持ち悪い。そういうのでここ連れて来たの? それ好きとかじゃないだろ? ただの性欲だろ。昼間のレイプ未遂とかわらないよ!」

「やっぱりレイプだったのか? ごめん俺、もっと早く、最初から着いて行けば良かった」

 顔を寄せられた。半身をひねさせられて、頬に手を置かれる。唇が触れる。ちゅって音がした。間近で視線が合う。真剣に見つめられてる。ドキッとする。そんな目で見られたことがない。ふっと笑まれて、今度は深く唇が合わさる。舌でうまく口を開けさせられて、舌が触れ合った。体勢を変えさせられる。隼也の膝に乗って向き合ってキスしている。後頭部を押さえられてて逃げられない。

 コーヒー味のキス。それと隼也のムスクの香り。手慣れている。気づいたら服の中に手が入っている。腰から上へ這って行って、乳首に触れられた。

「ん、んんん——や、ヤダ、……ふうっ、ん、んっ」

「俺と付き合おう?」

 隼也に触れられて、勃っているのに気づいた。見下ろしたら隼也のも勃ってる。荒い息を吐いて、隼也の膝から降りたいけど、許してもらえない。

「いやだ、付き合わない」

 説得力のない言葉なんだろう。隼也の表情が甘く崩れた。

「可愛い、碧」

 耳元で言われる。初めて名前を呼ばれた。それも意味ありげに。ずっと佐倉って呼んでいたのは、この機会を狙っていたから? そう思うと恥ずかしすぎる。隼也が佐倉と呼ぶのは、俺の事が嫌いだからだと思っていたのに。
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