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16 告白

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「難しい」

「はぁ?」

 俺の言葉に顔を上げた隼也は不機嫌そのものだった。

「だってそうだろ? 隼也ってモテてただろ? 高校の時、彼女いたの知ってるよ? なのになんで俺? ずっと避けてて名前も佐倉呼びだし。今だって不機嫌だよ顔」

「それはおまえが難しいなんて言うからだろ? そりゃあ高校ん時は彼女いたよ。普通だろ? でもおまえの事が気になってからは誰とも付き合ってねえよ」

 また抱きしめられた。っていうか、なんか脇に手を入れられて移動させられて、膝の間に入れられてるんですけど? こんなに簡単にできる事なの? 後ろから抱きしめられて、また肩に顔を寄せられてる。

「こういうの、慣れてる感じも嫌だ。女の子と付き合えるのになんで俺かもわからない。信用できない」

「仕方ねえって、俺モテてたからな。経験積むのだって仕方ねえだろ? だけどおまえが付き合ってくれるんなら、いっぱい甘やかしてやるから、俺にしろよ」

 手が頬に触れて、耳の横にキスされた。勝手に、いろいろされてる。腹を押さえて来る手もなんかやだ。

「どうせ俺は経験ないし、モテる要素なんてないよ。なのになんで? 隼也と接点なんてほぼないのに、きっかけは? 俺が知ってること?」

 だいたい大学に入ってからも不機嫌な顔ばかりだった。確かに何の利点があっていつも一緒にいるのかなって思ってたけど、まさかこんな理由とは思わない。

「怒らねえ?」

「聞いてから考える」

「怒るだろ、それ」

 みんなで遊んだ、みんなで話した。そういう輪の中の対極に位置していたのが隼也だ。高校の時だってバスケしてて休みに遊んだのあまりないし、クラスだって一度も被っていない。玲と隼也が仲良くて、玲と賢吾が仲良くて、そういう輪の中に俺が寄生していただけだ。

「夏祭りに行ったの覚えてる?」

「ああ、高2の夏休み? かき氷食べて射的して、公園で花火したっけ」

「そう、その日」

「っていうか隼也って彼女と来てたよね? 可愛い浴衣着た綺麗な子」

「よく覚えてるね」

 アップにした髪のうなじが綺麗で、レトロな朝顔柄の浴衣を着ていた。高校内でも美人だと有名だった子だ。さすがの俺でも覚えている。

「いいなーって見てたからね。だって隼也だけだったよ? 彼女連れて来てたの」

「あれはわがまま言われて着いて来たんだよ。俺は良いって言ってねえよ」

「でもだよ、愛想良く相手してただろ? ベタベタ引っ付いて、お尻とか胸とか触ってたの知ってる」

 思い出して来た。隼也サイテーって思ってた。あの後、絶対ホテルに行っただろ。そういう雰囲気があったの覚えてる。

「おまえ良く覚えてんね? あいつすぐヤレるって有名だったからな、思春期だったんだって、怒るなよ」

「怒ってないよ。別に前の話だし、彼女なんだから普通だろ」

 隼也が俺の肩に顎を乗せてううっと唸っている。
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