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14 鈍い?
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「玲の身勝手に付き合うのか?」
背中を押されてソファに座らされ、飲みかけのコーヒーを手渡された。帰りたいって言ってるのに。
「身勝手って……確かにそうかもしれないけど、俺は別に、ただ友達と会って遊ぶだけだし」
冷めてしまったコーヒーを飲む。苦味が増した気がする。ソファが揺れて、隣に隼也が座った。
「隼也の家ってお金持ち?」
確かに俺の行っていた高校は、親の収入が良い家の子が多いと有名な学校だった。俺も今では節約生活をしているけど、前は裕福な生活をしていた。高2の夏に両親が離婚して、両不倫だった彼らは、円満に別れた後、別の相手と暮らしている。それが俺が大学に受かったタイミングだったから、俺を慮る態度だった両親だけど、実は煩わしく思っていて、大学を離れた場所にしたいと言った時も「好きな事をしたら良い」なんて言いながら厄介払いできたと清々していたのだろう。
「それ、本気で言っていたんだな」
「うるさいな、どうせ俺は世間に疎いです」
そう言ったら指で頬を突かれた。微妙に痛い。明日からマスクしよう。隣で肩を揺らして笑っている隼也の姿を見た。珍しい。なにがそんなにおかしいのか。
「俺の父親、けっこう有名な芸能事務所のオーナーだけど? 母親は元モデルって有名な話なんだけどな」
「えっと……鰻屋さん?」
「それは母の実家の店。麗香さん、母親な? それけっこう気にしてるから言うなよ?」
「ああ、ごめん、言わないよ」
っていうか隼也の母親と会う機会なんてないと思うけど。
「なんで玲がW大じゃなく俺と同じ大学にしたのか察しがつくだろ? んで都合よく賢吾にも甘えてる」
「そういう理由なんだ」
知らなかった。玲が俳優志望なのは隼也に聞いて知った。きっと事務所に紹介して欲しいとか、そういう理由で同じ大学にしたのだろう。
「隼也は?」
「は?」
驚いた表情で見られて俺が驚く。
「おまえは? おまえは賢吾と同じ大学にするかと思った」
「俺? ウチ親が離婚したから、受験絶対に受かるレベルの学費の安い所にしただけだよ。W大は俺の頭では無理だと諦めてたし」
「賢吾と一緒の所に行く気はあったんだ」
「いや、ないよ? 大学に行ってまで迷惑かけられないし」
「迷惑?」
いや、迷惑かけてたでしょ? と思って隼也を見たけど、本気でわからない様子だった。
「迷惑でしょ」
そう言うと隼也が落胆したようにため息を吐いた。俺はよくみんなにため息をつかれる。呆れさせてばかりで自分が嫌になる。
「そうやってため息、俺と話す人はため息が多いよ。あと疎いとか、わかってないとか、鈍いとか、いろいろ言われるから」
「あーまぁその通りだろ」
否定して欲しかったのに、深く頷かれてしまった。なんでかな? 話すの苦手だから話をちゃんと聞けていないのかも。環境がかわっても何一つ変われていない。
背中を押されてソファに座らされ、飲みかけのコーヒーを手渡された。帰りたいって言ってるのに。
「身勝手って……確かにそうかもしれないけど、俺は別に、ただ友達と会って遊ぶだけだし」
冷めてしまったコーヒーを飲む。苦味が増した気がする。ソファが揺れて、隣に隼也が座った。
「隼也の家ってお金持ち?」
確かに俺の行っていた高校は、親の収入が良い家の子が多いと有名な学校だった。俺も今では節約生活をしているけど、前は裕福な生活をしていた。高2の夏に両親が離婚して、両不倫だった彼らは、円満に別れた後、別の相手と暮らしている。それが俺が大学に受かったタイミングだったから、俺を慮る態度だった両親だけど、実は煩わしく思っていて、大学を離れた場所にしたいと言った時も「好きな事をしたら良い」なんて言いながら厄介払いできたと清々していたのだろう。
「それ、本気で言っていたんだな」
「うるさいな、どうせ俺は世間に疎いです」
そう言ったら指で頬を突かれた。微妙に痛い。明日からマスクしよう。隣で肩を揺らして笑っている隼也の姿を見た。珍しい。なにがそんなにおかしいのか。
「俺の父親、けっこう有名な芸能事務所のオーナーだけど? 母親は元モデルって有名な話なんだけどな」
「えっと……鰻屋さん?」
「それは母の実家の店。麗香さん、母親な? それけっこう気にしてるから言うなよ?」
「ああ、ごめん、言わないよ」
っていうか隼也の母親と会う機会なんてないと思うけど。
「なんで玲がW大じゃなく俺と同じ大学にしたのか察しがつくだろ? んで都合よく賢吾にも甘えてる」
「そういう理由なんだ」
知らなかった。玲が俳優志望なのは隼也に聞いて知った。きっと事務所に紹介して欲しいとか、そういう理由で同じ大学にしたのだろう。
「隼也は?」
「は?」
驚いた表情で見られて俺が驚く。
「おまえは? おまえは賢吾と同じ大学にするかと思った」
「俺? ウチ親が離婚したから、受験絶対に受かるレベルの学費の安い所にしただけだよ。W大は俺の頭では無理だと諦めてたし」
「賢吾と一緒の所に行く気はあったんだ」
「いや、ないよ? 大学に行ってまで迷惑かけられないし」
「迷惑?」
いや、迷惑かけてたでしょ? と思って隼也を見たけど、本気でわからない様子だった。
「迷惑でしょ」
そう言うと隼也が落胆したようにため息を吐いた。俺はよくみんなにため息をつかれる。呆れさせてばかりで自分が嫌になる。
「そうやってため息、俺と話す人はため息が多いよ。あと疎いとか、わかってないとか、鈍いとか、いろいろ言われるから」
「あーまぁその通りだろ」
否定して欲しかったのに、深く頷かれてしまった。なんでかな? 話すの苦手だから話をちゃんと聞けていないのかも。環境がかわっても何一つ変われていない。
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