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5 自分を蔑める言葉

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「碧はいつもそうだよね」

 玲の言い方にビクッとしてしまった。思わず愛想笑いをする。いつもそうとはどういう意味?

「賢吾は碧に会いたいから来るんだよ。もちろん俺だって会いたいと思うけど。碧は会いたくない?」

 玲の意見は当然の事だった。高校3年間もグループで友達としてやって来たのだ。たとえ俺の存在感が薄くても、賢吾は見捨てずに付き合い続けてくれた。優しくて面倒見の良い友達だ。

「ううん、俺も会いたいと思うけど、わざわざ会いに来てもらっても賢吾が楽しくないんじゃないかなぁって思っちゃって」

 あはははと愛想笑いを続ける。自分でも卑屈だとは思う。でも本当の事だと思っている。賢吾と玲と隼也と俺が一緒にいたとして、明らかにタイプがバラバラで。今までは同じ高校という括りがあったから成り立っていた関係だと思うんだ。でもその括りが外れてしまったらもう集団行動をしなくても良い。そうなったらもう気を使わなくても良いし、合わせなくても良い。こんな卑屈で人付き合いが苦手な俺に会いに来るなんて何の意味があるのだろう。

「それは賢吾が決める事だよ。でも会いたいと思っているから碧に連絡するんだろ? 碧が嫌なら仕方ないけど」

「嫌じゃないよ? 嫌じゃない」

 繕うように笑って見せる。でも玲、賢吾から連絡来てないよ? それはそういう口実で玲と話したかったのでは? それならわかる。ふたりはとても美形で隣に立つ相手として相応しいのだから。

「賢吾がこっちに来たら、俺は賢吾の家に泊まる予定なんだ」

「え? それってどういうこと?」

 意味がわからない。それだと賢吾と玲が会えないじゃないか。

「碧は鈍いな」

 玲のため息。どうやら俺は玲を落胆させてしまうようだ。まぁいつもの事なので慣れてしまっているのだけど。

「うん、ごめんね。俺って鈍いから良くわからないや」

「碧にはマッチングアプリなんて無理だろ? 変な相手に騙されるのがオチだ。それよりももっと周りに目を向けたら?」

「あー……うん、そうだよね」

 やっぱり玲に見られていた。あれがゲイ専用だと気づかれたかどうかはわからないけど、あれがそういうアプリだというのは気づかれている。

「まずはそういう自分を蔑めるような思考を治さないとダメだろ? 碧はただ自己肯定感が低いだけだよ。わかってる? 賢吾を見本にしたら良いと思うよ。って事で賢吾から連絡来たらOKしろよ? 俺の為にも、な?」

「う、うん、わかった」

 俺の為にも? よくわからない。でも頷いておく。自分を蔑める発言とか自己肯定感が低いとか言われた事が胸に刺さった。自覚しているけど人に言われたら落ち込んでしまう。玲に肩をポンポンって慰めてもらって愛想笑いをしたけど、胸の中がズキズキと痛い。

 駅のホームでまた明日と別れた。
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