アプリで恋人探してみました

サクラギ

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4 帰宅中

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 講義を終えて帰る。俺はこの後用事もないからアパートに帰るんだけど、玲はバイトに向かうから、一緒に駅まで歩いて行く。隼也はサッカーサークルに入っているから部室に行く事が多くて約束をしない限り帰りが一緒になる事はない。

 とりあえず隼也と会うのは明日になるから、ゲイアプリの事で聞かれたらどう対処しようか後で考える事にする。

「そういえば賢吾から連絡あった?」

「あ、ううん、ないけど」

 賢吾から個別に連絡を取る事はあまりない。高校の時はグループ通知に入っていたし、毎日のように学校で会っていたから連絡を取る必要がなかったからだ。

 今もまだグループ通知は消えていない。高校を卒業しても大学や就職の準備があるから、集まるタイミングを逃していたし、新生活が忙しいのはみんな同じで、個別にはどうかわからないけど、グループ通知はひとつの連絡も入っていなかった。

「っていうか、個人的に賢吾と連絡なんて高校の時も取っていなかったよ」

「そうなのか?」

「うん、そうだよ」

 そう言う玲は賢吾と連絡を取れる距離にいるのだなと思う。玲はグループの端っこにいたけど、賢吾とは話が合っていたし、ふたりで話している姿は、種類の違う美形で——といってもそんな視線で見ているのは俺と一部の女子くらいなんだけど。神様に不満を言いたくなるくらいには羨ましく思っていた。

「夏季休暇に入ったら会えないかって言ってたから、てっきり連絡したかと思ってた」

「それはいつものグループででしょ? でもみんないろいろな場所へ散ってるし、地元へ帰るかどうかもわからないよね?」

 俺は戻るつもりはない。賢吾に会いたくない訳じゃない。親に会いたくないだけだ。なんとなくだけど、高い学費と生活費を払ってもらっているのに、頭の中の一番が男という点で心苦しいのだ。

「賢吾がこっちに来るよ。だから碧に直接連絡したのかなって思って」

「……でも賢吾だって地元を出てて」

「碧、賢吾がどの大学にしたか聞いてないの?」

 玲に驚いた顔をされてしまった。

「え? だってW大だって聞いてるけど」

 そう言うと玲がため息をつく。
 俺は困惑してしまった。だって賢吾は優秀で、将来は親の会社を継ぐ予定で、敷かれたレールを走るのも悪くないとかいっていて。

「そうだよ、W大だよ。だから電車で1時間圏内なんだよ。実家に戻るよりも近いだろ?」

 玲にそう言われて納得した。納得したけど、こっちに来てくれるって言うけど、ここには俺と玲と隼也しかいない。他の人はわざわざこんな所まで来ようと思わないだろう。だって有名な観光地でもないし都会でもない。とても微妙な街なのだ。

「何しに来るの? ああ、玲に会いに来るんだろ? だったら俺なんて——」

 いてもいなくても同じだよ。そう言いたかったんだけど、玲が悲しそうな顔をしていたから言葉が出て来なかった。

 またため息をつかれてしまった。
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