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19.それはワンコ系攻めとツンデレ受けですね(1)
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ジーニアは頭を抱えたくなった。それができないのは寝台で横になっているからだ。
――何が、起こった?
唇に触れた柔らかい感触。自分の指で唇に触れてみるけれど、先ほどの感触とは違う。こんな指ではなく、もっと柔らかいものだっだ。
――もしかして、キス、された?
もしかしなくてもキスをされている。それでも認めたくないのか、思考が変な方向に走っている。
――なんで? なんで、なんで、なんで?!
おかしい、おかしい、おかしい、おかしい。
クラレンスはシリルが好きなはず。それがなぜモブであるジーニアにキスをするのか。
――もしかして、つまみ食い? ああ、あれか。アイスクリームに添えられている、ウェハースみたいな、存在?
とにかくジーニアの頭の中はパンク寸前だった。というか、むしろ破裂した。だからそのままもう一度眠りについた。
ジーニアの行動範囲が広がったのは、それから二日後のこと。この部屋の中であればやっと自由に歩き回ることができるくらい、回復したのだ。だが、部屋から出るのは難しい。よたよたと傷を庇うような歩き方をしてしまうから。
そんなとき、やっとジェレミーが妹に会いにきてくれた。
「おい、ジーン。具合はどうだ?」
「お兄さま」
豪勢な寝台の上にたくさんの本が並べられているのは、クラレンスが「飽きないように」と適当な本を持ってきてくれたためで、ジーニアは今、その本に埋もれながら寝台の上に座っている。
「おいおい、すごいな。いつからそんなに勉強熱心になったのかな?」
恐らく寝台の上に並んでいる、ではなく散らかっている本を見て、ジェレミーはそう思ったのだろう。彼女の寝台の脇にある椅子にゆっくりと腰を押し付けながら、久しぶりに顔を合わせる妹に視線を向けた。
「思っていたより、元気そうで安心したよ」
「私も、お兄さまにお会いできて嬉しいです……」
ジーニアがにっこりと微笑めば、ジェレミーもにっこりと笑う。
「ところで、あの。お父さまとお母さまは?」
「ああ、二人ともとても心配していたけれど、殿下がわざわざ来てくださったみたいで。二人とも、驚きながらも喜んでいたよ」
ちょっと待て、とジーニアは心の中で呟いた。殿下というのは、もちろん――。
「あの、もしかして。わざわざクラレンス様がお出でになられたのですか?」
「そう、そうそうそうそう、そうなんだよ。クラレンス殿下がわざわざ来てくださったんだ」
「なんで?」
「それは俺が聞きたいくらいだよ」
ジェレミーは寝台の上の本の一冊を手にする。
「お前、何を読んでるんだ?」
妹が読んでいる本の中身に興味を持ったのか、パラパラと確認する。
「なんでお前が薬草学の本を読んでいるんだよ……」
――それは、私が聞きたいくらいです。
「この本は、クラレンス様が適当に持ってきてくださった本ですから」
「殿下が? どうしたんだ、一体……」
――それも、私が聞きたいくらいです。
「まあ、いい。それで、怪我の具合はどんな感じなんだ? あのとき、俺が気付いたときにはお前の背中にはぷすっと矢が刺さっていたからな」
「え、ええ。そうですね。ぷすっと、刺さっちゃったみたいですね。ですが、そのコルセットのおかげで、あまり深くは刺さらなかったようなのです」
「そうか……。だが、あれだろ? 傷痕は、残るんだろう?」
ジェレミーが悔しそうな表情をしていたのはそれが原因だろう。
「え、えぇ。恐らく」
「そうか……。お前にそのような醜い傷痕を残してしまうとは。俺たち騎士団の失態だな」
「お兄さま。そんなにご自分を卑下なさらないでください。私はクラレンス様が無事であったこと、それが一番だと思っておりますので。こんな私でもクラレンス様のお役に立てたのだな、と」
「ああ、お邪魔だったかな?」
兄妹の会話に突然割り込んできた第三者の声。ジェレミーは驚いて振り返り、ジーニアは「また来た」と思いながら、兄の後ろに立つ男に視線を向けた。
――何が、起こった?
唇に触れた柔らかい感触。自分の指で唇に触れてみるけれど、先ほどの感触とは違う。こんな指ではなく、もっと柔らかいものだっだ。
――もしかして、キス、された?
もしかしなくてもキスをされている。それでも認めたくないのか、思考が変な方向に走っている。
――なんで? なんで、なんで、なんで?!
おかしい、おかしい、おかしい、おかしい。
クラレンスはシリルが好きなはず。それがなぜモブであるジーニアにキスをするのか。
――もしかして、つまみ食い? ああ、あれか。アイスクリームに添えられている、ウェハースみたいな、存在?
とにかくジーニアの頭の中はパンク寸前だった。というか、むしろ破裂した。だからそのままもう一度眠りについた。
ジーニアの行動範囲が広がったのは、それから二日後のこと。この部屋の中であればやっと自由に歩き回ることができるくらい、回復したのだ。だが、部屋から出るのは難しい。よたよたと傷を庇うような歩き方をしてしまうから。
そんなとき、やっとジェレミーが妹に会いにきてくれた。
「おい、ジーン。具合はどうだ?」
「お兄さま」
豪勢な寝台の上にたくさんの本が並べられているのは、クラレンスが「飽きないように」と適当な本を持ってきてくれたためで、ジーニアは今、その本に埋もれながら寝台の上に座っている。
「おいおい、すごいな。いつからそんなに勉強熱心になったのかな?」
恐らく寝台の上に並んでいる、ではなく散らかっている本を見て、ジェレミーはそう思ったのだろう。彼女の寝台の脇にある椅子にゆっくりと腰を押し付けながら、久しぶりに顔を合わせる妹に視線を向けた。
「思っていたより、元気そうで安心したよ」
「私も、お兄さまにお会いできて嬉しいです……」
ジーニアがにっこりと微笑めば、ジェレミーもにっこりと笑う。
「ところで、あの。お父さまとお母さまは?」
「ああ、二人ともとても心配していたけれど、殿下がわざわざ来てくださったみたいで。二人とも、驚きながらも喜んでいたよ」
ちょっと待て、とジーニアは心の中で呟いた。殿下というのは、もちろん――。
「あの、もしかして。わざわざクラレンス様がお出でになられたのですか?」
「そう、そうそうそうそう、そうなんだよ。クラレンス殿下がわざわざ来てくださったんだ」
「なんで?」
「それは俺が聞きたいくらいだよ」
ジェレミーは寝台の上の本の一冊を手にする。
「お前、何を読んでるんだ?」
妹が読んでいる本の中身に興味を持ったのか、パラパラと確認する。
「なんでお前が薬草学の本を読んでいるんだよ……」
――それは、私が聞きたいくらいです。
「この本は、クラレンス様が適当に持ってきてくださった本ですから」
「殿下が? どうしたんだ、一体……」
――それも、私が聞きたいくらいです。
「まあ、いい。それで、怪我の具合はどんな感じなんだ? あのとき、俺が気付いたときにはお前の背中にはぷすっと矢が刺さっていたからな」
「え、ええ。そうですね。ぷすっと、刺さっちゃったみたいですね。ですが、そのコルセットのおかげで、あまり深くは刺さらなかったようなのです」
「そうか……。だが、あれだろ? 傷痕は、残るんだろう?」
ジェレミーが悔しそうな表情をしていたのはそれが原因だろう。
「え、えぇ。恐らく」
「そうか……。お前にそのような醜い傷痕を残してしまうとは。俺たち騎士団の失態だな」
「お兄さま。そんなにご自分を卑下なさらないでください。私はクラレンス様が無事であったこと、それが一番だと思っておりますので。こんな私でもクラレンス様のお役に立てたのだな、と」
「ああ、お邪魔だったかな?」
兄妹の会話に突然割り込んできた第三者の声。ジェレミーは驚いて振り返り、ジーニアは「また来た」と思いながら、兄の後ろに立つ男に視線を向けた。
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