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18.それはスパダリ攻めと誘い受けですね(8)
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「気が付いたか」
夢から覚めて目を開けた途端、スパダリ攻め、ではなくクラレンスがいた。
「く、く、クラレンス様。一体、どうしてここに?」
ジーニアは驚いてまた身体を起こそうとしてしまった。
「うっ」
痛みで顔を歪める。
「無理をするな。そのまま寝ていろ」
クラレンスに制され、ジーニアは身体を起こすのをあきらめた。だから、先ほどと同じように顔だけクラレンスに向ける。
「クラレンス様、どうしてこちらに?」
「ああ。そろそろ君の痛み止めが切れる頃だと思ってな。そうしたら案の定、君は痛みで苦しんでいたよ」
「そ、そうですか……。ですが、今は痛みが落ち着いております」
ですから、さっさとシリル様のところにお戻りくださいと、言いたかった。だが、もちろんそれを口にできるわけもない。
「そうだろう。私が薬を塗ってあげたからな」
クラレンスは目が潰れるような輝く笑みを浮かべていた。だが今、恐ろしい言葉が聞こえたような気がする。
「あ、へ、そ、その……。クラレンス様が、薬を?」
「そうだ」
腕を組んで大きく頷くクラレンス。
「あの。ルイーズではなく?」
「違う。彼女は他の仕事があるからな。君の薬を塗ったのは私だ」
ジーニアとしては否定をして欲しかった。嫁入り前なのに、素肌を異性に見られたという事実が、ジーニアを困惑の世界へと誘う。
「大丈夫だ。傷口しか見ていない。傷口を確認するために、着ているものは必要最小限、脱がせてしまったが」
その必要最小限が問題であると思うのだが。
恐らくこのクラレンスは、困っているジーニアを見て楽しんでいるのだろう。明らかにわかる。顔中に「楽しいです」と書いてあるからだ。いや、書いてあるような笑顔を浮かべているからだ。
だが、それに動揺しては相手の思う壺であるとジーニアは悟った。
「そうでしたか。わざわざお手を煩わせてしまい、申し訳ありません。ありがとうございます」
「それだけか?」
「はい?」
「いや、君は面白いな」
そこでクラレンスはくくく、と笑い出す。
「他の女性であれば、もう少し積極的に私に求めてくるところなのだが」
「はい?」
何を求めてくると言うのだろう。この状況でジーニアが求めるとしたらクラシリだ。
「いや、何でもない。気にするな」
気にするなと言われてももう無理だ。クラレンスの笑顔が気になって仕方ない。
「もしかして。クラレンス様に何かしら御礼を差し上げなければならないのでしょうか……」
彼の笑顔の意味するところはそこだろうか。
「礼? 君が? 私に?」
「あ、はい。その、薬を塗っていただきましたので。先ほどまでの激痛が嘘のようにおさまっております。クラレンス様には感謝しかありません」
「そうか……。なら、礼をいただこう」
突然、クラレンスの顔が近づいてきた。誰にも聞かれないように、耳元で欲しいものを囁かれるのかと思った。だが、違った。
突然、ジーニアは唇を塞がれた。塞いだものは、もちろんクラレンスの唇。つまり、これは口づけというやつではないのか。つまり、接吻。いや、キス。ほっぺにチューではなく、唇と唇同士の。
「とりあえず、今日の分の礼はいただいた。また、様子を見に来る」
颯爽と身を翻して部屋を出ていくクラレンス。残されたジーニアは、ただ呆けることしかできなかった。
夢から覚めて目を開けた途端、スパダリ攻め、ではなくクラレンスがいた。
「く、く、クラレンス様。一体、どうしてここに?」
ジーニアは驚いてまた身体を起こそうとしてしまった。
「うっ」
痛みで顔を歪める。
「無理をするな。そのまま寝ていろ」
クラレンスに制され、ジーニアは身体を起こすのをあきらめた。だから、先ほどと同じように顔だけクラレンスに向ける。
「クラレンス様、どうしてこちらに?」
「ああ。そろそろ君の痛み止めが切れる頃だと思ってな。そうしたら案の定、君は痛みで苦しんでいたよ」
「そ、そうですか……。ですが、今は痛みが落ち着いております」
ですから、さっさとシリル様のところにお戻りくださいと、言いたかった。だが、もちろんそれを口にできるわけもない。
「そうだろう。私が薬を塗ってあげたからな」
クラレンスは目が潰れるような輝く笑みを浮かべていた。だが今、恐ろしい言葉が聞こえたような気がする。
「あ、へ、そ、その……。クラレンス様が、薬を?」
「そうだ」
腕を組んで大きく頷くクラレンス。
「あの。ルイーズではなく?」
「違う。彼女は他の仕事があるからな。君の薬を塗ったのは私だ」
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「大丈夫だ。傷口しか見ていない。傷口を確認するために、着ているものは必要最小限、脱がせてしまったが」
その必要最小限が問題であると思うのだが。
恐らくこのクラレンスは、困っているジーニアを見て楽しんでいるのだろう。明らかにわかる。顔中に「楽しいです」と書いてあるからだ。いや、書いてあるような笑顔を浮かべているからだ。
だが、それに動揺しては相手の思う壺であるとジーニアは悟った。
「そうでしたか。わざわざお手を煩わせてしまい、申し訳ありません。ありがとうございます」
「それだけか?」
「はい?」
「いや、君は面白いな」
そこでクラレンスはくくく、と笑い出す。
「他の女性であれば、もう少し積極的に私に求めてくるところなのだが」
「はい?」
何を求めてくると言うのだろう。この状況でジーニアが求めるとしたらクラシリだ。
「いや、何でもない。気にするな」
気にするなと言われてももう無理だ。クラレンスの笑顔が気になって仕方ない。
「もしかして。クラレンス様に何かしら御礼を差し上げなければならないのでしょうか……」
彼の笑顔の意味するところはそこだろうか。
「礼? 君が? 私に?」
「あ、はい。その、薬を塗っていただきましたので。先ほどまでの激痛が嘘のようにおさまっております。クラレンス様には感謝しかありません」
「そうか……。なら、礼をいただこう」
突然、クラレンスの顔が近づいてきた。誰にも聞かれないように、耳元で欲しいものを囁かれるのかと思った。だが、違った。
突然、ジーニアは唇を塞がれた。塞いだものは、もちろんクラレンスの唇。つまり、これは口づけというやつではないのか。つまり、接吻。いや、キス。ほっぺにチューではなく、唇と唇同士の。
「とりあえず、今日の分の礼はいただいた。また、様子を見に来る」
颯爽と身を翻して部屋を出ていくクラレンス。残されたジーニアは、ただ呆けることしかできなかった。
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