3 / 46
3.ここは耽美な世界ですね(3)
しおりを挟む
とにかく腐った心を思い出したジーニアであるが、このジーニアという女性はジェレミーの妹という立場だけではない。実はこのジェレミーとグレアムのシナリオにおいて、当て馬という立派な役割があるのだ。グレアムが自分の気持ちに気付くための立派な当て馬。
ジェレミーが妹を自慢し可愛がっているため、その話を耳にするたびにグレアムはどす黒い何かが蠢くような感覚に捉われる。それが嫉妬という感情であることに気付いたのは、学院の卒業パーティだ。
学院の卒業パーティとはその名の通り、王立学院を卒業する生徒たちを祝うパーティである。騎士団に所属するジェレミーとグレアムはそれの警備を担当し、隊長であるジェレミーは警備責任者という責任ある任務につく。
この卒業パーティというイベントがどのシナリオを進めるかの分岐点になるのだが、ジェレミーとグレアムルートは、ジーニアが同級生の男の手をとってダンスを踊るところから始まる。
ダンスを終えその同級生から飲み物を手渡されてそれを口にしたジーニアは倒れてしまう。そう、その飲み物には毒が仕込まれていたのだ。ジェレミーの隊長就任を面白く思わないクソ共が、彼の妹を狙ったというクソのような展開である。このようなクソ展開はゲームの世界のお話であるため許して欲しい。
さて、妹が狙われたことに気付いたジェレミーだが、犯人はその同級生の男の兄であった。すぐさまグレアムがそれに気付き、その男を捕らえる。
しかし、ジーニアは残念なことに命を失ってしまう。
妹を失い、悲しみにひれ伏すジェレミーを励ますのがグレアム、という流れで。
――あれ? 私、死ぬんだっけ?
と、ジェレミーとグレアムシナリオを思い出してがっかりするジーニアの中の人。
二人の絡みは見たいけれど、死んだら見れないでしょ、という一人ツッコミ。
「どうかしたのか? ジーン。今日は様子がおかしいぞ」
そんな妹の妄想に気付いたのか、いや、気付いているわけはないのだが、心配そうに視線を向けてくる兄のジェレミー。
「いいえ。私も、もう少しで卒業かと思うと、少し寂しい気がしてしまって。その、卒業パーティの警備は、お兄さまが?」
「ああ、そうだ。ジーンたちの学院生活最後のパーティを安心して楽しめるように、ばっちり警備するからな。なんと、驚くなよ。俺が警備責任者だ」
まあ、さすがジェミーね、なんて母親は喜んでいる。だけど、ジーニアは素直に喜べなかった。
――兄の恋路の邪魔をしてしまう妹をお許しください。だって私、死にたくないんです。
今、兄に言えることはそれだけだった。
――せっかく大好物の世界に転生したのに、それを目にすることなく死んでしまったら、死ぬに死にきれない。むしろ、もう一度転生したい。っていうか、この世界のループでいいんだけど。
そうやってジーニアが妄想に耽っていうるうちに、家族で兄の就任を祝うケーキを食べる会は、お開きとなった。
いつの間にか父親と兄はケーキではなく、高級なお酒を手にしているし、それに呆れて母親はこっそりと自室に戻っているし。
だからジーニアも母親が姿を消してから、同じようにこっそりと自室に戻った。
兄のジェレミーの隊長就任は、おめでたいと思うし、妹としても誇らしい気持ちでいっぱいだった。その、昔の記憶さえ思い出さなければ。
記憶を思い出したところで、寝る前には風呂に入りたいところではあるが、今日はそのような気分にはならなかった。寝間着に着替えると、寝台へするりと潜り込む。
ジェレミーが妹を自慢し可愛がっているため、その話を耳にするたびにグレアムはどす黒い何かが蠢くような感覚に捉われる。それが嫉妬という感情であることに気付いたのは、学院の卒業パーティだ。
学院の卒業パーティとはその名の通り、王立学院を卒業する生徒たちを祝うパーティである。騎士団に所属するジェレミーとグレアムはそれの警備を担当し、隊長であるジェレミーは警備責任者という責任ある任務につく。
この卒業パーティというイベントがどのシナリオを進めるかの分岐点になるのだが、ジェレミーとグレアムルートは、ジーニアが同級生の男の手をとってダンスを踊るところから始まる。
ダンスを終えその同級生から飲み物を手渡されてそれを口にしたジーニアは倒れてしまう。そう、その飲み物には毒が仕込まれていたのだ。ジェレミーの隊長就任を面白く思わないクソ共が、彼の妹を狙ったというクソのような展開である。このようなクソ展開はゲームの世界のお話であるため許して欲しい。
さて、妹が狙われたことに気付いたジェレミーだが、犯人はその同級生の男の兄であった。すぐさまグレアムがそれに気付き、その男を捕らえる。
しかし、ジーニアは残念なことに命を失ってしまう。
妹を失い、悲しみにひれ伏すジェレミーを励ますのがグレアム、という流れで。
――あれ? 私、死ぬんだっけ?
と、ジェレミーとグレアムシナリオを思い出してがっかりするジーニアの中の人。
二人の絡みは見たいけれど、死んだら見れないでしょ、という一人ツッコミ。
「どうかしたのか? ジーン。今日は様子がおかしいぞ」
そんな妹の妄想に気付いたのか、いや、気付いているわけはないのだが、心配そうに視線を向けてくる兄のジェレミー。
「いいえ。私も、もう少しで卒業かと思うと、少し寂しい気がしてしまって。その、卒業パーティの警備は、お兄さまが?」
「ああ、そうだ。ジーンたちの学院生活最後のパーティを安心して楽しめるように、ばっちり警備するからな。なんと、驚くなよ。俺が警備責任者だ」
まあ、さすがジェミーね、なんて母親は喜んでいる。だけど、ジーニアは素直に喜べなかった。
――兄の恋路の邪魔をしてしまう妹をお許しください。だって私、死にたくないんです。
今、兄に言えることはそれだけだった。
――せっかく大好物の世界に転生したのに、それを目にすることなく死んでしまったら、死ぬに死にきれない。むしろ、もう一度転生したい。っていうか、この世界のループでいいんだけど。
そうやってジーニアが妄想に耽っていうるうちに、家族で兄の就任を祝うケーキを食べる会は、お開きとなった。
いつの間にか父親と兄はケーキではなく、高級なお酒を手にしているし、それに呆れて母親はこっそりと自室に戻っているし。
だからジーニアも母親が姿を消してから、同じようにこっそりと自室に戻った。
兄のジェレミーの隊長就任は、おめでたいと思うし、妹としても誇らしい気持ちでいっぱいだった。その、昔の記憶さえ思い出さなければ。
記憶を思い出したところで、寝る前には風呂に入りたいところではあるが、今日はそのような気分にはならなかった。寝間着に着替えると、寝台へするりと潜り込む。
27
お気に入りに追加
1,454
あなたにおすすめの小説
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる