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第三章:夫 x 夫 x 夫(6)
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穏やかなまま、晩餐の場は終わった。
クラリスはアニーとメイに連れられて部屋へと戻っていく。
ユージーンは一度執務室に足を運び、ネイサンとサジェスから、不在の間の様子を、簡単に報告を受けた。やはり、クラリスがやってきたことが大きな変化であるものの、彼女が来たことで問題が発生しているわけでもない。
「奥様は、よくやってくださっております」
特にサジェスにいたっては、クラリスの信望者にまでなりつつある。心からユージーンとクラリスの結婚を喜んでいるようで、結婚式をどうするかをそろそろ決めたい、とのことだった。
ユージーンも魔獣討伐から戻ってきたことだし、すぐにベネノ侯爵に手紙を送り結婚式の段取りについて相談する、とサジェスに言えば、彼は鷹揚に頷いた。
それからサジェスには、魔獣討伐団が無事に帰還したため、慰労パーティーの手配をするようにと指示を出す。そうすれば、サジェスが抜かりなく段取りをしてくれるはず。
サジェスを下がらせ、今度はネイサンから話を聞く。
城の切り盛りについてはサジェスから聞くのが一番であるが、兵のことやら街の様子を確認するのであれば。ネイサンほど適した人間はいない。
「お前から見て、どう思う?」
ユージーンが唐突に尋ねると「何がですか?」とネイサンからはとぼけた答えが返ってきた。
「彼女のことだ」
「彼女ってどなたです?」
ネイサンは知っててそう聞いているのだ。
「クラリスだ」
少しだけつっけんどんに返すと、ネイサンがにたりと笑った。
「ユージーン様、後悔してますよね?」
「な、なにがだ」
「奥様に離婚約を申し込んだこと」
「それは……」
ネイサンはどうやらお見通しのようだった、いや、あのとき「惚れた」とユージーンが声高々に宣言したのだから、気持ちは知られているのだろう。
「僕から見ましても、奥様はユージーン様にとって理想の女性です」
ネイサンの言葉に、なぜかユージーンの頬がゆるんだ。
「そ、そうか……この結婚話を打診されたときは、彼女をさんざん毒女だと言ってけなしていたお前がそう言葉にするくらいなのだから、確かなんだろうな」
誰に言うわけでもなく、ユージーンはぽつんと呟いた。
「その件に関しては、僕からも奥様にきちんと謝罪しております。やはり僕たちは、噂と上辺だけを信じて、奥様を偏見の目で見ていたようです」
「そうか……お前がそう言うなら……そうなんだろうな」
クラリスがネイサンに認められたのが、なぜか嬉しかった。
「それでだ、ネイサン。相談があるんだが……」
ユージーンはネイサンを信頼している。だから側に置き、留守の間の領地と民を任せているのだ。
「なんでしょう?」
「クラリスとの結婚生活を続けていくためには、どうしたらいい?」
パチパチとネイサンが目を瞬いた。まるで夢でも見ているのでは、とでも言うかのように何度もまばたきをする。
「ユージーン様は、奥様と別れたくないと?」
「先ほどからそう言っているだろう? だが、離婚前提で結婚してしまった以上、こちらも誠意を見せねばと思ってだな。黙って二年後に、やはり離婚はしない、と言い出すのは卑怯ではないかと思ったんだ」
「なるほど。でしたら、身体から落とせばいいのでは? と言いたいところですが、そもそも離婚前提の結婚を打診した時点でユージーン様はクズですので、ここでいきなり襲ってはもっとクズになります。とことんクズ男を貫く方針であるならば、お止めはしませんが、やはりきちんと気持ちを伝えるべきだと思います」
ネイサンの言葉が、心にズキンと突き刺さる。
――気持ちを伝える。
簡単なようで難しい。結婚の前提が前提だっただけに、うまく伝えられるだろうか。
部下たちをねぎらう言葉はするすると出てくるのに、クラリスにはどのようにして言葉をかけ気持ちを伝えたらいいのか。さっぱりと思い浮かばなかった。
クラリスはアニーとメイに連れられて部屋へと戻っていく。
ユージーンは一度執務室に足を運び、ネイサンとサジェスから、不在の間の様子を、簡単に報告を受けた。やはり、クラリスがやってきたことが大きな変化であるものの、彼女が来たことで問題が発生しているわけでもない。
「奥様は、よくやってくださっております」
特にサジェスにいたっては、クラリスの信望者にまでなりつつある。心からユージーンとクラリスの結婚を喜んでいるようで、結婚式をどうするかをそろそろ決めたい、とのことだった。
ユージーンも魔獣討伐から戻ってきたことだし、すぐにベネノ侯爵に手紙を送り結婚式の段取りについて相談する、とサジェスに言えば、彼は鷹揚に頷いた。
それからサジェスには、魔獣討伐団が無事に帰還したため、慰労パーティーの手配をするようにと指示を出す。そうすれば、サジェスが抜かりなく段取りをしてくれるはず。
サジェスを下がらせ、今度はネイサンから話を聞く。
城の切り盛りについてはサジェスから聞くのが一番であるが、兵のことやら街の様子を確認するのであれば。ネイサンほど適した人間はいない。
「お前から見て、どう思う?」
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「彼女のことだ」
「彼女ってどなたです?」
ネイサンは知っててそう聞いているのだ。
「クラリスだ」
少しだけつっけんどんに返すと、ネイサンがにたりと笑った。
「ユージーン様、後悔してますよね?」
「な、なにがだ」
「奥様に離婚約を申し込んだこと」
「それは……」
ネイサンはどうやらお見通しのようだった、いや、あのとき「惚れた」とユージーンが声高々に宣言したのだから、気持ちは知られているのだろう。
「僕から見ましても、奥様はユージーン様にとって理想の女性です」
ネイサンの言葉に、なぜかユージーンの頬がゆるんだ。
「そ、そうか……この結婚話を打診されたときは、彼女をさんざん毒女だと言ってけなしていたお前がそう言葉にするくらいなのだから、確かなんだろうな」
誰に言うわけでもなく、ユージーンはぽつんと呟いた。
「その件に関しては、僕からも奥様にきちんと謝罪しております。やはり僕たちは、噂と上辺だけを信じて、奥様を偏見の目で見ていたようです」
「そうか……お前がそう言うなら……そうなんだろうな」
クラリスがネイサンに認められたのが、なぜか嬉しかった。
「それでだ、ネイサン。相談があるんだが……」
ユージーンはネイサンを信頼している。だから側に置き、留守の間の領地と民を任せているのだ。
「なんでしょう?」
「クラリスとの結婚生活を続けていくためには、どうしたらいい?」
パチパチとネイサンが目を瞬いた。まるで夢でも見ているのでは、とでも言うかのように何度もまばたきをする。
「ユージーン様は、奥様と別れたくないと?」
「先ほどからそう言っているだろう? だが、離婚前提で結婚してしまった以上、こちらも誠意を見せねばと思ってだな。黙って二年後に、やはり離婚はしない、と言い出すのは卑怯ではないかと思ったんだ」
「なるほど。でしたら、身体から落とせばいいのでは? と言いたいところですが、そもそも離婚前提の結婚を打診した時点でユージーン様はクズですので、ここでいきなり襲ってはもっとクズになります。とことんクズ男を貫く方針であるならば、お止めはしませんが、やはりきちんと気持ちを伝えるべきだと思います」
ネイサンの言葉が、心にズキンと突き刺さる。
――気持ちを伝える。
簡単なようで難しい。結婚の前提が前提だっただけに、うまく伝えられるだろうか。
部下たちをねぎらう言葉はするすると出てくるのに、クラリスにはどのようにして言葉をかけ気持ちを伝えたらいいのか。さっぱりと思い浮かばなかった。
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