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5.明らかになる真実

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「ケイト・ダリル、およびラッシュ・ベネター。君たちは今、どういう立場にあるかわかっているのか?」

 女性の凜とした声が響いた。

 ケイトはよろよろと頭を上げる。隣にいる人物がもぞっと動く。

「何があったの? ケイト……」

 ラッシュはまだ寝ぼけている。ケイトも寝起きだが、さぁっと顔から血の気が引いた。

 ケイトとラッシュに何が起こったのか。見ればすぐにわかる。半裸の男女が同じ寝台で眠っていたのだ。

「ケイト・ダリル。この国には姦通罪なる刑法が存在しているのは知っているな?」

 堂々とケイトに現実を突きつけてくる黒髪の女性。その髪は後ろで一つに結わえてある。赤いフレームの眼鏡をかけ、その奥にある紺色の瞳で鋭くケイトを睨みつけている。
 彼女の名は、マレリ・エルキシュ。

 ドクンと心臓が跳ねた。もしかして、知られてしまった。

「君は、イアン・ダリルと婚姻関係にある。結婚をしている女性が、夫と異なる男性と身体を重ねた場合、それは姦通罪となる」

 だから、誰にも知られないようにとしていたのに。どこから情報が漏れたのか。

「ふむ。どうしてばれたのかという顔をしているな? 君が、イアンを利用して、彼に結婚を迫った頃から怪しいと思っていたのだよ。そもそも、カーラ商会は犯罪の温床ではないかと言われていたからね」

 うまくやっていたはずなのに。

「ケイト……。よくも俺を利用してくれたな」

 その声を聞くのは、三ヶ月ぶりだ。夫のイアンの声。

「気がついたら、君と結婚をしていた。俺にはその前、二ヶ月間の記憶が曖昧だ」

 ケイトはぎりっと唇をかみしめる。隣のラッシュは掛布をたぐり寄せて、身体を震わせている。

「君たちがイアンを狙っていたのは知っていたよ。彼が私に相談してくれていたからね。どうやら、カーラ商会に狙われているようだと」

 マレリの声が静かに響く。

「あのときと同じことを、君たちにもしたまでだ」

 その声で、ケイトは昨夜のことを思い出そうと、考えをめぐらせる。

 昨夜もラッシュと一緒に夜会に参加していた。ケイト・ダリルであると知られないように、変装をしてだ。
 どうしてもイアンの様子が気になっていた。

 結婚まではうまくいったのだ。
 結婚してから、うまくいかなくなっただけ。

 となれば、例の薬の効果が切れてしまったと考えるのが無難だろう。
 なんとかして、イアンに薬を飲ませたかった。だが、屋敷に戻ってこないのであれば、それもできない。

 夜会には参加していると聞いていたから、ラッシュのパートナーとしてそれに潜り込んでみた。彼の様子をみると、薬の効果が切れているのが一目でわかった。何がなんでも、薬を飲ませたい。
 その気持ちが大きく動いた。

 彼の飲み物に気づかれぬように薬を混ぜる。
 そう、混ぜたはず。なのに――。
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