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第八章(4)
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「そういえばイアンさんが、大聖堂の地下に何かがあると……」
「地下か……」
うぅむと、タミオスは唸るものの、その顔はどうしたものかと言っている。
彼が悩むのも仕方あるまい。
ドンドン、ドンドンと乱暴に会議室の扉が叩かれた。
「なんだ? 打ち合わせ中だ」
タミオスが慣れた様子で答えるものの、扉は乱暴に開かれた。
「大事な打ち合わせ中に悪いな」
「そ、総帥……」
ガタガタと音を立ててタミオスは立ち上がる。フィアナもナシオンもつられて席を立つ。
「まったく……先ほどのあれはおまえの差し金か?」
「ち、ちがいます。彼女が何を言ったのかなんて、俺はさっぱりわかりませんからね」
「ふん、まぁいい。それよりも、おまえたちも捜査に入れ」
総帥はナシオンとフィアナをギロリと睨みつけた。ナシオンなんて肩をすくめている。
「捜査? どちらにですか?」
フィアナが尋ねれば「大聖堂だ」と返ってくる。
フィアナはナシオンと顔を見合わせる。
「おいおい、フィアナ……お前のせいでもあるんだからな?」
そう言った総帥の声は、けしてフィアナを咎めているわけではない。
「あのあと、アルテール殿下がな。大聖堂の話を暴露し始めて、捜査に入らないわけにはいかない状況になった」
「ですが、今、カリノさんの捜査中ですよね?」
「その件と、アルテール殿下の件は別だ。アルテール殿下が言うには、大聖堂では非人道的な実験が行われていると。そういったたれ込みがあったなら、我々としては事実を確認する必要があるだろう?」
だからアルテールが言ったからではなく、そういった事実があるというたれ込みがあったことが原因だとでも強調するかのようだった。
「先ほどの子も逆移送でこちらに送り返される。そっちはそっちで再捜査。はっきりいって今、手が足りない。おまえたちも大聖堂に行き、捜査にくわわってくれ。特にフィアナ。おまえは怪しいと思ったところを徹底的に洗い出してこい」
はい、とフィアナは返事をした。
「タミオス。お前は私と一緒に、指揮を取れ。あっちもこっちもで、もう手が回らん」
「はい」
こんなときでも、三人分のカップをささっと片づけるナシオンには頭が上がらない。
フィアナとナシオンは、素早く準備をすませると大聖堂へと足を向ける。
「まったく……いったい、何が起こったのやら……」
走りながらもナシオンがそうぼやくのも仕方ないだろう。フィアナだって同じ思いだ。
「ですが。イアンさんが言っていた地下室。もしかしたら、入れるかもしれませんね」
「かもしれない。じゃなくて、入らなきゃやばいだろ?」
大聖堂に近づくと「キャー」という、女性特有の甲高い声が聞こえる。
フィアナはとにかく顔見知りの誰かを探すことにした。門扉の前にはイアンが立っている。
「あ、イアンさん……」
「あぁ。私もあなたを探しておりました。これはいったい、どういうことでしょう? 突然、彼らが押し寄せてきて……今、大聖堂の中は混乱しております」
「申し訳ありません。巫女たちには、自室に戻るようにと言ってもらえませんか? 彼女たちを脅そうとか思っているわけではありません。私たちは、真実を暴きにきました」
イアンはフィアナとナシオンに交互に視線を向けた。
「そうですね。先に来たあの者たちよりも、あなたたちのほうが信用はできますからね。どうぞ……」
そう言ったイアンは、近くにいた聖騎士らに指示を出し始める。
フィアナは大きく息を吸ってから、大聖堂の中に一歩、足を踏み入れた。
回廊には取り込んだであろう洗濯物が、放り出されている。騎士らの姿を目にした巫女たちが、慌てて逃げたようだ。
「もうちょっと、穏便にやれないのかね。あの人たちは……」
ナシオンも、ぼそりと呟いた。
「あいつら。頭の中まで筋肉みたいな存在だから、無理か」
ナシオンが自分で答えを出したところで、目の前に王国騎士団の彼らを見つけた。
「情報部のフィアナ・フラシスです」
「地下か……」
うぅむと、タミオスは唸るものの、その顔はどうしたものかと言っている。
彼が悩むのも仕方あるまい。
ドンドン、ドンドンと乱暴に会議室の扉が叩かれた。
「なんだ? 打ち合わせ中だ」
タミオスが慣れた様子で答えるものの、扉は乱暴に開かれた。
「大事な打ち合わせ中に悪いな」
「そ、総帥……」
ガタガタと音を立ててタミオスは立ち上がる。フィアナもナシオンもつられて席を立つ。
「まったく……先ほどのあれはおまえの差し金か?」
「ち、ちがいます。彼女が何を言ったのかなんて、俺はさっぱりわかりませんからね」
「ふん、まぁいい。それよりも、おまえたちも捜査に入れ」
総帥はナシオンとフィアナをギロリと睨みつけた。ナシオンなんて肩をすくめている。
「捜査? どちらにですか?」
フィアナが尋ねれば「大聖堂だ」と返ってくる。
フィアナはナシオンと顔を見合わせる。
「おいおい、フィアナ……お前のせいでもあるんだからな?」
そう言った総帥の声は、けしてフィアナを咎めているわけではない。
「あのあと、アルテール殿下がな。大聖堂の話を暴露し始めて、捜査に入らないわけにはいかない状況になった」
「ですが、今、カリノさんの捜査中ですよね?」
「その件と、アルテール殿下の件は別だ。アルテール殿下が言うには、大聖堂では非人道的な実験が行われていると。そういったたれ込みがあったなら、我々としては事実を確認する必要があるだろう?」
だからアルテールが言ったからではなく、そういった事実があるというたれ込みがあったことが原因だとでも強調するかのようだった。
「先ほどの子も逆移送でこちらに送り返される。そっちはそっちで再捜査。はっきりいって今、手が足りない。おまえたちも大聖堂に行き、捜査にくわわってくれ。特にフィアナ。おまえは怪しいと思ったところを徹底的に洗い出してこい」
はい、とフィアナは返事をした。
「タミオス。お前は私と一緒に、指揮を取れ。あっちもこっちもで、もう手が回らん」
「はい」
こんなときでも、三人分のカップをささっと片づけるナシオンには頭が上がらない。
フィアナとナシオンは、素早く準備をすませると大聖堂へと足を向ける。
「まったく……いったい、何が起こったのやら……」
走りながらもナシオンがそうぼやくのも仕方ないだろう。フィアナだって同じ思いだ。
「ですが。イアンさんが言っていた地下室。もしかしたら、入れるかもしれませんね」
「かもしれない。じゃなくて、入らなきゃやばいだろ?」
大聖堂に近づくと「キャー」という、女性特有の甲高い声が聞こえる。
フィアナはとにかく顔見知りの誰かを探すことにした。門扉の前にはイアンが立っている。
「あ、イアンさん……」
「あぁ。私もあなたを探しておりました。これはいったい、どういうことでしょう? 突然、彼らが押し寄せてきて……今、大聖堂の中は混乱しております」
「申し訳ありません。巫女たちには、自室に戻るようにと言ってもらえませんか? 彼女たちを脅そうとか思っているわけではありません。私たちは、真実を暴きにきました」
イアンはフィアナとナシオンに交互に視線を向けた。
「そうですね。先に来たあの者たちよりも、あなたたちのほうが信用はできますからね。どうぞ……」
そう言ったイアンは、近くにいた聖騎士らに指示を出し始める。
フィアナは大きく息を吸ってから、大聖堂の中に一歩、足を踏み入れた。
回廊には取り込んだであろう洗濯物が、放り出されている。騎士らの姿を目にした巫女たちが、慌てて逃げたようだ。
「もうちょっと、穏便にやれないのかね。あの人たちは……」
ナシオンも、ぼそりと呟いた。
「あいつら。頭の中まで筋肉みたいな存在だから、無理か」
ナシオンが自分で答えを出したところで、目の前に王国騎士団の彼らを見つけた。
「情報部のフィアナ・フラシスです」
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