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第二章(2)

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 やってきたのは、十二、三歳くらいのカリノと同年代と思われる少女だった。目線の高さはフィアナとほぼほぼ同じだから、きっと似たような背の高さなのだろう。

 少女も驚いたように、目をくりっと大きく広げた。

「このような格好で申し訳ありませんが、私も騎士団に所属する騎士ですので」

 門番の聖騎士に見せたように、フィアナは服の間から銀プレートを取り出し、それを巫女の前に出した。

「どうぞ、そこのお座りになってください。そんなに緊張なさらずに」

 フィアナがにっこりと笑みを浮かべると、巫女の表情も少しだけ和らいだ。

「では、お名前から教えてもらえますか?」
「はい」

 少女はメッサと名乗った。カリノとは四年前から同室とのこと。聖女が殺され、同室の巫女が殺人犯として拘束されているというのに、混乱している様子はない。

 ただ、何が起こったのか信じられないと、そういった言葉は口にした。

「部屋は、四人くらいで一緒なんですけれども。巫女でも上の地位になれば、一人一部屋になります」

 偉くなればなるほど、与えられる部屋が立派になるのは、どこの世界も同じようだ。

「カリノは夜が怖いみたいで、それに眠りも浅いから、よく毛布にくるまってうさぎのぬいぐるみを抱っこして眠っていました」
「うさぎのぬいぐるみ?」
「はい。カリノが巫女になるときに、唯一、持ち込んだものだと聞いています」

 それからメッサは、カリノの普段の様子を教えてくれた。
 カリノがいたって普通の巫女ということが、話を聞いてよくわかった。

 突出することがない。目立たないけれども、落ちこぼれでもない。いたって普通。

「一昨日の夜から昨日の朝にかけて、何時頃、カリノさんが部屋を出たかわかりますか?」

 その質問にメッサは首を横に振る。

「私はカリノと違って、一度眠ったら、朝までぐっすりなので」
「メッサさんが目覚めたとき、カリノさんはすでに部屋にはいなかったのですよね? 彼女の姿が見えないから、捜しに行こうとか、そんな話にはならなかったのでしょうか?」
「申し訳ありません……毎朝、カリノは私が起きるより先に、礼拝室で祈りを捧げているので、昨日もてっきりそう思っておりました。ですが、朝食の準備の時間になってもカリノの姿が見えなくて、もちろん朝食の時間になっても現れなくて……怖い騎士様たちがやってきて……」

 次第に声と身体を震わせるメッサの姿を見ると、胸がツンと痛んだ。彼女たちは、第一騎士団の彼らを非常に怖がっているようだが、その原因がわかったような気もした。

「メッサさん。怖いことを思い出させて申し訳ありません」

 メッサは黙って、ふるふると首を横に振った。

「夜中に、誰にも気づかれずに大聖堂から出ることは可能なのでしょうか?」

 敷地は高い壁でぐるりと囲まれている。唯一の入り口は、先ほどフィアナも通ってきた正門であるが、あの門は夜間になれば閉ざされると、昨日、第一騎士団が報告してきた。

「それは……よくわかりません。少なくとも、私は知りません」

 メッサから目を離さないフィアナだが、彼女が嘘をついているようには見えなかった。
 きっとカリノしか知らないような秘密の抜け道があるのだろう。それについては、カリノから聞けばいいだろう。もう一度、話せる機会があれば、の話だが。

「では、話題を変えましょう。先ほど、四人で一部屋と言いましたが……あなたの部屋はカリノさんと二人きりのようですね」

 フィアナは次の話題へとうつった。それは先ほどの聖騎士が手渡してくれた名簿からの情報だ。

「はい。ほかの人は部屋を出ていきました。今は二人部屋、一人部屋に移っています」
「部屋を移る条件。あなたはそれを知っていますか?」
「いいえ。詳しくは知りません。ですが、ファデル神へ祈りを捧げ、その祈りがファデル神に届いたときとも言われています」

 話が抽象的すぎて、フィアナにはさっぱりわからない。
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