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3:大好きなお姉さまとひきこもります(6)
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「……これは、美味しいし、食感もおもしろい」
「お父さま。帰るときにはお母さまへお土産に持っていってくださいね」
今回はシング公爵の案内ということもあり、母親は同行しなかった。
「もちろんだ。まちがいなく、お母様も気に入るよ」
そう言った父親は、セシリアの頭をポンとなでた。
これ以上、話しの邪魔をしてはならないと思ったセシリアは、執務室を出る。
エレノアはレナードと茶会。父親は仕事。
となれば、セシリアは一人ぽっち。そして、こういうときにかぎってモリスは外に出ている。いや、さとうきび畑の確認に言っているのだ。つまり、仕事である。
接待も仕事もないセシリアは、厨房に向かうことにした。また、砂糖を使ったお菓子を考えよう。
「おい」
ホールを抜けようとしたとき、頭上から声が振ってきた。
「俺をもてなそうとは思わないのか?」
シオンだった。上からセシリアを見下ろしている。
「シング公爵さまとご一緒ではなかったのですか?」
てっきりエレノアが二人をもてなしているだろうと思っていたのだ。
「人の恋路を邪魔すると、馬に蹴られるんだよ」
また、そのひとことでピンときた。コンスタッドはエレノアに興味を持ってくれている。となれば、やはり真っ白いウェディングドレスに身を包み、彼の隣でやわらかく微笑む姉の姿を想像してしまう。
「おい、セシリア。何を考えている」
何も考えていません。そうとでも言うかのように、ぶんぶんと首を振る。
「あ、あの。サロンにご案内いたします」
すると彼は、一歩、一歩、優雅に階段を下りてきて、腕を差し出した。
わけがわからず、セシリアはコテンと首を横に倒す。
「こういうときは俺の腕をとるんだよ。コンスタッドがやっていただろ?」
どこからか先ほどのコンスタッドとエレノアのやりとりを見ていたにちがいない。
セシリアもそれを思い出し、小さな手でシオンの腕をつかんだ。
開放感あふれるサロンへと彼を案内すると「お茶の用意をしてきますので、お待ちください」と言って、また厨房へと向かった。
さすがにセシリアが言ったり来たりしている様子を見た使用人の一人が「私がお持ちしますよ」と言ってくれたので、セシリアは先にサロンへと戻ることにした。
「お待たせして申し訳ありません。今、お茶の用意が整いますので」
真っ白い丸いテーブル。彼の真向かいに座ってはみたものの、何をしゃべったらいいのかさっぱりとわからない。
「セシリア。おまえ、年はいくつだ?」
「七歳です。もう少しで八歳になります。シオンさまは?」
「十三だ……うん、十年後に結婚しよう。俺はおまえが気に入った」
なぜ急に結婚の話になるのか、セシリアにはさっぱりわからない。
「いやです。セシリアは結婚しません」
「あぁ?」
セシリアの答えが面白くなかったのか、シオンは紫の目でぎろっと睨みつけてきた。
「おまえ。俺がロックウェルの第二王子だと知っていたんだろ? こうやって身分を明かさずにいたのに。俺に気がついたのは、ケアード公爵以外にはおまえだけだ」
「ロックウェルの王族の方は、髪の色が特徴的です。と、お父さまが言ってました」
「なるほどな。さすが外交に長けているケアード公爵の娘だな。やっぱり、おまえ、俺の嫁になれ」
「いやです」
「お父さま。帰るときにはお母さまへお土産に持っていってくださいね」
今回はシング公爵の案内ということもあり、母親は同行しなかった。
「もちろんだ。まちがいなく、お母様も気に入るよ」
そう言った父親は、セシリアの頭をポンとなでた。
これ以上、話しの邪魔をしてはならないと思ったセシリアは、執務室を出る。
エレノアはレナードと茶会。父親は仕事。
となれば、セシリアは一人ぽっち。そして、こういうときにかぎってモリスは外に出ている。いや、さとうきび畑の確認に言っているのだ。つまり、仕事である。
接待も仕事もないセシリアは、厨房に向かうことにした。また、砂糖を使ったお菓子を考えよう。
「おい」
ホールを抜けようとしたとき、頭上から声が振ってきた。
「俺をもてなそうとは思わないのか?」
シオンだった。上からセシリアを見下ろしている。
「シング公爵さまとご一緒ではなかったのですか?」
てっきりエレノアが二人をもてなしているだろうと思っていたのだ。
「人の恋路を邪魔すると、馬に蹴られるんだよ」
また、そのひとことでピンときた。コンスタッドはエレノアに興味を持ってくれている。となれば、やはり真っ白いウェディングドレスに身を包み、彼の隣でやわらかく微笑む姉の姿を想像してしまう。
「おい、セシリア。何を考えている」
何も考えていません。そうとでも言うかのように、ぶんぶんと首を振る。
「あ、あの。サロンにご案内いたします」
すると彼は、一歩、一歩、優雅に階段を下りてきて、腕を差し出した。
わけがわからず、セシリアはコテンと首を横に倒す。
「こういうときは俺の腕をとるんだよ。コンスタッドがやっていただろ?」
どこからか先ほどのコンスタッドとエレノアのやりとりを見ていたにちがいない。
セシリアもそれを思い出し、小さな手でシオンの腕をつかんだ。
開放感あふれるサロンへと彼を案内すると「お茶の用意をしてきますので、お待ちください」と言って、また厨房へと向かった。
さすがにセシリアが言ったり来たりしている様子を見た使用人の一人が「私がお持ちしますよ」と言ってくれたので、セシリアは先にサロンへと戻ることにした。
「お待たせして申し訳ありません。今、お茶の用意が整いますので」
真っ白い丸いテーブル。彼の真向かいに座ってはみたものの、何をしゃべったらいいのかさっぱりとわからない。
「セシリア。おまえ、年はいくつだ?」
「七歳です。もう少しで八歳になります。シオンさまは?」
「十三だ……うん、十年後に結婚しよう。俺はおまえが気に入った」
なぜ急に結婚の話になるのか、セシリアにはさっぱりわからない。
「いやです。セシリアは結婚しません」
「あぁ?」
セシリアの答えが面白くなかったのか、シオンは紫の目でぎろっと睨みつけてきた。
「おまえ。俺がロックウェルの第二王子だと知っていたんだろ? こうやって身分を明かさずにいたのに。俺に気がついたのは、ケアード公爵以外にはおまえだけだ」
「ロックウェルの王族の方は、髪の色が特徴的です。と、お父さまが言ってました」
「なるほどな。さすが外交に長けているケアード公爵の娘だな。やっぱり、おまえ、俺の嫁になれ」
「いやです」
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