大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?

澤谷弥(さわたに わたる)

文字の大きさ
上 下
14 / 18

3:大好きなお姉さまとひきこもります(5)

しおりを挟む
「今まで、さんざんもてあましていた土地を、ろくな対策もせずに人に押しつけてきたというのに。砂糖一つでころっと手のひらを返してくるのね。それに、わたくしはもう二度とジェラルド様と一緒になりたいとは思いませんし、この国の王太子妃になりたいわけでもありません。今は、この事業で手一杯ですから」
 エレノアは両手を腰に当て、プンプンと怒っている。
「……なるほど。では、私にもチャンスがあると思ってもよろしいでしょうか?」
 ホールから続く階段の上には、コンスタッドの姿があった。
「失礼、ちょうど声が聞こえてきたもので。それにエレノア殿との茶会が待ちきれなくてね」
 少しだけ首を傾げて微笑む様子に、エレノアがぽっと頬を赤らめたのをセシリアは見逃さなかった。
「お姉さま。シング公爵をお待たせしては失礼ですよ。今日は天気がいいので、東屋ガゼボがいいと思います。セシリア、みんなに言ってきます」
 フェルトンの公爵邸で働いている使用人は最小限であるため、場合によってはセシリアやエレノアが自ら動く。
「そうだね、エレノア。畑や作業場の見学は明日でいいから、今日はシング公爵をゆっくりともてなしてくれないか?」
「お父様は?」
「ケビンと話があるからね。近況報告を聞きたい」
 ケビンも今ではフェルトンの屋敷の使用人たちをとりまとめる立場になった。
 そして、片目をつむった父親を見て、セシリアにもピンとくるものがあった。たとえ七歳であっても、男女のあれこれには興味津々。
「では、エレノア殿。お言葉に甘えて、案内していただいてもよろしいでしょうか?」
 そう言いながらもエスコートしようとするコンスタッドはスマートである。
 さらに父親までお膳立てしようとしているのだから、少なくともコンスタッドは父親に認められたのだ。
 セシリアは、真っ白いウェディングドレスを着てコンスタッドの隣に立つエレノアを想像し、むふっと笑みをこぼした。
 けしてこれは未来視などではなく、セシリアの妄想である。
「あ、厨房にいってきます」
 東屋にお茶とお菓子の用意をするようにと、使用人たちに伝えねばならない。
 急いで厨房へと向かい、茶会の件を手短に伝える。彼らも意気揚々と、準備に
とりかかった。
 それからセシリアは、執務室へと向かった父親にもお茶とお菓子を持って行こうと考えた。
 ワゴンを押して室内に入ると、父親はケビンと難しい顔をして話をしているところだった。
「お父さま。お茶を持ってきました。このお菓子は、セシリアが考えました」
「そうです、旦那様。セシリアお嬢様は、こうやって砂糖を使ったお菓子を考えてくださるんですよ」
 ケビンまで身を乗り出す。
「ほぅ、きれいなお菓子だね。色のついた氷みたいだ」
「はい、氷みたいな砂糖だから『さとう氷』と名付けました。ゼリーの作り方に似ているのですが、動物の皮からとったゼラチンと果汁を混ぜて乾燥させ、表面を砂糖でコーティングしました」
 透明な器の上には、色のついた氷のような菓子がのせられている。それも、紫、黄色と二つの色があった。
「黄色はレモン、紫はブドウです」
「どれ、いただいてみようかな」
 父親に食べてもらいたくて仕方ないセシリアは、フォークに『さとう氷』を刺し、口元へと運ぶ父親の様子を、じっくりと見つめていた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

【完結】婚約破棄&追放された悪役令嬢、辺境村でまったり錬金術生活(元勇者家政夫+その娘の女児付き)

シルク
ファンタジー
転生したら乙女ゲームの悪役令嬢でした。婚約破棄イベント前日に過去の記憶を取り戻した侯爵令嬢アンジュ・バーネット。シナリオ通りに、公衆の面前で王子から婚約破棄&王都追放を言い渡されたけれど、堅苦しい王妃候補生活&陰謀渦巻く学園生活とはこれでおさらば。 追放された辺境村の古びた屋敷で、のんびり自由な独り身ライフ……のはずが、成り行きで、パーティーを追放された元勇者「剣聖ユースティス」を家政夫に雇い、その娘・幼女ココも同居人に。 家事全般は元勇者の家政夫に任せて、三食昼寝付きスローライフ&まったり錬金術生活! こうなったら、思う存分自由気ままな人生を楽しみたいと思います。

【完結】島流しされた役立たず王女、第二の人生はサバイバル〜いつの間にか最強皇帝に溺愛されてますけど、海の恵みで儲けさせていただきます!〜

●やきいもほくほく●
恋愛
──目が覚めると海の上だった!? 「メイジー・ド・シールカイズ、あなたを国外に追放するわ!」 長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。 前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。 奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。 そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。 この出会いがメイジーの運命を大きく変える!? 言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。 ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。 ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。 これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...