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1:大好きなお姉さまが婚約破棄されました(3)

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 そこでエレノアもあきらめればよいものの、イライザを亡き者にするために、あの手この手を使い、彼女の飲み物に毒を仕込むが、イライザの口に入る前に気づかれる。聖魔法は自身の治癒はできないと言われているため、イライザもそういったことには人一倍、警戒していたのだろう。
 エレノアが禁忌魔法に手を出したときは、イライザの温情で刑を免れたが、聖女を殺そうとした罪は重い。そのため、エレノアは処刑されるのだ。
 ここまでが物語の前半で、後半はいろいろと反発し合いながらもイライザとジェラルドが結ばれる物語であったはず。
(誰のいつの記憶かわからないけれど、このままではお姉様が禁忌魔法に手を出した挙げ句、処刑されてしまうのがわかったわ。そうなれば、我が公爵家は取り潰しよね……)
 隣に座るエレノアの顔を見上げた。ガタガタと微かに揺れる馬車の中は、しんと静まり返っていた。
 エレノアと目が合う。彼女はセシリアに向かってやさしく微笑みかけた。
「どうしたの? セシリア。眠かったら眠ってしまってもいいわよ。着いたら、お父様が部屋まで連れていってくれるはずだから」
 琥珀色の目を細くして、エレノアはセシリアの頭をゆっくりとなでる。それに甘えて、セシリアは姉に寄りかかるようにして目を閉じた。
 さて、ここからが問題だ。よくわからない記憶によれば、エレノアは禁忌魔法に手を出したうえに処刑されるのだ。からの、公爵家の取り潰し。
(きっかけは、お父様が婚約解消をしぶったから……。それに、国王陛下も王妃様も、お姉様のことを気に入ってくださっているから、婚約を解消したくなかったのよね。だからお姉様もジェラルド様をあきらめきれないのよね……いや、むしろプライド? てことは、さっさと婚約解消させてしまえばいいのだわ。問題は、お父様をどうやって説得するか……)
 セシリアはまだ七歳だというのに、わからない記憶が流れ込んできたせいで、一気に大人になってしまったような気がした。まるで、長い眠りから目覚めたような。
 それでもセシリアとして生きてきた七年間の記憶はばっちりと残っている。そして身体も七歳のまま。思考だけは年齢よりも大人びているが、見た目や行動は今までのセシリアとなんらかわりはなかった。
 そのため、心地よい馬車の揺れに負けてしまい、うとうとと眠ってしまう。
 ――セシリアも重くなったなぁ。
 ――でも、寝顔はまだまだ子どもよ。あら、よだれまで。
 ――セシリア、今日はありがとう。大好きよ。
 セシリアは家族が大好きだ。外交大臣を務めている父に、おっとりとしている母。そして六年間、学園で勉学に励み、立派な王太子妃になろうと努力してきた姉。
 この家族を守りたいと、父親に背負われ夢うつつのセシリアは、考えていたのだった。
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