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エピローグ

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 吊るされた真っ白いウェディングドレスを、アルベティーナは見上げていた。
 明日、このドレスを着てシーグルードと結婚式を挙げる。
 今日はさまざまな人のはからいで、マルグレットの国王とミランと話をすることもできた。
 初めて会った父親は、ミランにも似ていたしアルベティーナにも似ていた。特に、アルベティーナの白銀の髪は、父親の髪と同じ色だった。
「ティナ……」
 ドレスを見上げたままピクリとも動かないアルベティーナを、シーグルードは心配したのか、声をかけてきた。
 アルベティーナは振り返る。
「ルディ……」
 視線が合えば、彼はふっと微笑んだ。
「泣いているのかと思った」
「そのように見えましたか?」
「少しだけ」
 シーグルードは黙ってアルベティーナの隣に並び、共にドレスを見上げた。
「やっと、私もティナの家族になれるのだな」
 その言葉にアルベティーナは驚いた。
「今日、君たちを見ていて、そう思った。あのミランさえ、羨ましいと思った。何しろミランは君の兄だし、家族だ。エルッキやセヴェリだって、君と血の繋がりはなくても、君の家族に違いはない。だが、私だけは違っていた」
 アルベティーナは、シーグルードの手にそっと触れ、指を絡めとる。
「君を一目見た時、私に妹ができたのかと思った。だが、違った。でも今は、違っていてよかったと思う」
 繋がれた手に力が込められる。
「君とは、兄妹ではなく、夫婦になることができるのだから」
「はい……」
「あのとき。君は既に狙われていたんだ。安全だと思われていたここも安全ではなかった。君の居場所を知ったマルグレットの前王の関係者が、君をマルグレットへ連れて行こうとしたらしい」
 アルベティーナはドキリとした。
 そもそも、なぜマティアスはアルベティーナのことを義妹であると思ったのか。なぜ幼い頃に狙われたのか。
 もしかしてアルベティーナの母親は、無理矢理望まぬ関係を持ってしまったのではないだろうか。
「ティナ。マルグレットの国王も言っていただろう? 君は間違いなくマルグレット国王の娘だ」
 アルベティーナの不安に気づいたのかもしれない。シーグルードはそう声をかけてきた。
「マルグレットの国王もミランも、君の家族だ。そして、ヘドマン家の皆も」
「はい……。そうですね。私には家族がたくさんいる。それだけで、幸せです」
 皆がそう思っているのであれば、変に疑うことはしない方がいい。真実はどうであれ、今、起こっていることが事実なのだ。
「それに……。これから、共に新しい家族を作ることのできる相手は、シーグルード様だけです」
 アルベティーナは、きゅっと手に力を込めた。
 驚いたシーグルードはアルベティーナを見下ろしてくる。アルベティーナも彼を見上げた。
「ティナ……。そんなに私との間に新しい家族が欲しいのか?」
 言うや否や、彼はアルベティーナを抱き上げた。
「ちょ、ちょっと。ルディ。明日は結婚式。今日は、その……、しないって言ってたじゃないですか」
「状況はかわった。君が望むならいくらでも、私を注ぐ。君と、新しい家族を作るために」
「だ、だ、駄目です」
 シーグルードの腕の中でアルベティーナが、結局彼に負けてしまったことは言うまでもない。

【完】
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みんなの感想(5件)

ぱら
2023.01.31 ぱら
ネタバレ含む
澤谷弥(さわたに わたる)
2023.01.31 澤谷弥(さわたに わたる)

とことん悪い奴です。

解除
ori (kaori)
2023.01.27 ori (kaori)
ネタバレ含む
澤谷弥(さわたに わたる)
2023.01.27 澤谷弥(さわたに わたる)

7章からはバタバタと伏線を回収していきます。
斜め上、いただけた!!
やった!!

解除
ぱら
2023.01.26 ぱら
ネタバレ含む
澤谷弥(さわたに わたる)
2023.01.26 澤谷弥(さわたに わたる)

ここから、ぐぐっと関係が進みます!!

解除

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