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アルベティーナが連れていかれた場所は、執務室の奥に併設されている彼の休憩室だ。いつもお茶を淹れるときに利用していた部屋。さらに、奥には浴室までもある。騎士団長という立場にある彼は、仕事のために泊りがけになることも多々あるため、そういったときのために利用する部屋なのだ。
アルベティーナは彼の寝台にぽすっとおろされた。
「で? どうする? このままでいいのか?」
「できれば、湯浴みを……」
胸元に両手を当て、はじらうように答えると、ルドルフはふっと笑みを零す。その笑顔に、アルベティーナの心はいつも捕らわれてしまうのだ。
「浴室はそこだ。タオルや着替えは、置いてあるものを好きに使え」
「はい……」
寝台からおりたアルベティーナは、浴室へと向かう。ルドルフの言っていた意味がそこでわかった。綺麗に畳まれたタオルやガウンが、棚に並べられているのだ。また浴室内には、高級そうな石鹸も並んでいた。浴槽にはたっぷりの湯が張られていた。もしかしてルドルフが準備してくれていたのだろうか。
(あ、いい香り……)
石鹸を泡立てて、しっかりと自分の肌に馴染ませていく。いつものルドルフの匂いが、身体に沁みていくような感じがした。
念入りに隅から隅まで身体を磨きあげたアルベティーナは、ルドルフが言っていた着替え――ガウンを羽織った。
「お待たせしました」
アルベティーナが浴室から戻ると、ルドルフはグラスを手にしていた。グラスの中には琥珀色の液体が揺らめいている。
「俺も湯を浴びる。お前はとりあえずこれでも飲んで待っていろ」
ルドルフから手渡されたグラスを受け取ると、アルベティーナは一口それを飲んだ。
「あ、美味しい……」
「そうだろう? もう少し飲みたかったら、そこのテーブルにある」
「ありがとうございます」
アルベティーナが礼を口にすると、ふっとルドルフの顔が綻んだ。それはアルベティーナが好きな彼の表情の一つでもある。
ルドルフの姿が浴室へ消えたのを見送ると、もう一杯飲み物をもらった。
(このお酒……。どちらのお酒かしら。美味しいわ)
喉が渇いていたからか、アルベティーナは一人でその飲み物を楽しんでいた。
二杯目を飲んだ頃、瞼が重くなるような感覚があった。グラスをテーブルの上に置くと、寝台の上に腰をおろす。
(団長……。遅いかも)
ルドルフがなかなか浴室から戻ってこないような気がした。いや、彼がそこに入ってから、それほど時間は経っていないのだ。それでも彼を待つ時間は、とても長く感じていた。
(もしかして、飲み過ぎたかしら)
この国では十八から酒を飲んでも良いことになっているが、アルベティーナはあまりお酒を嗜まない。だから、ウォルシュ侯爵にグラスを渡されてそれを飲んだ時も、喉元を通り過ぎる刺激に、顔をしかめてしまったくらいなのだ。
だが、このお酒は甘くて葡萄の香りがして、飲みやすかった。そして湯上りということもあって、二杯も飲んでしまった。
(団長が戻ってくるまで、少し横になっていてもいいかしら……)
頭がぼんやりとしてきた。重くなる瞼に抗えない。
(団長、遅いな)
そんなことを考えながら、アルベティーナは寝台の上に横になり、瞼を閉じる。ふっと意識を手放しかけたとき、ふっと彼女は気付いた。
(もしかして、団長……。こうやって私を眠らせて……)
そこでアルベティーナは眠りに落ちた。
アルベティーナは彼の寝台にぽすっとおろされた。
「で? どうする? このままでいいのか?」
「できれば、湯浴みを……」
胸元に両手を当て、はじらうように答えると、ルドルフはふっと笑みを零す。その笑顔に、アルベティーナの心はいつも捕らわれてしまうのだ。
「浴室はそこだ。タオルや着替えは、置いてあるものを好きに使え」
「はい……」
寝台からおりたアルベティーナは、浴室へと向かう。ルドルフの言っていた意味がそこでわかった。綺麗に畳まれたタオルやガウンが、棚に並べられているのだ。また浴室内には、高級そうな石鹸も並んでいた。浴槽にはたっぷりの湯が張られていた。もしかしてルドルフが準備してくれていたのだろうか。
(あ、いい香り……)
石鹸を泡立てて、しっかりと自分の肌に馴染ませていく。いつものルドルフの匂いが、身体に沁みていくような感じがした。
念入りに隅から隅まで身体を磨きあげたアルベティーナは、ルドルフが言っていた着替え――ガウンを羽織った。
「お待たせしました」
アルベティーナが浴室から戻ると、ルドルフはグラスを手にしていた。グラスの中には琥珀色の液体が揺らめいている。
「俺も湯を浴びる。お前はとりあえずこれでも飲んで待っていろ」
ルドルフから手渡されたグラスを受け取ると、アルベティーナは一口それを飲んだ。
「あ、美味しい……」
「そうだろう? もう少し飲みたかったら、そこのテーブルにある」
「ありがとうございます」
アルベティーナが礼を口にすると、ふっとルドルフの顔が綻んだ。それはアルベティーナが好きな彼の表情の一つでもある。
ルドルフの姿が浴室へ消えたのを見送ると、もう一杯飲み物をもらった。
(このお酒……。どちらのお酒かしら。美味しいわ)
喉が渇いていたからか、アルベティーナは一人でその飲み物を楽しんでいた。
二杯目を飲んだ頃、瞼が重くなるような感覚があった。グラスをテーブルの上に置くと、寝台の上に腰をおろす。
(団長……。遅いかも)
ルドルフがなかなか浴室から戻ってこないような気がした。いや、彼がそこに入ってから、それほど時間は経っていないのだ。それでも彼を待つ時間は、とても長く感じていた。
(もしかして、飲み過ぎたかしら)
この国では十八から酒を飲んでも良いことになっているが、アルベティーナはあまりお酒を嗜まない。だから、ウォルシュ侯爵にグラスを渡されてそれを飲んだ時も、喉元を通り過ぎる刺激に、顔をしかめてしまったくらいなのだ。
だが、このお酒は甘くて葡萄の香りがして、飲みやすかった。そして湯上りということもあって、二杯も飲んでしまった。
(団長が戻ってくるまで、少し横になっていてもいいかしら……)
頭がぼんやりとしてきた。重くなる瞼に抗えない。
(団長、遅いな)
そんなことを考えながら、アルベティーナは寝台の上に横になり、瞼を閉じる。ふっと意識を手放しかけたとき、ふっと彼女は気付いた。
(もしかして、団長……。こうやって私を眠らせて……)
そこでアルベティーナは眠りに落ちた。
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