25 / 57
第五章
2
しおりを挟む
「ディアが、この採掘部隊で仕事をしていると聞いて。驚いたよ」
「ええ、わたくしも驚いております。このような立派な仕事、わたくしに務まるかと思っておりましたが、他の魔導士や採掘師たちに支えられ、なんとかこなせています」
「王都にいたときよりも、顔色もよさそうだし。それに少し、健康的になったような気がする」
しばらく会わないうちにリューディアも身体付きもふっくらとして丸みを帯びてきたように感じた。
「そうですか?」
「うん。何よりも、こうやってボクとの会話を楽しんでいるディアがいる。あちらにいたときは、いつも俯いていたよね。こんな風にボクの顔を見てくれなかった」
「そう、でしたか?」
「うん。だけど、今のディアの方が、以前よりも何十倍も魅力的だ。君はそうやって笑っていた方がいいよ」
魅力的。エメレンスにそう言われてしまっては、恥ずかしくてリューディアはただ頬を染めるだけ。
会話も途切れ、気まずい空気と時間が流れる。
「あ、えと。ディア。その、仕事について教えてくれないか?」
この居たたまれない空気から逃げ出すかのように、エメレンスが尋ねた。
「あ、はい。そうですね。では、今日の仕事の内容について説明します。あ、それよりも先に。その、採掘部隊の主な仕事というのは、お兄さまからお聞きになりましたか? その、仕事も大きく三つに分かれているということを」
「うん。聞いた。探鉱、採鉱、選鉱の三つでしょ。そしてボクたちは採鉱の担当だ」
「はい。そうです。採掘のための安全管理やスケジュール調整を担当します。今日はこちらの坑道、これから採掘師たちに採掘してもらうために、先に安全確認を行うところです。採掘現場は、ここを進んだ奥の右側になります。まずはそこまで行ってみますね」
先ほど崩してしまった道を避けて、先に進む。
「ここはまだ、手つかずの採掘現場です。これから、採掘してもらう場所になります」
この先は行き止まり。というのもこの先を掘ってもらう必要があるから。
「わたくしたちの仕事は、安全の維持のために魔法を使うこともありますが、どちらかというと地学、統計学といったものを使う方が多いかもしれませんね」
「うん、そうだね。ここは少し脆そうだ」
「お気づきになられましたか? このような場所を把握して、事前に対策をするのがわたくしたちの仕事なのです」
「ディア。なんか、楽しそうだ」
「はい。楽しいです。その、ここには、わたくしの美醜について口にされる方もいらっしゃらなくて。みな、自分たちのことで手いっぱいのようです。それに、このフードとレンさまが贈ってくださった眼鏡もありますから」
そこでリューディアははにかめば、エメレンスの心臓もドクンと大きく跳ねる。レンズの大きい眼鏡をかけていたとしてもリューディアの魅力を隠しきれるものでもない。それでも、自分のことに精一杯な人たちばかりであれば、リューディアに構っている暇など無いのだろう。それだけでも、ほっと胸をおろすことのできる案件だ。
それから二人でその現場の状況を確認し、資料へと落とし込んでいった。
「ええ、わたくしも驚いております。このような立派な仕事、わたくしに務まるかと思っておりましたが、他の魔導士や採掘師たちに支えられ、なんとかこなせています」
「王都にいたときよりも、顔色もよさそうだし。それに少し、健康的になったような気がする」
しばらく会わないうちにリューディアも身体付きもふっくらとして丸みを帯びてきたように感じた。
「そうですか?」
「うん。何よりも、こうやってボクとの会話を楽しんでいるディアがいる。あちらにいたときは、いつも俯いていたよね。こんな風にボクの顔を見てくれなかった」
「そう、でしたか?」
「うん。だけど、今のディアの方が、以前よりも何十倍も魅力的だ。君はそうやって笑っていた方がいいよ」
魅力的。エメレンスにそう言われてしまっては、恥ずかしくてリューディアはただ頬を染めるだけ。
会話も途切れ、気まずい空気と時間が流れる。
「あ、えと。ディア。その、仕事について教えてくれないか?」
この居たたまれない空気から逃げ出すかのように、エメレンスが尋ねた。
「あ、はい。そうですね。では、今日の仕事の内容について説明します。あ、それよりも先に。その、採掘部隊の主な仕事というのは、お兄さまからお聞きになりましたか? その、仕事も大きく三つに分かれているということを」
「うん。聞いた。探鉱、採鉱、選鉱の三つでしょ。そしてボクたちは採鉱の担当だ」
「はい。そうです。採掘のための安全管理やスケジュール調整を担当します。今日はこちらの坑道、これから採掘師たちに採掘してもらうために、先に安全確認を行うところです。採掘現場は、ここを進んだ奥の右側になります。まずはそこまで行ってみますね」
先ほど崩してしまった道を避けて、先に進む。
「ここはまだ、手つかずの採掘現場です。これから、採掘してもらう場所になります」
この先は行き止まり。というのもこの先を掘ってもらう必要があるから。
「わたくしたちの仕事は、安全の維持のために魔法を使うこともありますが、どちらかというと地学、統計学といったものを使う方が多いかもしれませんね」
「うん、そうだね。ここは少し脆そうだ」
「お気づきになられましたか? このような場所を把握して、事前に対策をするのがわたくしたちの仕事なのです」
「ディア。なんか、楽しそうだ」
「はい。楽しいです。その、ここには、わたくしの美醜について口にされる方もいらっしゃらなくて。みな、自分たちのことで手いっぱいのようです。それに、このフードとレンさまが贈ってくださった眼鏡もありますから」
そこでリューディアははにかめば、エメレンスの心臓もドクンと大きく跳ねる。レンズの大きい眼鏡をかけていたとしてもリューディアの魅力を隠しきれるものでもない。それでも、自分のことに精一杯な人たちばかりであれば、リューディアに構っている暇など無いのだろう。それだけでも、ほっと胸をおろすことのできる案件だ。
それから二人でその現場の状況を確認し、資料へと落とし込んでいった。
2
お気に入りに追加
1,071
あなたにおすすめの小説
【完結】愛する人には婚約者がいました。~愛する人もその婚約者も私の幼馴染みだから、私は二人を祝福することに決めたんです。~
仰木 あん
恋愛
公爵令嬢のローラには心から愛する人がいた。
しかし、その人には婚約者がいた。
愛する人は昔からの幼馴染み、その相手の婚約者も同じく幼馴染みであることから、彼女は二人が幸せになるならと、二人を祝福するとこにした。
そんな二人の婚約式の後、ローラ自身も、強力な力を持つ王子と婚約をすることとなる。
ローラは王子を愛そうと思うのだけれど、それがなかなか出来ない。
自分の気持ちを抑えながら、日々を過ごすローラの物語。
もちろんフィクションです。
名前等は実際のものと関係ないです。
設定緩めですので、あたたかい目で見守って下さい。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?
バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。
カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。
そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。
ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。
意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。
「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」
意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。
そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。
これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。
全10話
※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。
※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。
※小説家になろう様にも掲載しています。
完結 偽りの言葉はもう要りません
音爽(ネソウ)
恋愛
「敵地へ出兵が決まったから別れて欲しい」
彼なりの優しさだと泣く泣く承諾したのにそれは真っ赤な嘘だった。
愛した人は浮気相手と結ばれるために他国へ逃げた。
完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。
音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。
アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……
嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる