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騎士か魔導士か(1)
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十歳になったら貴族は国立小等学校へ通わなければならない。十三歳になったら騎士科か魔導科を選ばなければならない。さらにその魔導科の中の優秀な女性から、皇族男児の婚約者が選ばれる。と、されている。
これは昔から言われているこ。なぜこのようなことになったのか、誰もわからない。
昔からの決まり事とは、そういうものなのである。誰も疑問には思わない、思ってはいけない。それに従うだけ。それに反すると、何か不吉なことが起こるのではないか、と。
まあ、ようするに。
その魔法の力で皇族を守る、ということを期待されているのだろう、と人々は思っていた。そしてその魔導の力を子孫へと繋いでいく。だから皇族は魔力が強いし、そこから生まれる子もまた魔力が強い。
さて、ここにそんな岐路に立たされる少女が一人いる。
彼女の名はミレーヌ・シラク。シラク公爵の娘で、ちょうど年は十三になるところ。
騎士の父と兄を持ち魔導士の母を持つ、というまさしく恵まれている家族環境。
さらに、父は騎士団長、母は白魔導士団長というまさしく恵まれた血筋。
さらにさらに、兄も騎士団に入団し、第五騎士隊の副隊長という地位についていた。
皇族の婚約者に選ばれても見劣りしないような家庭環境と血筋を持ち合わせている少女である。
父親は、母にそっくりなミレーヌを溺愛していたし、兄も十二も年の離れた妹を可愛がっていた。文字通り目に入れても痛くない程可愛がっていて、仕事で長期不在にした後、戻ってきたときには、その顔をミレーヌの顔にすりすりと擦りつけてくる。本当に目の中に入るんじゃないか、とミレーヌが不安に思ってしまうくらいに。
だけどミレーヌ自身も、身体が大きくて騎士である父と兄を尊敬していたし、とても優しいので大好きだった。だから父親のそんな行為も嫌いではなかった。
また、彼女が十三歳になろうとしている今でも、父と兄にぎゅっと抱きつくと、すぐに二人は抱き上げてくれる。それだけ体格が良い二人。ミレーヌが小さいから、というのもある。
母親は体が細くて小柄だけれど、団長として白魔導士団を取りまとめる姿は、凛としていてかっこいい。
そんな母親がぎゅっと父親に抱き着くと、身体の大きな父親は母親も軽々と抱き上げていた。そのうち、左手に母親を、右手にミレーヌを抱き上げるのではないかと思っていたのだが、昔はできたけど今はできないな、と豪快に笑っていた。一応、ミレーヌもそれなりに大きくなってきているようだ。
そんなある日。
ミレーヌが十三歳になろうとしている、ということは騎士になるか、魔導士になるか。つまり、騎士科を選ぶか、魔導科を選ぶか。という選択に迫られていた。
ミレーヌにとっては、どちらも捨てがたいのだが、どちらか一つを選ばなければならないときがやってきたのだ。
魔導科という道を選択すると、もれなく皇族男児の婚約者になるかもしれない、という特典がついてくる。結婚や皇族に憧れる女性にとっては、まちがいなく魔導科という道を選ぶことだろう。
だから、ミレーヌの家族も彼女が魔導科を選ぶと思っていた。
ところが。
これは昔から言われているこ。なぜこのようなことになったのか、誰もわからない。
昔からの決まり事とは、そういうものなのである。誰も疑問には思わない、思ってはいけない。それに従うだけ。それに反すると、何か不吉なことが起こるのではないか、と。
まあ、ようするに。
その魔法の力で皇族を守る、ということを期待されているのだろう、と人々は思っていた。そしてその魔導の力を子孫へと繋いでいく。だから皇族は魔力が強いし、そこから生まれる子もまた魔力が強い。
さて、ここにそんな岐路に立たされる少女が一人いる。
彼女の名はミレーヌ・シラク。シラク公爵の娘で、ちょうど年は十三になるところ。
騎士の父と兄を持ち魔導士の母を持つ、というまさしく恵まれている家族環境。
さらに、父は騎士団長、母は白魔導士団長というまさしく恵まれた血筋。
さらにさらに、兄も騎士団に入団し、第五騎士隊の副隊長という地位についていた。
皇族の婚約者に選ばれても見劣りしないような家庭環境と血筋を持ち合わせている少女である。
父親は、母にそっくりなミレーヌを溺愛していたし、兄も十二も年の離れた妹を可愛がっていた。文字通り目に入れても痛くない程可愛がっていて、仕事で長期不在にした後、戻ってきたときには、その顔をミレーヌの顔にすりすりと擦りつけてくる。本当に目の中に入るんじゃないか、とミレーヌが不安に思ってしまうくらいに。
だけどミレーヌ自身も、身体が大きくて騎士である父と兄を尊敬していたし、とても優しいので大好きだった。だから父親のそんな行為も嫌いではなかった。
また、彼女が十三歳になろうとしている今でも、父と兄にぎゅっと抱きつくと、すぐに二人は抱き上げてくれる。それだけ体格が良い二人。ミレーヌが小さいから、というのもある。
母親は体が細くて小柄だけれど、団長として白魔導士団を取りまとめる姿は、凛としていてかっこいい。
そんな母親がぎゅっと父親に抱き着くと、身体の大きな父親は母親も軽々と抱き上げていた。そのうち、左手に母親を、右手にミレーヌを抱き上げるのではないかと思っていたのだが、昔はできたけど今はできないな、と豪快に笑っていた。一応、ミレーヌもそれなりに大きくなってきているようだ。
そんなある日。
ミレーヌが十三歳になろうとしている、ということは騎士になるか、魔導士になるか。つまり、騎士科を選ぶか、魔導科を選ぶか。という選択に迫られていた。
ミレーヌにとっては、どちらも捨てがたいのだが、どちらか一つを選ばなければならないときがやってきたのだ。
魔導科という道を選択すると、もれなく皇族男児の婚約者になるかもしれない、という特典がついてくる。結婚や皇族に憧れる女性にとっては、まちがいなく魔導科という道を選ぶことだろう。
だから、ミレーヌの家族も彼女が魔導科を選ぶと思っていた。
ところが。
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