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団長(3)*
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気がつけば、自身のベッドの柱に両手両足を拘束されていた。
心配そうにこちらの顔を覗き込むミロの顔が見えたような気がした。だが、すぐに気を失い、また目が覚める。誰もいない。そして、意識を奪われる。それの繰り返しだった。
これは間違いなく魔物の体液による作用である。そのような文献を読んだことがあったため、すぐにわかった。魔物の腕を切り落としたときに飛び散った体液が、目や鼻からニールの体内に取り込まれたのだ。
なんとか目が覚め、自我を保てた時にミロに伝える。
「魔導全集第四巻、魔物の章の第十三項」
ミロはそれだけですべてを理解したはずだ。彼は若いが、非常に優秀な魔導士である。だからニールが側においている。
すべてを彼に託すと、ほっと安堵に包まれ、意識を手放した。
彼は聖女を連れてくるだろうか。ニールを助けられるのは聖女アズサしかいない。あとはアズサが引き受けてくれるかどうかだ。
それが問題でもある。
彼女に断られたら、ニールは確実に死ぬ。
それはそれでよいのかもしれない。聖女に命を握られ、彼女によって生死を左右される。なんて刺激的な人生なのだろうか。
ゆらゆらとする意識の中をさ迷い、自分の人生を見直していた。走馬灯とは違うような、過去に遡っていく感じだった。
『アンヒム団長、苦しそうですね』
アズサの声が聞こえる。幻聴だろうか。そろそろ死期が近いのか。
ぼんやりとする頭を軽く振る。
『アンヒム団長、私は団長を助けたいだけなのです』
最期になんて素敵な夢をみているのだろうか。
だが、それは夢ではなかった。
アズサがニールを助けるために身体を差し出してくれたのだ。
「んっ」
腕の中の彼女が身じろいだ。彼女の白い肌にはところどころ鬱血痕が散っている。もちろん、それを残したのはニールである。
「起きたのか?」
「ん? あっ」
ぱっと目を開けた彼女は、驚いたように頬を赤く染め始めた。何か言いたそうに口をもごもごと動かすが、言葉は出てこない。
「なぁ、いいか?」
ニールは、熱くなっている芯を彼女に押し付けた。二人とも身体には何も身に着けておらず、こうやってシーツにくるまっている。
「朝から?」
「朝からじゃなかったらいいのか?」
ニールの言葉に、アズサは頬を赤く染めたまま「そうね」と呟く。
「そうか。なら、いいんだな」
まだ寝ぼけている彼女を組み敷く。
「な、ちょ。ちょっと」
「朝からじゃなかったら、いいんだろ? もう、昼過ぎだ」
「は?」
信じられない、とでも言うかのように、彼女は大きく目を見開いた。
「昼過ぎ? 朝じゃなくて?」
やはり彼女はニールの言葉が信じられないようだ。
「こんなところで嘘をついてどうする」
「あなたのことだから、そうやって私のことを誤魔化そうとしているのかなって」
「残念ながら、昼過ぎだな」
ニールはベッドを覆うカーテンを開けた。カーテンの向こう側に見える窓にはレースのカーテンが引かれ、眩しい太陽の光を透かしている。
その光の入り込み具合を考えれば、朝ではなく昼過ぎ、つまり太陽が昇って真上を通り過ぎてしまったのがよくわかる。
「魔導士団長が、こんな堕落した生活を送ってもいいわけ?」
シーツを胸元にまで手繰り寄せ、アズサは身体を起こした。
「問題ない。それに、これは堕落ではない。俺の魔力を高めるために必要な行為だ。いや、俺を助けるためと言えば、周囲も納得するだろう」
「それって、ただヤりたいだけに聞こえるんだけど」
「ああ、ヤりたいに決まっているだろう? やっと好きな女を手に入れたんだ」
ニールが真剣な眼差しで訴えると、呆れたような声が聞こえてくる。
「だから童貞っていやなのよ。めんどくさい」
「そうだな。お前には俺の初めてを奪った責任を取ってもらわねばならないな」
「こんな風に?」
にたりと笑ったアズサは、膝を立ててニールの硬くなったものをグリグリと刺激してきた。
「くっ」
予想しなかった行為に、ニールは苦悶の声を漏らす。
「素敵な鳴き声ね」
アズサの手がニールの逸物に伸びた。
「あぁ……。硬い。こうやって、握って動かしたら、どうなるのかしら?」
「うっ、くぅ」
ニールが歯をぎりぎりと噛み締める。
だが、ニールも負けていられない。
心配そうにこちらの顔を覗き込むミロの顔が見えたような気がした。だが、すぐに気を失い、また目が覚める。誰もいない。そして、意識を奪われる。それの繰り返しだった。
これは間違いなく魔物の体液による作用である。そのような文献を読んだことがあったため、すぐにわかった。魔物の腕を切り落としたときに飛び散った体液が、目や鼻からニールの体内に取り込まれたのだ。
なんとか目が覚め、自我を保てた時にミロに伝える。
「魔導全集第四巻、魔物の章の第十三項」
ミロはそれだけですべてを理解したはずだ。彼は若いが、非常に優秀な魔導士である。だからニールが側においている。
すべてを彼に託すと、ほっと安堵に包まれ、意識を手放した。
彼は聖女を連れてくるだろうか。ニールを助けられるのは聖女アズサしかいない。あとはアズサが引き受けてくれるかどうかだ。
それが問題でもある。
彼女に断られたら、ニールは確実に死ぬ。
それはそれでよいのかもしれない。聖女に命を握られ、彼女によって生死を左右される。なんて刺激的な人生なのだろうか。
ゆらゆらとする意識の中をさ迷い、自分の人生を見直していた。走馬灯とは違うような、過去に遡っていく感じだった。
『アンヒム団長、苦しそうですね』
アズサの声が聞こえる。幻聴だろうか。そろそろ死期が近いのか。
ぼんやりとする頭を軽く振る。
『アンヒム団長、私は団長を助けたいだけなのです』
最期になんて素敵な夢をみているのだろうか。
だが、それは夢ではなかった。
アズサがニールを助けるために身体を差し出してくれたのだ。
「んっ」
腕の中の彼女が身じろいだ。彼女の白い肌にはところどころ鬱血痕が散っている。もちろん、それを残したのはニールである。
「起きたのか?」
「ん? あっ」
ぱっと目を開けた彼女は、驚いたように頬を赤く染め始めた。何か言いたそうに口をもごもごと動かすが、言葉は出てこない。
「なぁ、いいか?」
ニールは、熱くなっている芯を彼女に押し付けた。二人とも身体には何も身に着けておらず、こうやってシーツにくるまっている。
「朝から?」
「朝からじゃなかったらいいのか?」
ニールの言葉に、アズサは頬を赤く染めたまま「そうね」と呟く。
「そうか。なら、いいんだな」
まだ寝ぼけている彼女を組み敷く。
「な、ちょ。ちょっと」
「朝からじゃなかったら、いいんだろ? もう、昼過ぎだ」
「は?」
信じられない、とでも言うかのように、彼女は大きく目を見開いた。
「昼過ぎ? 朝じゃなくて?」
やはり彼女はニールの言葉が信じられないようだ。
「こんなところで嘘をついてどうする」
「あなたのことだから、そうやって私のことを誤魔化そうとしているのかなって」
「残念ながら、昼過ぎだな」
ニールはベッドを覆うカーテンを開けた。カーテンの向こう側に見える窓にはレースのカーテンが引かれ、眩しい太陽の光を透かしている。
その光の入り込み具合を考えれば、朝ではなく昼過ぎ、つまり太陽が昇って真上を通り過ぎてしまったのがよくわかる。
「魔導士団長が、こんな堕落した生活を送ってもいいわけ?」
シーツを胸元にまで手繰り寄せ、アズサは身体を起こした。
「問題ない。それに、これは堕落ではない。俺の魔力を高めるために必要な行為だ。いや、俺を助けるためと言えば、周囲も納得するだろう」
「それって、ただヤりたいだけに聞こえるんだけど」
「ああ、ヤりたいに決まっているだろう? やっと好きな女を手に入れたんだ」
ニールが真剣な眼差しで訴えると、呆れたような声が聞こえてくる。
「だから童貞っていやなのよ。めんどくさい」
「そうだな。お前には俺の初めてを奪った責任を取ってもらわねばならないな」
「こんな風に?」
にたりと笑ったアズサは、膝を立ててニールの硬くなったものをグリグリと刺激してきた。
「くっ」
予想しなかった行為に、ニールは苦悶の声を漏らす。
「素敵な鳴き声ね」
アズサの手がニールの逸物に伸びた。
「あぁ……。硬い。こうやって、握って動かしたら、どうなるのかしら?」
「うっ、くぅ」
ニールが歯をぎりぎりと噛み締める。
だが、ニールも負けていられない。
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