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聖女(11)*

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 打擲音が響く。

「あっ……、あっ……」

 彼の腰の動きに合わせて、アズサからも甘美な声が零れだす。

「奥がいいのか?」

 懸命に腰を振るニールの額には、汗が滲み出ている。いつも一つに縛ってある茶色の長髪も、今は乱れており、それが逆に彼の魅力を増していた。

「んっ……、おく……」

 彼が動くたびに、雁首が敏感な襞肉を擦っていく。

「ああっ……。ここも、赤く熟れている……」

 彼の指が淫核に触れた。

「やっ……あ、あぁっ……ダメっ……」

 ただでさえ未踏の地を荒らされたばかりで敏感になっているところを、さらにそこまで刺激されたら、すぐに高みに達してしまう。

「んっ……、あっ……」

 アズサの足は宙に浮き、そのまま彼の腰に絡みつけた。

「くっ……」

 苦しそうに呻き声をあげたのはニールだ。

「あっ……、やっ、あぁ……」

 アズサも今までよりも高い声で喘ぐ。彼に回している足に、ぐっと力がこもる。ドクン、と身体が震えた。心臓がバクバクバクと音を立てて、頭の中で光が弾ける。

「く、うっ……で、でる……」

 ずんと、最奥を突いた彼は、そこで動きを止めた。
 ドクドクドクと熱い液を胎の中に注がれる。

 荒い息遣いだけが響き、お互いを求め合った名残に浸る。

「俺のもので、アズサをいっぱいにしたい……」

 彼がそう言葉を口にした途端、埋もれているその存在をまじまじと感じた。彼の肉棒は衰えを感じない。

「え、あっ。ちょ、ちょっと」

 まさか、このまま二回戦に突入するつもりだろうか。だが、入れる前にアズサの手によって放出した彼からしたら、三回戦になるはずだ。

 いや、それよりも。

 中に出された。この世界の避妊方法がどうなっているのか、確認するのを忘れていた。
 だが、これは治療行為だ。アズサの体液とニールの体液が交わらないと、彼から魔物の毒素は抜け切らない。

 と、さまざまなことを考えてしまう。

「俺に、最高の初めてを与えてくれるのではなかったのか? 聖女アズサよ」

 勝ち誇ったような目で見下ろされるのは、かなり悔しい。

「そ、そうね。あなたには最高の初めてを与えたつもりだったけれども。そうではないと? 私の手で果てたあなたは、とても素直だったのにね。私の中よりも、手をお望みかしら?」
「いや、最高だ。お前は愛らしく鳴いてくれたからな。それに、お前の初めてももらえた」

 ずんと、奥を穿つ。

「ここが、お前の入口だろう? 根元は締め付けているくせに、俺の子種が欲しいと誘っている」

 ズキリと胸が痛む。これは治療行為でありながらも子を成す行為でもある。

「ひ、避妊は?」
「なぜ、避妊する必要がある?」
「だって、赤ちゃんできたら」

 子ができたら、どうなる?

「俺とアズサの子か。それはきっと、可愛くて生意気で素直じゃない子だろうな」

 ニールの顔が近づいてきて、そっと唇が重なった。

「子を授かっても、何も問題ない。気にするな」
 と言われても、アズサは気にする。未婚の子持ち。一人で子を育てるなど、不安しかない。ましてここは慣れぬ世界。

 就職する前に、両親を失っているアズサにとっては、頼りにしていた家族はいないが、それでも行政を頼る方法はあった。
 だが、この世界ではどうなっている?

「アズサは、俺との子が欲しくない、と?」

 ニールは悲しそうに眉をひそめた。
 また、アズサの心がズキンと痛む。

(待って、待って、待って……。なんで、そんな顔をするの?)

「そ、そうね……。今はまだ……。だって、結婚もしていないし」
「結婚をすれば、俺の子を求めると?」

 翡翠色の瞳が、嬉々としている。
 この後の展開がなんとなく読める。だが、この場のこの格好で言われるのはどうなのだろうか。

「聖女アズサよ……。どうか、俺とけっ……んぐっ……」

 アズサは両手でニールの口を塞いだ。これ以上の言葉を、ここで聞いてはならない。
 そもそも、彼から「好きだ」と言われていない。関係を持ったから結婚という流れは、望んでいない。

「ニール。あなた、初めてのようだから教えてあげる。この場でそれを言われても、私は嬉しくない。もう少し、時と場所を選びなさい」

 次第に彼の顔は赤らんできた。ガシリと手首を掴まれる。
 アズサが彼の鼻と口を塞いでしまったため、息ができずに苦しかったらしい。酸素を求めて、大きく息を吐いている。
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