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姉の身代わりに

5.

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「素敵な結婚式だったわね」

「え、それって僕たちの結婚式のこと?」

「あなたとの結婚式は、半年以上も前に終わっているでしょ。リーゼルとオーガストの結婚式よ」

 寝台の上で枕を背もたれにしてゆったりと足を投げ出した男女が、楽しそうに言葉を交わしている。

「それにしても。君がオーガストから求婚されたって聞いたとき、あのときは焦ったな」

「ふん。そうでもしないと、あなたが私に求婚なんてできなかったでしょ」

「それって、オーガストって当て馬だったってこと?」

「さあ?」

「でもさ、二人とも僕が怒鳴り込んでいくのをわかっていたような感じだったよね」

「そうよ。だって私、オーガストから相談されていたのですもの。リーゼルに告白したいけど、どうしたらいいかって。あの子のことよ。オーガストからそんなこと言われたら、恐れ多いとか言って断るに決まってるでしょ? 下手したら、オーガストには私の方が相応しいとか言い出すかもしれない。だからね、まずはオーガストが私に求婚するように仕向けたの。そうすれば、あなたも動くしだろうしってね。私から見たらオーガストとリーゼルの関係に焦らされたけど、オーガストから見たら、あなたと私の関係が気になっていたみたいなのよ」

「もしかして、僕のせい?」

「さあ?」

 この妻は核心に触れようとすると、そう言って誤魔化す。
 男は優しく女の腹に触れた。

「気分はどう?」

「ええ、問題ないわ。だから、あの二人の結婚式にも出席できたわけだし。リーゼルったら、私の身体のことを考えて、日程を決めたらしいから。絶対、お姉様にも出席して欲しいって。オーガストに睨まれたわよ。彼は、もっと早く式を挙げたかったらしいからね」

「結局、僕たちは君たち姉妹にとって当て馬だったってことか」

「さあ?」

「リーゼルが男じゃなくてよかったって思うよ」

「どうして?」

「君がリーゼルのことばかり話をするから、嫉妬しそうだ」

「まあ」
 嬉しそうに微笑んだ女は、身体をひねって男の唇に自分のそれを重ねる。

「ねえ、ダン。そろそろね、お医者様もね。夜の方を再開しても大丈夫でしょうって」

「え? もしかして、それって僕のことを誘ってるの? どれだけ我慢したかわかってる?」

「激しいのはダメよ。優しくね……。あ」

「どうかした?」

「なんか。オーガストって、凄そうじゃない? リーゼル、大丈夫かしら」

「凄そうって、ナニが?」

「何かしら?」
 首を傾げる女に今度は男の方から唇を重ね、その身体をそっと押し倒す。
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