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1巻
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アニトラが頬杖をついて、シャンテルを見つめる。
ローガンもため息をついた。
「団長。副団長の言うとおり、シャンの自覚のなさは、やっぱり潜入調査において危険ですよ」
「シャンテル。君は特別美人ではないけれど、五人の男性がいたとしたら、そのうちの一人はいいかも、と思えるような容姿だ」
ガレットの発言が微妙すぎて、シャンテルは喜んでいいのかどうかがわからない。
「はあ」
気の抜けた返事しかできない。
「だけど、酒場潜入時はもっと目立たない格好をしていたつもりなんですけど」
「まあ、それがそいつのどストライクだったんだろうな。人の好みというものは、本人にしかわからないところがある。ただ、漆黒のメンバーであるなら、そういった相手を軽々と流せるようになってもらいたい」
「そうそう」
ガレットの言葉にローガンが頷いている。
「ほだされても、流されても。身体だけは許すな」
ガレットの言葉がシャンテルの身に刺さる。
「だけど、許しちゃったしね」
アニトラの一言が的確すぎて、シャンテルとしては身の縮む思いである。
「はあ」
肩を丸めて返事をした。
「君は魔法を使えたじゃないか。なぜ、それを使って逃げなかった?」
ガレットから痛いところを衝かれてしまった。
なにしろシャンテルは魔法が使えるのだ。それが漆黒に勧誘された理由でもある。
「あの、ですね。実は、魔力切れを起こして、一時的に使えなくなったんですよね」
その告白にガレットの右眉がピクリと反応した。
「魔力切れ、だと?」
魔力切れ。その名のとおり、魔法を使いすぎて魔力が切れてしまうこと。魔法は魔力と呼ばれる力を消費して使うのが一般的である。そのため、魔力が切れると魔法を使えなくなる。人によっては気を失うこともある。つまり、寝てしまう。
「はい」
ガレットの言葉に力強く頷くシャンテルなのだが、ローガンの冷たい視線が刺さってきて、胸が痛む。
「やはり昨日、なにが起こったかを、一から聞く必要がありそうだな」
冷静に言ったガレットのその目は、間違いなく怒っていた。
アニトラも笑っているように見えるが、目は怖かった。
◇◆◇◆
時間は一日前にさかのぼる。
シャンテルはシェインとして、大衆酒場である『夜鳴亭』の店員となり潜入調査を行っていた。
街が闇に呑まれ始め、魔導具の明かりがぽつぽつと灯り始める頃から、シャンテルは夜鳴亭で働き出す。
この時間帯は、夕食を求める客で店内もごった返す時間帯である。
「シェインちゃん、これ五番テーブルに運んで」
「はい」
両手で料理を抱えたシャンテルは、指定された五番テーブルに大きな皿を運ぶ。
「はい、お待たせしました」
「うひょー。美味そう」
五番テーブルの客は、男性の三人連れだった。夕食を兼ねて夜鳴亭に足を運んだのだろう。
「はい、こちらはこのタレで食べていただくのがオススメです」
このシャンテルの言葉は『いつものシェインちゃんの一言アドバイス』と、客からは呼ばれている。実は、この一言アドバイスの評判がいいのだ。
「料理も美味しいし、酒も美味いし、お姉ちゃんは可愛いし」
そこでシャンテルはお尻をペロンと撫でられた。残念ながらこの店ではよくあること。
「はいはい。ここはそういうお店ではありません。私よりも美味しい料理ですよ。こっちを味わってくださいね」
手をひらひらと振りながら、シャンテルは五番テーブルを後にする。
ここで目くじらを立てて怒ってはならない。理由は、相手が客だからだ。それとなく注意して、それとなく断る。
裏へ戻ると、どうやら店長も先ほどの客の仕草を目にしていたらしい。
「相変わらず、シェインちゃんは狙われてるね」
「店長。笑ってないで、なんとかしてくださいよ」
両手を腰に当て、シャンテルはむぅと頬を膨らませる。
「わかった、わかった。特別お給金、出してあげるから」
鼠色の髪を清潔そうにうしろに撫でつけている店長は、シャンテルの父親と同じくらいの年代である。いつもニコニコと笑みを浮かべていて、好感がもてる。
『店長、また来ちゃったよ』と毎日言われるくらい、客からも好かれている。
子どもたちからも『てんちょう、てんちょう』と親しまれ、そのたびに目尻を下げていた。まさしく老若男女問わず好かれるような、人のいい男なのだ。
たまに、その人のよさが裏目に出ることもある。ああいった客に対して、強く出られない。
「もぅ」
店長のその性格を知っているシャンテルは、唇を尖らせるしかできない。
シャンテルはできるだけ目立たないようにと、わざと大きな黒ぶち眼鏡をかけて、髪の毛も地味なおさげにしているにもかかわらず、たまに客からはあのような行為をされてしまう。
ひどい時には、仕事終わりに待ち伏せをされることまであった。
店長が言うには、『初心そうだから』のようであるが、彼がもう少し客に強く出てくれれば、このような面倒に煩わせられなくて済むのにと思う。
おさげである髪型がよくないのか、眼鏡姿がよくないのか真剣に悩む。
(そういえば、この姿はローガンにも不評だったな)
不評であれば、男性から狙われる心配もないと思っていたのだ。
それでも、こうやって構われているだけなら、なにも問題はない。
一番のストレスの原因は、そのペロリとお尻を撫でた客相手に、回し蹴りの一つも出せないことだ。
相手は客だ、それ以上の理由はない。
それでも自分の精神安定のため、お尻を撫でた今の客に対して、三回転の回し蹴りを脳内で仕掛けておいた。とにかく今は、脳内妄想で我慢するしかない。
そんなことを考えながら、店内がよく見渡せるいつもの場所に立っていると、片手をあげた客から呼ばれた。
「お待たせしました。ご注文をどうぞ」
シャンテルは、先ほどの出来事を気にせずに、明るい声で振舞う。
片手をあげたカウンター席の客は、三日に一度ほどやってくる客だった。その身なりから推測するに、どこかいいところの上流階級の人間だろう。
「いつもの」
「はい、いつものですね」
注文も『いつもの』で通じてしまう。
彼がこの店に来るようになったのは、ここ一か月ほどだ。その前はなにをしていたのか、どうしてここに来るようになったのか、そういったことはまったくわからない。
店員と客の関係なんてそんなもの。
シャンテルが厨房に向かって料理名を告げると、「あいよー」という料理人からの陽気な声が戻ってくる。このやり取りも好きだった。
「シェインちゃん、カウンター席ね」
料理はすぐにできあがり、店長に指示される。
熱々の料理が並べられたトレイを手にして、カウンター席の男にいつもの料理を運ぶ。
「お待たせしました。いつものです」
彼が『いつもの』と言うから、シャンテルもつい『いつもの』と言ってしまう。
ところが、彼は驚いたようにシャンテルに視線を向けた。
「サービスです」
唇の前で人差し指を立て、小さな声でシャンテルは言った。ほかの人には内緒、という意味だ。
彼のいつものにはない、小さな皿に気づいたのだろう。
男は顔を少し緩め「ありがとう」と小さく呟いた。
シャンテルも「これからもご贔屓に」と、笑顔で小声で答えた。すると男の顔が綻んだ。
「シェインちゃん」
そこで店長の声が飛んでくる。
「悪いけど、今から二階の準備をしてきてもらえないかな。予約が入っちゃって」
「はい」
シャンテルは明るく答え、店長の元へと向かう。
夜鳴亭の二階は大広間になっており、大人数での宴会を開く時に使われている。だが、こんな時間から予約というのも珍しい。
なにしろ日が変わるまではあと三時間。シャンテルの仕事はあと一時間で終わる。
店長は予約の詳細について説明する。人数は十人程度で、大広間を区切ること。テーブルは大きな丸テーブル一つでいいという内容だった。
「店長。私、もう少し残ったほうがいいですか?」
「いや、席の準備だけしてくれたらいいよ。やっぱり、この時間からの予約だからね。変な客も多いんだ。シェインちゃんにはちょっと荷が重いかもね」
店長は苦笑している。
時間が遅くなるにつれ、客層も変わってくるのはある。先ほどのように、お尻を撫でられただけでカッとしているような自分には務まらないような客層なのだろう。
そこまで考えた時、これからの客が大物のように思えてきた。
遅い時間の予約。シャンテルには荷が重いと言われる客層。
(となれば、あれを仕掛けておいたほうがいいかも)
漆黒騎士団のシャンテルとして動き出す絶好のチャンスである。
シャンテルは軽やかに一段飛ばして階段を駆け上がった。
大広間の席を整える傍らで、胸元から魔導具を取り出す。この魔導具は音声を記録することができるもの。つまり録音器と呼ばれるものである。だが、魔力を用いた魔導具の録音器であるため、正確には魔導録音器と呼ばれている。
シャンテルは魔導録音器に魔力を込めて、テーブルの裏側に貼り付けた。十人程度で、大きな丸テーブル一つという指示だ。これだけの広さであれば、録音器は一つで充分だ。
テーブルの周りに椅子を十脚並べ、衝立も綺麗に並べ直す。最後にテーブルの上と椅子の上を丁寧に拭きあげた。
準備した部屋をぐるりと見回してから、シャンテルは階下へ戻る。
「店長、準備終わりましたよ」
「ありがとう。今日はちょっと早いけど、もうあがっていいよ。お給金は、きちんと時間分渡すからね」
「店長、ありがとうございます。だから、店長、大好き」
そうシャンテルが口にすれば、店長もまんざらでもないようだ。
日が変わるまであと二時間と少し。シャンテルは帰路についた。
店の裏口を出たところから、ヒタ、ヒタ、と不気味な足音がうしろからついてきた。
立ち止まると、足音も止まる。早足で歩くと、足音も速くなる。シャンテルとはつかず離れずの距離を保っている。
いろんな意味で高鳴る胸を押し殺して、彼女はくるりとうしろを振り向いた。
「シェイン。今、帰りか?」
五番テーブルの三人組だった。ご丁寧にシャンテルの帰宅時間まであの五番テーブルで粘っていたのだろう。
「なにか、御用ですか?」
シャンテルは深く息を吐き出した。
「いや、夜も遅いからな。送っていこうと思ったんだ」
言いながら、三人組はシャンテルへそろそろと近付いてくる。
「御親切に、ありがとうございます」
彼女はできるだけ丁寧に返事をした。相手を挑発しないようにという心がけだ。
「じゃ、行こうか」
先ほど、彼女のお尻を撫でた男が手を差し出してきた。シャンテルはゆっくりとその手を右手で握りしめると、ぐっと力を込めた。
「いてててててて」
男が騒ぎ出す。
「なにすんだ、この」
「ごめんなさい……。その、慣れていないもので」
シャンテルは初心な少女を演じる。なにしろこの初心なところが狙われる理由になっているのだ。
それでも男がシャンテルに掴みかかろうとしたため、彼女はすかさず眠りの魔法を放つ。
ガクリと男の身体が崩れ落ち、派手にいびきをかいて眠ってしまった。残りの二人の男が慌ててやってきて、眠っている男の身体を揺するが、彼は起きそうにない。その隙に、ほかの二人の男にも眠りの魔法をかける。
彼女は炎の魔法とか氷の魔法とか、そういった派手な魔法は使えない。
地味だけど、この眠りの魔法は意外と効果がある。
三人は折り重なるようにして眠っていた。
(仕方ない、たくさんお酒も飲まれていたようですしね)
そう思ったシャンテルは、その場を去ろうとした。
「おい、なにをしている」
騒ぎを聞きつけた別の男がシャンテルに向かって走ってきた。
「あ……。え、えと」
この状況をどう説明すべきか。場合によってはシャンテルが三人の男を倒したように見えるかもしれない。
「大丈夫か」
シャンテルが説明する暇もなく、その走ってきた男性に抱きしめられた。
(誰、この男……)
見上げると、あのカウンター席の男だった。辺りは薄暗いが、はっきりと顔が認識できるほど、それだけ近くに彼の顔がある。
「彼らが、君の後をつけているのが見えたから。それで、急いで追いかけてきたのだが」
彼女の頭を自分の胸に押し付けている彼の視線の先には、三人の男が仲よくいびきをかいて寝ている光景がある。
シャンテルがやったと知られてはならない。
「どうやら、お酒を飲みすぎたみたいですね。だから、眠ってしまったようです」
「そうか。それなら、よかった」
男は、シャンテルの頬に触れた。
「怖かったろう?」
男に触れられて、シャンテルは自分が涙を流していることに気づいた。
「あ、ごめんなさい……。みっともないところを」
シャンテル自身、なぜ泣いているのかがわからなかった。あの男たちが怖かったわけではない。男三人くらいであれば、物理的な攻撃で倒すこともできる。
男は彼女を抱きしめる手に、少し力を入れた。
シャンテルもほっと一息つく。
だが、彼女にとってその状況はよくなかった。
急に、目の前が真っ暗になってガクンと力が抜けた。一人で立つこともできないような感覚に襲われる。
「シェイン?」
カウンター席にいた男は不安げな様子で彼女の名を呼ぶが、シャンテルにはその声が遠くに聞こえた。
彼女は薄れていく意識の中で猛烈に反省していた。
先ほど、魔導録音器のために魔力を使っていた。そして今、三人の男に立て続けに眠りの魔法を使った。魔導士ではないシャンテルは、保持している魔力がすこぶる少ないのだ。
これは魔力切れだ。魔導録音器がなければ、三人くらい眠らせることなど簡単であった。
だから、シャンテルは気づかなかった。このカウンターの男が、彼女を抱きしめながら「魔導士であれば、好都合だな」と呟いていることに――
頭を優しく撫でられている感覚があった。
すっと目を開けると、見たことあるようなないような男の顔が目の前にあった。
「目が覚めたか?」
あのカウンター席の男だった。
「あ、はい。あの……。すみません。ここは?」
「急に君が倒れたから、とりあえず近いところへ連れてきたつもりだが。君の家もわからなかったし」
なぜかカウンター席の男が照れている。
シャンテルは自分が置かれている状況を、冷静に分析し始めた。
頭の下にあるのはこの男の膝である。いわゆる膝枕という状況だ。男の左手はシャンテルの頭をゆっくりと撫でている。まるで子どもをあやすかのように。
彼女はいつもより多めに目を瞬いてから、のろのろと身体を起こす。
「ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」
夜鳴亭の店員であるシェインは丁寧に謝罪をした。
「いや、迷惑ではない。それよりも」
カウンター席の男が顔を寄せてきた。
「あいつらにはなにもされなかったか?」
男の言う『あいつら』が、シャンテルにはすぐには思い出せなかった。
だが目の前の男とシャンテルの共通点を考えると『あいつら』しか心当たりがない。
「あいつらって、五番テーブルの客?」
シャンテルが尋ねると、男は声をあげて笑う。
「そう、五番テーブルの客。怪我をしていないか、みてあげる」
「え、大丈夫ですよ。ほら」
シャンテルは先ほど五番テーブルの男に触れられた右手を差し出した。
「もしかして、この手を触られたのか?」
カウンター席の男はシャンテルの右手を取り、その甲に唇を落とした。驚いた彼女がその男の顔を見上げる。
「消毒」
そう言った男は口元に笑みを浮かべていた。
「や、やめてください。なにもされておりませんから、大丈夫です」
シャンテルは慌てて身体を引いたが、カウンター席の男のほうが強かった。そのまま手をぐいっと引っ張られ、彼の腕の中にすっぽりとおさまってしまう。
「なにもされていないわけはないだろう? 君は、泣いていた」
乾いた涙の痕を、指先でそっと撫でられる。
シャンテルの顔に、ぱっと熱がたまった。
「あれは……」
不覚にも彼の前で泣いてしまったことが恥ずかしく、なにかしら言い訳を考えてみる。だが言葉が出てこないため、目を伏せるしかない。
「そういえば、シェイン。君は、あいつらにこちらも触られていたようだな」
ワンピースの上から、男が彼女のお尻を優しく撫で上げた。
「ひゃっ」
予想していなかった行為に、シャンテルからは悲鳴が漏れてしまった。
「こちらも、怪我をしていないか見たほうがいいだろうか?」
男はにんまりと口角をあげる。
(見るって、お尻じゃない……。そんなところ、見せられるわけないでしょ)
心の中では焦りを覚えたが、彼の腕の中におさまっているシャンテルは、首を横に振って抵抗することしかできない。
「いえ、なにもされておりませんので。心配してくださってありがとうございます」
「シェイン」
突然、その男は優しく彼女の偽名を呼んだ。その呼び方が胸に響いて、つい彼女も彼の顔を見上げてしまう。
(あ、嫌いではないかも、この顔……)
一目惚れとでも言うのだろうか。いや、客と店員として何度も顔を合わせていたのだから、一目惚れではない。
だが、まじまじとこうやって彼の顔を見てしまうと、胸がぎゅっと締め付けられる。
先ほど、不覚にも涙を流してしまったのは、なぜか彼の顔を見てほっと安心してしまったからだ。
だから今も、彼から目を離せない。
すっと彼の顔が迫ってきて、ふと彼の唇が自分の唇に触れた。
「あっ……。んふ……」
あまりにも激しく唇を奪われるので、息を吐くたびに甘い声が漏れてしまう。彼の舌が口の中に侵入してきて、熱く彼女の舌に絡みつく。
なぜかシャンテルも彼の与えてくれる熱に応えてしまう。
「んっ……」
「すまない」
唇が離れると、二人を紡ぐ糸がぷつりと途切れた。
カウンター席の男はそう言ってシャンテルの身体を抱き上げた。
(すまないって、なに?)
先ほど、男から与えられた口づけによって、身体には微熱がこもっている。
どさりとベッドの上に仰向けにおろされた。
男もベッドに膝をつくと、ギシッと二人分の重みで軋んだ音があがる。
これからなにが起こるのか。同じベッドの上に男と女がいたら、やることなど一つしかない。ぼんやりとした頭でさえも、シャンテルにははっきりと理解できた。
だから、逃げなければならないと思った。身体をよじろうとしたが、すぐに男が覆いかぶさってきた。
「悪いが、俺は今すぐ君がほしい」
その言葉に、なぜかシャンテルの身体が熱くなる。
男はふたたび激しく唇を求めてきた。彼の手が彼女の胸元に狙いを定めて、そこに快楽を与えようとしている。
(しまった。よりによって、今日のワンピースは前開きだった……)
ローガンもため息をついた。
「団長。副団長の言うとおり、シャンの自覚のなさは、やっぱり潜入調査において危険ですよ」
「シャンテル。君は特別美人ではないけれど、五人の男性がいたとしたら、そのうちの一人はいいかも、と思えるような容姿だ」
ガレットの発言が微妙すぎて、シャンテルは喜んでいいのかどうかがわからない。
「はあ」
気の抜けた返事しかできない。
「だけど、酒場潜入時はもっと目立たない格好をしていたつもりなんですけど」
「まあ、それがそいつのどストライクだったんだろうな。人の好みというものは、本人にしかわからないところがある。ただ、漆黒のメンバーであるなら、そういった相手を軽々と流せるようになってもらいたい」
「そうそう」
ガレットの言葉にローガンが頷いている。
「ほだされても、流されても。身体だけは許すな」
ガレットの言葉がシャンテルの身に刺さる。
「だけど、許しちゃったしね」
アニトラの一言が的確すぎて、シャンテルとしては身の縮む思いである。
「はあ」
肩を丸めて返事をした。
「君は魔法を使えたじゃないか。なぜ、それを使って逃げなかった?」
ガレットから痛いところを衝かれてしまった。
なにしろシャンテルは魔法が使えるのだ。それが漆黒に勧誘された理由でもある。
「あの、ですね。実は、魔力切れを起こして、一時的に使えなくなったんですよね」
その告白にガレットの右眉がピクリと反応した。
「魔力切れ、だと?」
魔力切れ。その名のとおり、魔法を使いすぎて魔力が切れてしまうこと。魔法は魔力と呼ばれる力を消費して使うのが一般的である。そのため、魔力が切れると魔法を使えなくなる。人によっては気を失うこともある。つまり、寝てしまう。
「はい」
ガレットの言葉に力強く頷くシャンテルなのだが、ローガンの冷たい視線が刺さってきて、胸が痛む。
「やはり昨日、なにが起こったかを、一から聞く必要がありそうだな」
冷静に言ったガレットのその目は、間違いなく怒っていた。
アニトラも笑っているように見えるが、目は怖かった。
◇◆◇◆
時間は一日前にさかのぼる。
シャンテルはシェインとして、大衆酒場である『夜鳴亭』の店員となり潜入調査を行っていた。
街が闇に呑まれ始め、魔導具の明かりがぽつぽつと灯り始める頃から、シャンテルは夜鳴亭で働き出す。
この時間帯は、夕食を求める客で店内もごった返す時間帯である。
「シェインちゃん、これ五番テーブルに運んで」
「はい」
両手で料理を抱えたシャンテルは、指定された五番テーブルに大きな皿を運ぶ。
「はい、お待たせしました」
「うひょー。美味そう」
五番テーブルの客は、男性の三人連れだった。夕食を兼ねて夜鳴亭に足を運んだのだろう。
「はい、こちらはこのタレで食べていただくのがオススメです」
このシャンテルの言葉は『いつものシェインちゃんの一言アドバイス』と、客からは呼ばれている。実は、この一言アドバイスの評判がいいのだ。
「料理も美味しいし、酒も美味いし、お姉ちゃんは可愛いし」
そこでシャンテルはお尻をペロンと撫でられた。残念ながらこの店ではよくあること。
「はいはい。ここはそういうお店ではありません。私よりも美味しい料理ですよ。こっちを味わってくださいね」
手をひらひらと振りながら、シャンテルは五番テーブルを後にする。
ここで目くじらを立てて怒ってはならない。理由は、相手が客だからだ。それとなく注意して、それとなく断る。
裏へ戻ると、どうやら店長も先ほどの客の仕草を目にしていたらしい。
「相変わらず、シェインちゃんは狙われてるね」
「店長。笑ってないで、なんとかしてくださいよ」
両手を腰に当て、シャンテルはむぅと頬を膨らませる。
「わかった、わかった。特別お給金、出してあげるから」
鼠色の髪を清潔そうにうしろに撫でつけている店長は、シャンテルの父親と同じくらいの年代である。いつもニコニコと笑みを浮かべていて、好感がもてる。
『店長、また来ちゃったよ』と毎日言われるくらい、客からも好かれている。
子どもたちからも『てんちょう、てんちょう』と親しまれ、そのたびに目尻を下げていた。まさしく老若男女問わず好かれるような、人のいい男なのだ。
たまに、その人のよさが裏目に出ることもある。ああいった客に対して、強く出られない。
「もぅ」
店長のその性格を知っているシャンテルは、唇を尖らせるしかできない。
シャンテルはできるだけ目立たないようにと、わざと大きな黒ぶち眼鏡をかけて、髪の毛も地味なおさげにしているにもかかわらず、たまに客からはあのような行為をされてしまう。
ひどい時には、仕事終わりに待ち伏せをされることまであった。
店長が言うには、『初心そうだから』のようであるが、彼がもう少し客に強く出てくれれば、このような面倒に煩わせられなくて済むのにと思う。
おさげである髪型がよくないのか、眼鏡姿がよくないのか真剣に悩む。
(そういえば、この姿はローガンにも不評だったな)
不評であれば、男性から狙われる心配もないと思っていたのだ。
それでも、こうやって構われているだけなら、なにも問題はない。
一番のストレスの原因は、そのペロリとお尻を撫でた客相手に、回し蹴りの一つも出せないことだ。
相手は客だ、それ以上の理由はない。
それでも自分の精神安定のため、お尻を撫でた今の客に対して、三回転の回し蹴りを脳内で仕掛けておいた。とにかく今は、脳内妄想で我慢するしかない。
そんなことを考えながら、店内がよく見渡せるいつもの場所に立っていると、片手をあげた客から呼ばれた。
「お待たせしました。ご注文をどうぞ」
シャンテルは、先ほどの出来事を気にせずに、明るい声で振舞う。
片手をあげたカウンター席の客は、三日に一度ほどやってくる客だった。その身なりから推測するに、どこかいいところの上流階級の人間だろう。
「いつもの」
「はい、いつものですね」
注文も『いつもの』で通じてしまう。
彼がこの店に来るようになったのは、ここ一か月ほどだ。その前はなにをしていたのか、どうしてここに来るようになったのか、そういったことはまったくわからない。
店員と客の関係なんてそんなもの。
シャンテルが厨房に向かって料理名を告げると、「あいよー」という料理人からの陽気な声が戻ってくる。このやり取りも好きだった。
「シェインちゃん、カウンター席ね」
料理はすぐにできあがり、店長に指示される。
熱々の料理が並べられたトレイを手にして、カウンター席の男にいつもの料理を運ぶ。
「お待たせしました。いつものです」
彼が『いつもの』と言うから、シャンテルもつい『いつもの』と言ってしまう。
ところが、彼は驚いたようにシャンテルに視線を向けた。
「サービスです」
唇の前で人差し指を立て、小さな声でシャンテルは言った。ほかの人には内緒、という意味だ。
彼のいつものにはない、小さな皿に気づいたのだろう。
男は顔を少し緩め「ありがとう」と小さく呟いた。
シャンテルも「これからもご贔屓に」と、笑顔で小声で答えた。すると男の顔が綻んだ。
「シェインちゃん」
そこで店長の声が飛んでくる。
「悪いけど、今から二階の準備をしてきてもらえないかな。予約が入っちゃって」
「はい」
シャンテルは明るく答え、店長の元へと向かう。
夜鳴亭の二階は大広間になっており、大人数での宴会を開く時に使われている。だが、こんな時間から予約というのも珍しい。
なにしろ日が変わるまではあと三時間。シャンテルの仕事はあと一時間で終わる。
店長は予約の詳細について説明する。人数は十人程度で、大広間を区切ること。テーブルは大きな丸テーブル一つでいいという内容だった。
「店長。私、もう少し残ったほうがいいですか?」
「いや、席の準備だけしてくれたらいいよ。やっぱり、この時間からの予約だからね。変な客も多いんだ。シェインちゃんにはちょっと荷が重いかもね」
店長は苦笑している。
時間が遅くなるにつれ、客層も変わってくるのはある。先ほどのように、お尻を撫でられただけでカッとしているような自分には務まらないような客層なのだろう。
そこまで考えた時、これからの客が大物のように思えてきた。
遅い時間の予約。シャンテルには荷が重いと言われる客層。
(となれば、あれを仕掛けておいたほうがいいかも)
漆黒騎士団のシャンテルとして動き出す絶好のチャンスである。
シャンテルは軽やかに一段飛ばして階段を駆け上がった。
大広間の席を整える傍らで、胸元から魔導具を取り出す。この魔導具は音声を記録することができるもの。つまり録音器と呼ばれるものである。だが、魔力を用いた魔導具の録音器であるため、正確には魔導録音器と呼ばれている。
シャンテルは魔導録音器に魔力を込めて、テーブルの裏側に貼り付けた。十人程度で、大きな丸テーブル一つという指示だ。これだけの広さであれば、録音器は一つで充分だ。
テーブルの周りに椅子を十脚並べ、衝立も綺麗に並べ直す。最後にテーブルの上と椅子の上を丁寧に拭きあげた。
準備した部屋をぐるりと見回してから、シャンテルは階下へ戻る。
「店長、準備終わりましたよ」
「ありがとう。今日はちょっと早いけど、もうあがっていいよ。お給金は、きちんと時間分渡すからね」
「店長、ありがとうございます。だから、店長、大好き」
そうシャンテルが口にすれば、店長もまんざらでもないようだ。
日が変わるまであと二時間と少し。シャンテルは帰路についた。
店の裏口を出たところから、ヒタ、ヒタ、と不気味な足音がうしろからついてきた。
立ち止まると、足音も止まる。早足で歩くと、足音も速くなる。シャンテルとはつかず離れずの距離を保っている。
いろんな意味で高鳴る胸を押し殺して、彼女はくるりとうしろを振り向いた。
「シェイン。今、帰りか?」
五番テーブルの三人組だった。ご丁寧にシャンテルの帰宅時間まであの五番テーブルで粘っていたのだろう。
「なにか、御用ですか?」
シャンテルは深く息を吐き出した。
「いや、夜も遅いからな。送っていこうと思ったんだ」
言いながら、三人組はシャンテルへそろそろと近付いてくる。
「御親切に、ありがとうございます」
彼女はできるだけ丁寧に返事をした。相手を挑発しないようにという心がけだ。
「じゃ、行こうか」
先ほど、彼女のお尻を撫でた男が手を差し出してきた。シャンテルはゆっくりとその手を右手で握りしめると、ぐっと力を込めた。
「いてててててて」
男が騒ぎ出す。
「なにすんだ、この」
「ごめんなさい……。その、慣れていないもので」
シャンテルは初心な少女を演じる。なにしろこの初心なところが狙われる理由になっているのだ。
それでも男がシャンテルに掴みかかろうとしたため、彼女はすかさず眠りの魔法を放つ。
ガクリと男の身体が崩れ落ち、派手にいびきをかいて眠ってしまった。残りの二人の男が慌ててやってきて、眠っている男の身体を揺するが、彼は起きそうにない。その隙に、ほかの二人の男にも眠りの魔法をかける。
彼女は炎の魔法とか氷の魔法とか、そういった派手な魔法は使えない。
地味だけど、この眠りの魔法は意外と効果がある。
三人は折り重なるようにして眠っていた。
(仕方ない、たくさんお酒も飲まれていたようですしね)
そう思ったシャンテルは、その場を去ろうとした。
「おい、なにをしている」
騒ぎを聞きつけた別の男がシャンテルに向かって走ってきた。
「あ……。え、えと」
この状況をどう説明すべきか。場合によってはシャンテルが三人の男を倒したように見えるかもしれない。
「大丈夫か」
シャンテルが説明する暇もなく、その走ってきた男性に抱きしめられた。
(誰、この男……)
見上げると、あのカウンター席の男だった。辺りは薄暗いが、はっきりと顔が認識できるほど、それだけ近くに彼の顔がある。
「彼らが、君の後をつけているのが見えたから。それで、急いで追いかけてきたのだが」
彼女の頭を自分の胸に押し付けている彼の視線の先には、三人の男が仲よくいびきをかいて寝ている光景がある。
シャンテルがやったと知られてはならない。
「どうやら、お酒を飲みすぎたみたいですね。だから、眠ってしまったようです」
「そうか。それなら、よかった」
男は、シャンテルの頬に触れた。
「怖かったろう?」
男に触れられて、シャンテルは自分が涙を流していることに気づいた。
「あ、ごめんなさい……。みっともないところを」
シャンテル自身、なぜ泣いているのかがわからなかった。あの男たちが怖かったわけではない。男三人くらいであれば、物理的な攻撃で倒すこともできる。
男は彼女を抱きしめる手に、少し力を入れた。
シャンテルもほっと一息つく。
だが、彼女にとってその状況はよくなかった。
急に、目の前が真っ暗になってガクンと力が抜けた。一人で立つこともできないような感覚に襲われる。
「シェイン?」
カウンター席にいた男は不安げな様子で彼女の名を呼ぶが、シャンテルにはその声が遠くに聞こえた。
彼女は薄れていく意識の中で猛烈に反省していた。
先ほど、魔導録音器のために魔力を使っていた。そして今、三人の男に立て続けに眠りの魔法を使った。魔導士ではないシャンテルは、保持している魔力がすこぶる少ないのだ。
これは魔力切れだ。魔導録音器がなければ、三人くらい眠らせることなど簡単であった。
だから、シャンテルは気づかなかった。このカウンターの男が、彼女を抱きしめながら「魔導士であれば、好都合だな」と呟いていることに――
頭を優しく撫でられている感覚があった。
すっと目を開けると、見たことあるようなないような男の顔が目の前にあった。
「目が覚めたか?」
あのカウンター席の男だった。
「あ、はい。あの……。すみません。ここは?」
「急に君が倒れたから、とりあえず近いところへ連れてきたつもりだが。君の家もわからなかったし」
なぜかカウンター席の男が照れている。
シャンテルは自分が置かれている状況を、冷静に分析し始めた。
頭の下にあるのはこの男の膝である。いわゆる膝枕という状況だ。男の左手はシャンテルの頭をゆっくりと撫でている。まるで子どもをあやすかのように。
彼女はいつもより多めに目を瞬いてから、のろのろと身体を起こす。
「ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」
夜鳴亭の店員であるシェインは丁寧に謝罪をした。
「いや、迷惑ではない。それよりも」
カウンター席の男が顔を寄せてきた。
「あいつらにはなにもされなかったか?」
男の言う『あいつら』が、シャンテルにはすぐには思い出せなかった。
だが目の前の男とシャンテルの共通点を考えると『あいつら』しか心当たりがない。
「あいつらって、五番テーブルの客?」
シャンテルが尋ねると、男は声をあげて笑う。
「そう、五番テーブルの客。怪我をしていないか、みてあげる」
「え、大丈夫ですよ。ほら」
シャンテルは先ほど五番テーブルの男に触れられた右手を差し出した。
「もしかして、この手を触られたのか?」
カウンター席の男はシャンテルの右手を取り、その甲に唇を落とした。驚いた彼女がその男の顔を見上げる。
「消毒」
そう言った男は口元に笑みを浮かべていた。
「や、やめてください。なにもされておりませんから、大丈夫です」
シャンテルは慌てて身体を引いたが、カウンター席の男のほうが強かった。そのまま手をぐいっと引っ張られ、彼の腕の中にすっぽりとおさまってしまう。
「なにもされていないわけはないだろう? 君は、泣いていた」
乾いた涙の痕を、指先でそっと撫でられる。
シャンテルの顔に、ぱっと熱がたまった。
「あれは……」
不覚にも彼の前で泣いてしまったことが恥ずかしく、なにかしら言い訳を考えてみる。だが言葉が出てこないため、目を伏せるしかない。
「そういえば、シェイン。君は、あいつらにこちらも触られていたようだな」
ワンピースの上から、男が彼女のお尻を優しく撫で上げた。
「ひゃっ」
予想していなかった行為に、シャンテルからは悲鳴が漏れてしまった。
「こちらも、怪我をしていないか見たほうがいいだろうか?」
男はにんまりと口角をあげる。
(見るって、お尻じゃない……。そんなところ、見せられるわけないでしょ)
心の中では焦りを覚えたが、彼の腕の中におさまっているシャンテルは、首を横に振って抵抗することしかできない。
「いえ、なにもされておりませんので。心配してくださってありがとうございます」
「シェイン」
突然、その男は優しく彼女の偽名を呼んだ。その呼び方が胸に響いて、つい彼女も彼の顔を見上げてしまう。
(あ、嫌いではないかも、この顔……)
一目惚れとでも言うのだろうか。いや、客と店員として何度も顔を合わせていたのだから、一目惚れではない。
だが、まじまじとこうやって彼の顔を見てしまうと、胸がぎゅっと締め付けられる。
先ほど、不覚にも涙を流してしまったのは、なぜか彼の顔を見てほっと安心してしまったからだ。
だから今も、彼から目を離せない。
すっと彼の顔が迫ってきて、ふと彼の唇が自分の唇に触れた。
「あっ……。んふ……」
あまりにも激しく唇を奪われるので、息を吐くたびに甘い声が漏れてしまう。彼の舌が口の中に侵入してきて、熱く彼女の舌に絡みつく。
なぜかシャンテルも彼の与えてくれる熱に応えてしまう。
「んっ……」
「すまない」
唇が離れると、二人を紡ぐ糸がぷつりと途切れた。
カウンター席の男はそう言ってシャンテルの身体を抱き上げた。
(すまないって、なに?)
先ほど、男から与えられた口づけによって、身体には微熱がこもっている。
どさりとベッドの上に仰向けにおろされた。
男もベッドに膝をつくと、ギシッと二人分の重みで軋んだ音があがる。
これからなにが起こるのか。同じベッドの上に男と女がいたら、やることなど一つしかない。ぼんやりとした頭でさえも、シャンテルにははっきりと理解できた。
だから、逃げなければならないと思った。身体をよじろうとしたが、すぐに男が覆いかぶさってきた。
「悪いが、俺は今すぐ君がほしい」
その言葉に、なぜかシャンテルの身体が熱くなる。
男はふたたび激しく唇を求めてきた。彼の手が彼女の胸元に狙いを定めて、そこに快楽を与えようとしている。
(しまった。よりによって、今日のワンピースは前開きだった……)
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