愛しい心は千歳よりさらに

はなおくら

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 誰もいない静かな部屋で、虚ろげに床を見つめていた。

 私が何をしたというのか…。

 そう思っても答えが返ってくるわけではない。

 これからどうしたらいい…暗く寒い部屋ですただ無気力に。

 その時、村の村長さんが家に来た。こちらの様子がおかしかったのを察知したのだろう。娘の花枝さんと慌てた様に家に上がってくる。

「キヨさん?キヨさん!しっかりせぇ!何があったんじゃ⁉︎」

 慌てて聞く村長さんに今まで会ったことをぽつぽつと話した。

 内容を聞いた村長が顔を真っ青にした。

「なんということじゃ…そんな無慈悲なことを…。」

 そう呟くと村長はキヨに言った。

「すまぬ…わしがそなたら夫婦に仕事を頼まなければ…。」

 申し訳なさげにこちらに頭を下げている村長の姿を見ていると不思議と冷静…というのか…落ち着いてくる。

 そしてこんなお年寄りに頭を下げさせる事に罪悪感しかない。

「村長さん…頭を上げてください…あなたのせいではありません…。」

 キヨがそういうが村長は首を振り男泣きしている。

 そうか。私は一人ではないこんなに村長さんを心配させている暇は無いと、奮い立たせ村長にあるお願いをした。

 数日後、何も知らない今吉が家に帰ってきた。

「戻ったぞ…。」

 そういい靴を脱ぐが誰も返事がない。部屋は暗く誰もいない。

 今吉はどうしたのかと家に入るがキヨの姿がない。
 キヨの座っているところできつなときつめがさましげな顔でゆっくりこちらに近寄ってくる。

 キヨはどうしたのかと、帰りを待ってみるが一向に帰ってこない。

 心配になり夜道を歩いていると、奥の茂みにキヨの姿を見つけた。

 今吉がそっと近づいていく隣に村で顔見知りの男が隣におり、その肩にキヨは頭を乗せていた。

 信じられなかった。キヨが浮気をしていたなど。

 今吉は何も言わずに袴を返して家に戻っていった。

 今吉の姿が見えなくなった頃、村長が顔を出した。

「本当にこんなやり方でよかったのか?」

 村長の目の前には涙を流して啜り泣くキヨとどこか気まずげな男がいる。

「いいんです…あの人が生きてさえいてくれるなら…幸せになってくれるなら…。」

 それから村長と協力してくれた男性にお礼を言って家までの道を歩いた。

 こんな私の事もう呆れているだろう…。

 そう考えると足が重く感じる。

 そして家の前、中の様子はまだ今吉が起きているのだろう。

 キヨは腹を決めて中に入る。

「ただいま戻りました…。」

 気まずいながら声を変えると、

「あぁ。」

 今吉はこちらを見ようともしない。 あんな光景を見たら尚更だ。
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