あなたと共に

はなおくら

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「マダム、内緒にしていた事申し訳ありません。」

 イワンが謝るとボンジューヌは笑った。

「気にしなくていいのよ。よくある事だわ。それに貴方も貴方のお父様によく似ているわ。彼もお母様との結婚を隠してどれくらいかしら…10年は知らなかったのよ。一緒に出てきたと思ったら、お母様を見る人を威嚇してばかり…。」

「父がそんな事を?」

「とてもそうは見えませんでした。」

 イワンとアマリアは驚いていた。いつも温厚な伯爵にこんな一面があっただなんて。

「そうよ。それは熱烈にね。だから貴方達の幸せを願っている。またね。」

 そう言ってボンジューヌは風のように去っていった。

「今の方はお父様とのお知り合いだったのね。」

「あぁ、僕も詳しくないが見かけるとよく声を掛けてくれるんだ。」

「そう…。それにしてもイワン、貴方どうして私を妻と?」

 小声でそう問い詰めると、イワンは目を逸らして、さぁ…というだけ。
 内心そうやって紹介された時胸が甘く高鳴った。この人の妻なのだと胸を張って言える喜びが。
 これ以上は問い詰めることが出来ないので話はそこで終わった。

 その時、イワンの事業の取引相手が声を掛けてきた。
 イワンはアマリアにすぐ戻るというと話の輪の中に入っていった。

 アマリアは一人になり、特に知り合いもいるわけではないので、休憩室でしばしゆっくりする事にした。

 部屋に入り、用意されていたお茶をカップに注ぎ、長いソファで一呼吸した。

 座って落ち着いたせいか、段々と眠くなり、いつのまにか意識を失っていった。

「……さん……うさん…お嬢さん…。」

 ふと肩を叩かれる感触に目が覚めた。

 目を開けると赤茶の髪に目が二重の男がこちらを覗き込んでいた。

「申し訳ありません。いつのまにか眠ってしまっていたようですわ…。」

 慌てて身を起こすと、男は笑って返した。

「こんな広い屋敷ではそうでしょう。お名前を伺っても?」

 下心丸出しの男に名を告げる事は嫌だったが、仕方なしに言った。

「バーテンベルク・イワンの妻アマリアと申します。」

「おぉ…ご婦人でしたか。あまりにお若く綺麗だったものですから…失礼しました。ですがご婦人…。」

 そういうと男はアマリアの両手を片手で押さえつけた。

「何をなさるのですか‼︎」

 大きな声をあげ抵抗した瞬間、男は顎を掴みこちらを向かせた。

「美しい…貴方との一夜は甘美なものでしょうな…誰か一人のものになるなどもったいない。」

 男の目を見ると情欲を隠しもしようとしない様子でこちらを見てきた。

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