あなたと共に

はなおくら

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 それから昼食を食べ部屋で読書を楽しんだ。

 約束のお茶の時間になり、イワンと共に伯爵の部屋を訪ねる。

「来たね。庭園の感想はどうだったかな?」

 伯爵が笑顔で迎えてくれた。

「とても素敵でした。この庭園には奥様との思い出が詰まってるのですですね。」

 伯爵はアマリアの言葉に苦笑いを浮かべたがふと昔を思い出すように話し出した。

「私達が初めて出会いもっとも深く愛を重ねた場所がここだった。彼女とは、生まれた時からの幼馴染であり婚約者だったんだ。」

 そういう伯爵はいつものような父親という顔よりも恋する少年のような表情をしていた。

「小さい時はもちろんただの友達としか思えなかったが、いつの頃だろうか…早いうちから彼女を目で追うようになっていたよ。そして結ばれ…イワンというかわいい息子にも恵まれた。」

 そういうとイワンの方へ愛おしげに顔を向ける。

 イワンは照れた表情で瞳を逸らした。

 アマリアの中で、嫉妬などはなかったがふと本当の両親の事を思い出して少し恋しさが胸をよぎった。

 わたしの事を思い自ら手放した両親の心情はどれほどのものだっただろう。
 今も元気で過ごしているのだろうか…。

 アマリアは表情を変えずに微笑んでいたのだが、その異変をイワンは感じ取っていたのだろう。
 彼女の顔を盗み見する様に見つめていた。

 それに気づかない伯爵はまた言葉を続けた。

「彼女は流行病で亡くなってしまい、イワンに申し訳ない事をした。悔やんでも悔やまれる…。だが嫌なことばかりではなかった。君が家族…娘になってくれたからね。そのおかげで屋敷は明るく使用人達やイワン…もちろんわたしにも笑顔が戻った。君は大切な家族だよ。」

 寂しい気持ちになったせいか、さも当たり前のようにいう伯爵の暖かい言葉に目から涙が流れてきた。

 この時アマリアは強い安堵感を覚えていた。

「嬉しいです…そう言っていただけるなんて…。」

 そうだ。遠くに離れた実の両親の事は思い出すと恋しくてたまらないが、こうして家族として思ってくれている人がいるその為にも…。

 自分のわがままで犯した過ちを覆す事はしてはいけない…。

 たとえイワンをこれほど愛していたとしても、この事で伯爵に絶句され悲しませる姿を見せたくはなかった。

 だが今だけはどうかこの卑しい自分の願望に浸らせて欲しい。

 そう心の中で思わずにはいられなかった。

 3人でお茶を楽しんで、もうすぐ夕食だという頃、焦った様子で執事が伯爵に何やら耳打ちをした。

 内容を聞いた伯爵は立ち上がり、イワンとアマリアに言った。
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