あなたと共に

はなおくら

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 目の前にはもはや芸術と呼べる程の噴水庭園が広がっていた。

「素敵…こんな世界があるなんて…。」

 こんなに心躍る事があっただろうか。

 すると戸の向こうから使用人が声を掛けてきた。

 朝食の準備が出来たらしい。

 急いで身支度を整えて、アマリアは階段を駆け降りて行った。

 下に降りると、普通の家庭が食事を取る様な机で、伯爵やイワンとの距離が近い。

 アマリアは両親との食卓を思い出して嬉しくなった。

「おはようございます。ここは素敵なところですね…。」

 伯爵は微笑む。
 イワンは何度かきた事があったのだろういつも通りな反応だった。

「アマリアが喜んでくれて嬉しいよ。そうだイワン食事の後、庭園を案内してはどうかな?」

「もちろんです。」

 アマリアも胸の高揚を抑える事ができなかった。
 こんなに好奇心あふれるのはいつぶりくらいだろうか。

 薬学の学びもやりがいはあるが、今回は少し違う様に感じる。

「私も一緒に見て回りたいのだが仕事が残っていてね…すまない…。」

 伯爵が残念そうにいうのを、アマリアは慌てて返す。

「そんなお父様。気にしないでください。お父様が仕事が終われば3人でお茶をしましょう。楽しみにしてます。」

アマリアの優しさに伯爵は感動していた。

「アマリア、君は優しい子だね。私も頑張るとしよう。それまでイワンよろしく頼むよ。」

「お任せください、後ほど3人で過ごすのを楽しみにしてますよ。」

 伯爵は驚いた。
 イワンがこんな事を言うのは初めて聞いたからだ。
 普段なら仕事の話以外そんなに口を開く方ではない。

 しかし彼女が来てからイワンが元気になって居るのだと実感する度に伯爵はアマリアに感謝した。

 それから食事を終えて、伯爵と別れてからイワンに庭園を見せてもらった。

 はやる気持ちを抑えてアマリアはイワンの隣を歩く。

 そんなアマリアの様子をイワンは笑った。
 そして彼女の手を取り、庭園を案内した。

 初めに見たのは、中央に噴水が置かれておりその周りの庭にに赤い花が見渡す限り咲いていた。

 噴水には女性の銅像が立っていた。

 アマリアが見て居ると横にいたイワンが説明し出した。

「これは僕の母…お母様だ。」

「えっ…?」

 アマリアがイワンの横顔を見つめると、彼は寂しげな様子で語り出す。

「僕が赤ん坊の頃に亡くなったらしい。最近父に聞いたんだ。この別荘…庭園はお父様とお母様の思い出の場所だと。」

 アマリアはもう一度イワンの母の銅像に目を向けた。
 そして心の中で感謝した。

 この人に出会わせてくれてありがとうございます。
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