あなたと共に

はなおくら

文字の大きさ
上 下
20 / 60

20

しおりを挟む
 イワンに連れられて何故か、彼の部屋へと案内された。

 他の使用人はアマリアの荷物を運びにわかれていた。

 既にお茶セットが用意されており、イワンはアマリアが座る椅子を引き、座らせた。

 イワンはアマリアと自分の分と、お茶を注ぎだすと、席に座った。

「すごい…返ってイワンのお茶を頂けるなんて!」

 アマリアが感心していると、イワンが照れた様に言った。

「アマリアが帰ってきたら2人になりたくてね…。」

「…イワン。…そっそういえばお父様はどうしたの?」

「父は領地の視察に廻っているよ。アマリアに会うのを楽しみにしていたよ。」

「私も早く会いたいわ…。」

 アマリアはお茶を一口飲みカップを眺めた。

 顔を上げるとどこか不機嫌な顔をしたイワンがこちらを見つめている。

「どうしたの?」

 アマリアが聞くと、イワンはボソボソと話しだした。

「いや…会いたかったのは自分だけかと思ってね…。」

 アマリアはそんなイワンの姿が可愛くて笑ってしまった。

「ふふっ…。ごめんなさい、貴方があまりに可愛いことを言うものだから!……私も会いたかったわ。」

 アマリアが微笑むとイワンは抱きしめてきた。

「僕も会いたかったよ…。」

 夜になり、アマリアは1人自室にいた。
 伯爵は今日は帰れないとの事だったので早めのお開きとなった。

 先程別れ際、イワンも自室に来ると思っていたが彼は、今日は疲れただろうと事実に戻っていった。

 イワンなりの気遣いなのだろうとその日はすぐに眠りにつけた。

 朝起きてゆっくりした時間を満喫していた。
 学校にいる頃ならば、こんなにゆっくり出来ず急いで支度する毎日だったからだ。

 顔を洗って着替えてからアマリアは、朝食を食べに部屋を出た。

 食事の部屋のドアを開けると伯爵とイワンが既に座って待っていた。

「お待たせしてすみません。おはようございます。」

 アマリアは朝の挨拶を済ませ、伯爵の顔を見た。

 伯爵も嬉しそうに笑顔を返してくれた。

「お父様、お久しぶりです。お会いできるのを楽しみにしていました!」

「アマリア、私もだよ。少し髪が伸びたかな?」

「そろそろ食事が来るよ。食べよう。」

 イワンの言葉を初めに、家族の楽しい会話を始めながら食事についた。

「そういえばアマリア、君から何かおねだりされることは初めてだったから驚いたが別荘が欲しいとはどうしたんだい?」

 伯爵の一言にイワンも興味津々と言った表情でこちらを見ていた。

「はい、学校を卒業しても、薬学の勉強をしたくて…。」

 遠慮気味に返事をすると、伯爵が微笑みながら言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

処理中です...