あなたと共に

はなおくら

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「君以外何もいらないよ…。君だけがいればいい。」

 これが違う家の婚約者同士で有ればどれだけ嬉しい言葉だっただろう。
 血のつながりはないとはいえ、こんな行為は罪でしかない。

 アマリアは罪悪感を胸にしながら、彼の愛を受け入れたい衝動を抑えられなかった。

「イワン…んっ…。」

「アマリア…アマリア…愛してるよ…。」

 それと同時に2人は共に果てた。

 アマリアの頭の中は薄れゆく意識の中、イワンの腕の中にいる幸せに満足していた。

 アマリアが眠りに落ちた時、落ち着いたイワンがねがおを眺めていた。

「すまない…でも君を離すなんて僕にはできない…。」

 そう言ってアマリアを抱き寄せる。
 隙間さえもどかしいほどに…。

 朝方、アマリアが目を覚ますと、隣にイワンが眠っていた。
 彼を起こさない様にとそっと部屋を出て、誰もいない事を確認しながら自分の部屋に戻った。

 自分の部屋に戻るとどこか安堵する。
 昨日の事が夢の様だが、悪い事をした子供が親に叱られる事を考える様な気持ちで心臓がどくどくと早鐘を打っていた。

「私はこれからどうしたら…。」

 いま頭の中にあるのは、イワンの事だった。
 昨日の事が知られれば世間は彼をいい笑い者にするだろう。

 自分が足を引っ張ってしまう事が何より怖かった。

 そこでアマリアは重たい身体を引きずりながらノートに自分の思いの丈を記した。

 混乱する頭を整理したかった。そして今後どうしていくのか。

 そこでアマリア屋敷を出るための計画を考えた。

 今すぐ出て行きたかったが、すぐ出て行っても連れ戻されてしまう。
 内密に事を勧めても伯爵やイワンはこの家の主人だからすぐバレてしまう。

 アマリアは悩んだ。
 そこで閃いたのが、こうだった。

 まず、学校を無事卒業したときに家を出る算段を取ろうと。

 正直これには、イワンと少しでもたくさんの思い出が欲しかったからだった。
 昨夜あんな事をされて嫌になるはずが、どこか彼を愛しく思ってしまう。

 だが何も考えないで家を出るのは得策じゃない。

 どうしたものかと考えたのち、アマリアは申し訳ない気持ちになりながらも、伯爵令嬢が年間に使えるお金を使わせてもらおうと考えた。

 もちろん買ったものなど、伯爵に目を通される。

 ならば、召使いを使わずに自分の日頃のお小遣いとして貯金をしようと企てた。

 貯めておくには秘密の場所が必要だ。
 誰もわからない場所、その時はっとした。

 自室の浴槽の下にドアが付いている小部屋があった。

 昔は石鹸などの日用品が積まれていたのが時代の流れと共に鍵をつけられて誰も使えない様にされていた。
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