あなたと共に

はなおくら

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「トニー⁉︎」

 アマリアは驚いた。まさかこんなところで会えるとは思いもしなかった。
 そんなアマリアの様子を気にしていないのかトニーは陽気に口を開いた。

「アマリア、久しぶりだね。そちらはどなたかな?」

 トニーが笑顔で聞いてくる。
 イワンは笑顔で済ましているが、目が笑っていない。

 そんな彼を気にもしていないのかトニーはアマリアの方を見つめる。

「彼は私の義理の弟なの。」

「あぁ!どうもアメリアからはよく貴方のお話を聞いています。」

 トニーが手を差し出すのをしばらく見つめていたイワンだったが、渋々手を出して握手を交わした。

「どうも…。」

 無愛想な反応にトニーは気にもしていなかった。

 ハラハラした様子で見ていたアマリアがほっと息を吐く。

「アマリア、君に話したい事があるんだ。少しいいかな?」

「えぇ、もちろん大丈夫よ。」

 アマリアはイワンの方を向いて口を開いた。

「イワン、申し訳ないけどここから別行動でもいいかしら?」

「……僕がいたらダメなの?」

 しゅんとした様子で見つめてくる彼を置いていくのに気が引けたが、ここでの目的を考え言葉を返す。

「ごめんね…すぐ戻るから…。」

 アマリアがそういう時、イワンは渋々了承した。

 トニーのエスコートで人目のつかないバルコニーに着いた。

 トニーは体を伸ばしながら言った。

「急にすまない。君に頼みたい事があってね…。」

「大丈夫だけれど、突然どうしたの?」

「実は、僕は婚約者と共にここに出席したんだが、彼女を怒らせてしまってね…口を聞いてくれないんだ。」

 トニーは本当に落ち込んだ様子だった。

「だから少しでいいから行動をしてほしいんだ。」

 アマリアはなぜかと思った。そんなに好きならそばにいるべきなのだはないかと。

「トニー、貴方そんな回りくどい事せずにそばにいて差し上げた方がいいんじゃない?」

 アマリアの発言に、トニーはふっと笑い答える。

「僕はね、どんな形でも彼女が僕を独占してくれる事が嬉しくてたまらないんだよ。怒った瞳で見つめられる事を想像すると…。」

 頬を染める友人に内心呆れてしまう。

「嫌よ…それに私は今回の自分の婚約者を探しにきたのよ?貴方といたらお相手に誤解を生んでしまうわ‼︎」

 必死なアマリアに、トニーは先程のお茶目な表情から一変して、微笑み顔を浮かべ低い声で言った。

「君を幸せにしてくれる彼なら既にすぐそばにいると、僕は思ってる…いや、確実だね。」

「…どういう事?」

 アマリアが聞き返すと、トニーはいつもの調子に戻っていた。

「いつかわかるよ!さぁ…君のことより僕の恋を応援して欲しいな!」

 そういうとトニーはアマリアの腰に手を添えてパーティー会場へと連れ出した。
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