あなたと共に

はなおくら

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 これには流石に姉として戒めなければとアマリアは口を開いた。

「イワン。いくら姉弟といえどもこんな事いけない。それに私たちには許婚ができるのよ!」

 自分で言ってて辛くなる。

「関係ない。俺はそんなところで結婚するつもりもない!」

 アマリアにとって辛い言葉でしかなかった。
 それだけの熱い想いがある程の人物なのだろう。

 それならば可愛い弟のため、なおさら自分は許婚を作らなければと思った。

「……わかりました。貴方がそこまで熱心に思われているのなら、私にも考えがあります。」

「アマリア!」

 イワンは嬉しくなった。自分の気持ちを受け入れてもらえたのだと、だが次の言葉でそれは消えた。

「私は今回のパーティーの件、前向きな考えてお相手を見つけることに致します。」

「っ!違う!そうじゃない……。」

 イワンが慌てて弁解しようとしたが、その続きを聞くのがアマリアには耐えられなかった。

 足早にイワンの元から去っていく。

 それから2人は、お互い話もせぬままパーティー当日を迎えた。

 アマリアは赤色のドレスに白い布を肩から掛けたような服装で部屋に待っていた。

 今は正直気まずい気持ちだ。
 なぜならアマリアをエスコートするのはイワンだ。

 イワンを待っている間、年上らしくどう話を切り出そうか悩んでいた。

 その時、ドアの音が響いた。

 ソワソワしながらも平常心を保ち、声をかけた。

 イワンが扉を開くと、こちらを見つめて固まっている。

 それを相手も気まずいのだと理解したアマリアは何か話そうと試みるもうまくいかない。

「あっ…イワン…その…。」

 そんな反応を見かねたイワンが優しい笑みで手を差し伸べて来る。

「アマリア…行こう…。」

 アマリアは思わず見惚れてしまった。

 止まったまま見つめているとイワンが頬を赤らめて自分からアマリアの手を握り抱き締めた。

「よく似合ってるよ。」

 イワンの褒め言葉にうれしく思いながらも自分の不甲斐なさに少しヤキモキしていた。

 だが彼のエスコートで、固まっていた身体も解れ会場へと入る事ができた。

 伯爵からの紹介を受けた後、伯爵の知人やその御子息と笑顔で会話を進めていく。

 アマリアは誰から見ても綺麗な女性だった。皆一度はと、我先にと寄って来る。

 アマリアが笑顔で御子息と話をしていると、彼女が、わからないところでイワンが殺気を飛ばしてしまうので、皆早々に離れていってしまう。

 アマリアは嫌われているのかと落ち込んでいると予想外の人物が声をかけてきた。

 身に覚えのある声に顔を上げると、そこにはトニーが立っていた。
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