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「いてもたってもいられなくてアマリアを迎えにきたんだ。…嫌だった?」
不安そうにイワンは見つめてくる。
「いいえ!とても嬉しいわ。」
アマリアの中で何か暖かいものを感じた。
(この気持ちはなんなの?)
そう思ったが、きっと家族が迎えにきた喜びだろうと自分の気持ちを流した。
顔を上げるとにこやかに笑っているイワンがいた。
どきっ……。
(なんだろう…弟なのに…なぜ?)
この気持ちに気付いてはいけないような気がした。
屋敷まで向かう馬車の中、二人でこれまで話したかった事をたくさん話した。
少し変わったなと思うところは、イワンがそれ程話さなくなったと言う事だった。
よくみてみると体つきも初めてあった頃より筋肉質になっており見違えるような気がする。
イワンをマジマジとみるアマリアに、彼は頬を赤らめた。
それから静かな空気が流れたまま、屋敷に着いた。
馬車から降りようとすると、イワンが先に降り、手を差し伸べた。
アマリアは驚いていた。
半年程前で有れば先に降りるだけだったのが、今では見違えたようにエスコートしてくれている。
嬉しくなり手を添えて屋敷へと歩き出す。
「お父様も夕方ごろには帰って来られるからそれまでゆっくりしよう。部屋まで送るよ。」
「ありがとう…。」
イワンのエスコートは嬉しかった。
だが嫌な事が頭の中を通り過ぎていった。
(彼に婚約者ができたら、もうこんなふうにはしてもらえないのかしら…。)
そう考えると何か寂しい気持ちになるのだった。
夕方ごろには、伯爵が帰ってきた。
久しぶりの再会に抱擁を交わし合い喜んだ。
「アマリア、見違えるほど綺麗になったね。」
伯爵の褒め言葉に頬を赤く染めて、言葉を返す。
「お父様…たった半年よ!」
「いや、本当に綺麗になったよ。アマリアが来てからイワンも変わった…。ありがとう。」
伯爵は娘と息子の成長を感じたのか、優しい瞳をしている。
イワンはそんな父に呆れながら声をかける。
「お父様…話は食事の時にしましょう。」
イワンが先を歩き出すと、二人は笑って後ろを歩く。
それは仲のいい3人の親子のように。
イワンはこの気持ちいい空気の中、アマリアが学校に向かう日のことを思い出していた。
この時イワンはアマリアに恋心を抱いていた事を自覚した。
初めは優しい姉ができたと思ったところから、自分を理解してくれる人へ、そしてかけがえのない人へと変わるには早かっただろう。
彼女が黒い髪を揺らして、赤い瞳でこちらを見つめて笑う顔に心臓が止まったような気がした。
不安そうにイワンは見つめてくる。
「いいえ!とても嬉しいわ。」
アマリアの中で何か暖かいものを感じた。
(この気持ちはなんなの?)
そう思ったが、きっと家族が迎えにきた喜びだろうと自分の気持ちを流した。
顔を上げるとにこやかに笑っているイワンがいた。
どきっ……。
(なんだろう…弟なのに…なぜ?)
この気持ちに気付いてはいけないような気がした。
屋敷まで向かう馬車の中、二人でこれまで話したかった事をたくさん話した。
少し変わったなと思うところは、イワンがそれ程話さなくなったと言う事だった。
よくみてみると体つきも初めてあった頃より筋肉質になっており見違えるような気がする。
イワンをマジマジとみるアマリアに、彼は頬を赤らめた。
それから静かな空気が流れたまま、屋敷に着いた。
馬車から降りようとすると、イワンが先に降り、手を差し伸べた。
アマリアは驚いていた。
半年程前で有れば先に降りるだけだったのが、今では見違えたようにエスコートしてくれている。
嬉しくなり手を添えて屋敷へと歩き出す。
「お父様も夕方ごろには帰って来られるからそれまでゆっくりしよう。部屋まで送るよ。」
「ありがとう…。」
イワンのエスコートは嬉しかった。
だが嫌な事が頭の中を通り過ぎていった。
(彼に婚約者ができたら、もうこんなふうにはしてもらえないのかしら…。)
そう考えると何か寂しい気持ちになるのだった。
夕方ごろには、伯爵が帰ってきた。
久しぶりの再会に抱擁を交わし合い喜んだ。
「アマリア、見違えるほど綺麗になったね。」
伯爵の褒め言葉に頬を赤く染めて、言葉を返す。
「お父様…たった半年よ!」
「いや、本当に綺麗になったよ。アマリアが来てからイワンも変わった…。ありがとう。」
伯爵は娘と息子の成長を感じたのか、優しい瞳をしている。
イワンはそんな父に呆れながら声をかける。
「お父様…話は食事の時にしましょう。」
イワンが先を歩き出すと、二人は笑って後ろを歩く。
それは仲のいい3人の親子のように。
イワンはこの気持ちいい空気の中、アマリアが学校に向かう日のことを思い出していた。
この時イワンはアマリアに恋心を抱いていた事を自覚した。
初めは優しい姉ができたと思ったところから、自分を理解してくれる人へ、そしてかけがえのない人へと変わるには早かっただろう。
彼女が黒い髪を揺らして、赤い瞳でこちらを見つめて笑う顔に心臓が止まったような気がした。
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