あなたと共に

はなおくら

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 父がいない間に、この広い屋敷の中では殺伐としていた。

 自分を怒鳴り上げ、手を挙げる教師とほぼ一緒に過ごし、心も体も何もしていなくても疲れ果ててしまっていた。

 だからか外から来る人間に、警戒を解くことなどできずにいる。

 問題が明るみになった時、父が泣きながら自分を抱きしめて謝っていた。

 もちろんその家庭教師は国外追放と言う刑が下された。

 それから嘘のように平和だった。
 誰からも怒鳴られる事なく殴られることもない。

 だがそんな生活が当たり前になってきていたから、自分もまた人に優しくなんてできなかった。

 使用人がミスをすれば、重い罰を与えた。

 父に叱られても辞めることなんて出来なかった。
 父もまた困ったことだろう。

 そんな時、僕に姉を連れてくると言い出した。
 正直そんなこと嬉しくもなんともなかった。

 父の自己満足だろうと、冷たく思っていたが、笑顔で賛同した。

 そして数日後、アマリアが現れた。

 家族だなんて思うつもりはないと、突っぱねていたが、父がいなくなっても彼女の態度が変わる事はなかった。

 僕が酷いことを言っても、彼女はめげずに向かってくる。

 最初こそ鬱陶しいと思っていた心が次第と期待へと変わっている事にはとても驚いていた。

 そして今、共にお茶をしている。
 彼女が黄昏ている姿を見つめて…。

 イワンが物思いを辞めて顔を上げるとアマリアは微笑みながら見つめていた。

「私たちいい姉弟になれますね。貴方、可愛い人ですね。」

 アマリア心の底から思っていた。
 自分がこの少年を守りたい、見守っていきたいと本気で考えていた。

 だがイワンに鼻で笑われてしまう。

「一つしか違わないのに、可愛いなんて嬉しくないですよ。」

 アマリアはムッとした。

「私がそう決めたからいいのです!」

 そうして一口お茶を飲んだ。

 イワンは不思議と彼女になら心を許してもいいのでないかと思った。

「貴方は面白い人ですね…。これから期待できそうだ。」

 アマリアは嬉しかった。

 これから彼と家族として仲良くしていける。

 未来への期待が広がっていた。

 それからは毎日お茶会を二人で開いては楽しく過ごしていた。

 3ヶ月なんてあっという間で、伯爵が帰る頃には、彼が驚くほど姉弟の様に笑いあっている二人がいた。

 アマリアは楽しい毎日を送った。

 そしてある日、伯爵から呼び出された。
 それは医療を学ぶ学校への入学手続きだった。

「これは約束だからね。精一杯頑張りなさい。」

 アマリアは願書を手に抱きしめ、伯爵を抱きしめた。

「…お父様!ありがとうございます。」

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