愛しい貴方へ

はなおくら

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「何を笑うことがある?」

 不機嫌気味に聞くタケトルにスサリアは言った。

「陛下、それは誤解です。わたしがお慕いしているのは陛下ですよ?」

 そうスサリアが返すと頬を赤らめてタケトルは照れている。

「だが花を贈られたりと親しい噂を聞いている。」

「その事なのですが…。」

 スサリアは自分の中の違和感を話すことにした。

「どうもおかしいのです。花を送ったりとこちらに好意があるように見せかけていますが、目が不気味というか…何か企んでいるように感じるのです。」

 スサリアの話からタケトルはすぐに反応した。

「まさか…そなたやスルトの言っていた兵士ということか?」

「おそらく…そう睨んでおります。まだ証拠がありません。このまま泳がせておいた方がいいと考えます。」

「それもそうだな…。」

 その時タケトルはスサリアを抱き寄せた。

「だが気をつけるのだぞ…そなたに何かあれば余は成り立たぬ。」

 そう言われると、なんだか照れ臭くなりながらも嬉しく思った。

 そんなある日、いつものように書き物に追われているとブライアンが自身の手をスサリアの手に添えた。

「どういうつもり?」

 即座に払い落とすと、頬を赤くさせて払った手をまた握り返してきた。

「王妃様…あなたをずっとお慕いしておりました…わたしと共にこの城から逃げましょう…。」

 側から見れば身分差に耐えかねて熱烈な告白をしているように見えるかもしれないが、スサリアは分かっていた。

 ブライアンの目が野心に満ち溢れていたからだ。

「無礼者!そなたはどこの者だ…っ!」

 そう叫ぶスサリアに、ブライアンは俯き黙った。

「…ここまでしても騙されないとは…。王妃様は本当に聡明な方だ。」

 そう言った瞬間、ブライアンはスサリアの両手を掴みベッドへと引きずった。

「何をするの!離しなさい‼︎」

 抵抗するスサリアをベッドに投げ捨ててその上に乗り動きを押さえつけるとブライアンは言った。

「…ここであなたが傷物になれば陛下も、そして国民もどう思われるかでしょうね…。」

 そこまで言われて自分がどうなるかわかっている。しかし自分は一国の王妃、そんな事で心を揺るがされてはいけない。何か打開策を考える。

「…やりなさい。もしそれを公にされたとしても、自分が陥れられたとしても王妃の勤めは全うします。」

 堂々と言い放ったスサリアに苛立たし気にブライアンは返す。

「好きに言ってください。あなたはここでその地位を終える。…こうすればあの方が僕に振り向いてくれる…。」

 最後何か呟いてブライアンは行動に出る。もうダメだと思った。
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