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スルトをはじめみんなの顔を見て安心して、スサリアは自室に戻り浴室で体を温めて布団に横になっていた。
今日はタケトルも戻らないだろうと布団の真ん中にいる。
前の自分は枕に涙を濡らしてタケトルが戻るのを朝まで待っていたなと考えていた。
だが今はもう期待などしていない。最近になって思う事が、暗殺が起きる事を想定してスルトを先に離れに送り、自分もまたしばらくしてから隠居して離れで王妃の仕事を、ゆくゆくはケルアの子に仕事を任せればいいと考えている。
そう考えると気が楽になる。そして歳を取り、スルトを王にしてはあげられないが平民と馴染ませいつしか愛する人を見つけてくれる我が子の想像をすると幸せになった。
「…道は…一つではない…。愛する人と…。」
息子の事を思い瞳を閉じて寝ようとした時だった。
「…どう言う意味だ…。」
目を開くと恐ろしい顔で、こちらを見ているタケトルがいた。
おかしい、彼はこの時間はケルアと会い朝まで帰ってこなかったはず…なぜ彼がここにいるのか。
温まった体が冷えていく。
「スサリア…もう一度聴く。愛する者とはどう言う事だっ‼︎」
恐ろしい剣幕でこちらを見つめている。
今までその剣幕を見たことがあったが、自分に向けられるのは初めてだった。
あまりの恐ろしさに体が固まり、声も出せずにいた。
「……へ…いか…っ‼︎」
それを何か隠していると捉えたのか、タケトルは兵士を呼び何かをことづけると、スサリアの近くに近寄り、顎を押さえて口を開かせた。
その時点で何も反論できず、震える手を動かそうとするが抵抗も皆無に等しかった。
「そなたは世のものだ…誰にも渡さぬっ…!」
そしてすぐに口に何かを注ぎ込まれて意識が飛んだのだった。
頭ではひたすら我が子スルトの名を呼び、目の前の息子に手を差し伸べた。
意識を失ったスサリアをタケトルは横抱きにして、地下へと連れていった。
ここは王族を幽閉する時に使う部屋だ。部屋の中は王族が使うと言う事もあってか、美しい調度品で並べられている。
窓もなく、一部のものにしか知られていない場所だった。
タケトルは、スサリアを横たわらせて、側近を下がらせるとスサリアの頬に手を添えた。
「そなたを愛している。…だからこそ他の男を見ることさえ耐え難い程なのに…そなたの心を締めるのが我でない事など……許さぬっ…!」
悲痛な思いを吐き出して、タケトルはスサリアを抱きしめてその隣添い、彼女の顔を見つめ続けた。
その時スサリアの瞳に一雫涙が落ちた。
今日はタケトルも戻らないだろうと布団の真ん中にいる。
前の自分は枕に涙を濡らしてタケトルが戻るのを朝まで待っていたなと考えていた。
だが今はもう期待などしていない。最近になって思う事が、暗殺が起きる事を想定してスルトを先に離れに送り、自分もまたしばらくしてから隠居して離れで王妃の仕事を、ゆくゆくはケルアの子に仕事を任せればいいと考えている。
そう考えると気が楽になる。そして歳を取り、スルトを王にしてはあげられないが平民と馴染ませいつしか愛する人を見つけてくれる我が子の想像をすると幸せになった。
「…道は…一つではない…。愛する人と…。」
息子の事を思い瞳を閉じて寝ようとした時だった。
「…どう言う意味だ…。」
目を開くと恐ろしい顔で、こちらを見ているタケトルがいた。
おかしい、彼はこの時間はケルアと会い朝まで帰ってこなかったはず…なぜ彼がここにいるのか。
温まった体が冷えていく。
「スサリア…もう一度聴く。愛する者とはどう言う事だっ‼︎」
恐ろしい剣幕でこちらを見つめている。
今までその剣幕を見たことがあったが、自分に向けられるのは初めてだった。
あまりの恐ろしさに体が固まり、声も出せずにいた。
「……へ…いか…っ‼︎」
それを何か隠していると捉えたのか、タケトルは兵士を呼び何かをことづけると、スサリアの近くに近寄り、顎を押さえて口を開かせた。
その時点で何も反論できず、震える手を動かそうとするが抵抗も皆無に等しかった。
「そなたは世のものだ…誰にも渡さぬっ…!」
そしてすぐに口に何かを注ぎ込まれて意識が飛んだのだった。
頭ではひたすら我が子スルトの名を呼び、目の前の息子に手を差し伸べた。
意識を失ったスサリアをタケトルは横抱きにして、地下へと連れていった。
ここは王族を幽閉する時に使う部屋だ。部屋の中は王族が使うと言う事もあってか、美しい調度品で並べられている。
窓もなく、一部のものにしか知られていない場所だった。
タケトルは、スサリアを横たわらせて、側近を下がらせるとスサリアの頬に手を添えた。
「そなたを愛している。…だからこそ他の男を見ることさえ耐え難い程なのに…そなたの心を締めるのが我でない事など……許さぬっ…!」
悲痛な思いを吐き出して、タケトルはスサリアを抱きしめてその隣添い、彼女の顔を見つめ続けた。
その時スサリアの瞳に一雫涙が落ちた。
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