愛しい貴方へ

はなおくら

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 王タケトルは目の前の王妃スサリアを心配しての言葉だった。

 正直なところ親子で出かけると言うので内密に偵察隊を密かにつけて後を追わせていた。

 馬車から降りるなり彼女は侍女1人息子1人と護衛もつけず森の中に入ったと言う。

 ここまでであればピクニックの様なものかと考えていたが、追った偵察隊から聞いた話には驚いた。

 彼女は何もない大木へと姿を消したと言う。
 しばらく持ってみると出てきた時には魔法使いと一緒だったと、そして侍女を残して一人で帰ってきたと言うのだ。

 彼女が何を考えているのかわからない。

 少し前まで、一緒に過ごす事をこの世の幸せと顔に出るほど表情は朗らかに瞳はきらきら輝いていた。

 それなのに何があったのか彼女からたまにわたしを憎悪の対象の様な瞳で見つめてくる。

 わたしが何をしたと言うのだろうか?

 考えてみてもわからない。
 そして今息子を抱いて帰ってきた我が妻が気になり、待っていたのだがやはりそっけない。

 だが人から見れば可愛げのない女と見えるかもしれないが、わたしの目からは愛らしく、愛しく、目が身体が自然と動いてしまう。

 わたしと関わりたくないのだろう…。
 だがそれでも逃してやることなど出来ない。

「そなたの行いは無謀だと思うのだが…?」

 そういうと彼女の表情がピクッと動いた。

 それすらも愛おしい…。わたしはおかしいのだろう。

「…申し訳ありません…。以後気をつけます。」

 淡々と言って階段を我が息子を連れて上がっていった。

 追いかけたい。抱きしめたい。

 だがそんな事をしてしまえば、彼女はわたしに心を見せないだろう…。

 わたしはただただ彼女の背中を見つめる事しか出来なかった。

 一国の国王が情けない話だ。


 あれからどれくらい経っただろう。暇を出したタタラが帰ってきた。

 タタラからお礼を言われ、そして小さな箱と手紙を渡された。タラミからだ。

 “女王陛下ごきげん麗しく。昨日さくじつは訪問ありがとうございました。そして我々姉弟共に配慮頂き感謝しかありません。本題に入らせて頂きます。あれからいろいろと考えたのですが王妃様や私が何かを変えても同じ所へ行き着く場合…最悪の場合を考えた末こちらをご用意しました。”

 ここまで読んでスサリアは箱を開け、中身を手に取った。
 中には赤い小さなリンゴが二つ入っていた。

「何かしら…?」

 そう呟いてまた手紙の続きに目を通した。

“こちらはりんごを魔法で小さくして持ち運びできるように致しました。これには強力な魔法をかけています。このりんごを握りしめ、王妃様、王子様、タタラ、この3人に何か危険があれば自動的に魔法が発動してあなた方を守ってくれるでしょう。タタラには一つお守りと言って持たせてあります。”
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