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傍に
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パーティー当日、アビーは緊張していた。
そしてハンスに教えられた注意事項を思い出していた。
「アビー、よろしいですか?まず旦那様の事を呼ぶ時は、ケロウ様と。そして男性に話しかけられたときには、何も言わずに、目も合わせない事。」
「はい…でも話しかけられても無視していいものでしょうか?旦那様が悪く言われませんか?」
「大丈夫。旦那様も了承済みです。旦那様を信じなさい。」
「…はい。」
「後、衣装は当日届けさせます。それを着て玄関広場に行くように。よろしいですね。他には気になる事はありますか?」
「いえ、大丈夫だと思います。」
そうして会話が終わった。
その時のことを、頭で回想していると部屋の戸が鳴った。
戸を開けると、大荷物を抱えたケナと何人かのメイドが部屋に入ってきた。
ケナはアビーを見ると、
「久しぶりだね!元気だったかい?」
久々のケナの再会にアビーはうれしくなった。
「ケナさん!どうしてケナさんが?」
「旦那様が、アビーも私だったら安心するだろうと指名してくれたのさ!」
「嬉しいです。ありがとうございます。」
「お礼を言うのはまだ早いよ!さぁ綺麗にしてめいいっぱい楽しんできな!」
「はい!」
そう言うと、ケナは笑顔を返した。そして隣の箱をアビーに渡した。
「アビー、開けてみな。旦那様からの贈り物だよ。」
そう聞くと、アビーは恐る恐る箱と開けた。中には、アビーの瞳の色と同じ可愛らしい黄緑のドレスが出てきた。
繊細な刺繍が施され白い宝石が散りばめられていた。上に羽織れる様にとシルク素材のケープが入っていた。
「こんな素敵なドレス初めて見ました。でも私…似合うでしょうか…旦那様にがっかりされないでしょうか?」
アビーはドレスを見て気落ちしているとケナは笑い飛ばした。
「いいから来てみな。答えは鏡を見てからだよ!」
ケナを始め、傍に控えていたメイド達が、ケナを、綺麗に着飾っていった。
準備が終わり、アビーはケナの方を向き言った。
「ケナさん…どうですか?」
そういうと、ケナが笑顔のままアビーの手を引き鏡の前に立たせた。
アビーは、自分の姿をそっと見た。すると目の前には、今までの自分ではない誰か立っていた。
「…綺麗…これが私?」
そう問うと、
「そうさ!アビー誰よりも綺麗だよ。自信を持ちな。このドレスは旦那様が直々に作られせたんだ。」
「えっ?旦那様が?」
(旦那様が私の為にここまでしてくれたなんて…今すぐ会いたい。)
気持ちを熱くさせていると、顔に出ていたのだろう。ケナが笑った。
「アビー、お前は可愛いねぇ。めいいっぱい旦那様を夢中にさせてやりな!」
「ケナさん!…もう…。」
そう言ってアビーが照れていると、戸を叩く音が聞こえた。
外からハンスが入ってきてアビーを見た。
「アビーよく似合っていますね。早速で申し訳ないのですが、今旦那様の帰りがすこし遅くなると連絡がきました。」
「ありがとうございます。わかりました旦那様が帰るまで、お待ちしています。」
そう返すと、ハンスがアビーに告げた。
「アビー、少しだけ話をよろしいですか?」
「はい。大丈夫です。」
そういうと、ハンスはケナの方を見て、
「ケナさん、すまないが席を外してもらえますか?」
「わかりました。アビー楽しんできな。」
そう言って、アビーの頭を撫で他のメイドと共に部屋を出た。
暫くの沈黙の後、ハンスは口を開いた。
「アビー、あなたは旦那様に奥様がいた事を知っていますか?」
「はい…村では有名な話でした…。」
そういうと、ハンスは遠い目をして話しだした。
「旦那様と奥様は、政略結婚ではあったが、婚約する前から愛し合っておられた。小さい頃からいつも一緒で私たち使用人も微笑ましく見守っていました。」
アビーは、ケロウとカーラはそんな昔から一緒にいたのか、それなら絆は深いものだろうと思った。
「大きくなり、政略結婚で婚約してなお、2人は強い絆で結ばれていた様に思います。しかし結婚をしてこれからと言うときに、奥様は病で亡くなられ、旦那様の落胆ぶりは見ていられなかった。」
その事は、アビーも強く記憶に残っている。ケロウを哀れに思い、カーラに何故死んだのかと怒りを向けた事もあった。
「お忍びで村の見回りやパーティーの出席。どこへ行くのも当たり前だったお2人だったが、奥様が亡くなった事で、旦那様は引き籠ってしまわれ、私たちも心配でたまらなかった。」
その頃アビーも共に泣き、心配した。
家族を困らせてしまうほどに。
ふと、ハンスが何故今この話をしてくれるのか気になり口を開いた。
「私にとっても辛い思い出です。ハンス様、あなたは何故この事を私に話してくれたのですか?」
そう聞くと、ハンスは微笑みながら言った。
「あなたが、傍についてからケロウ様がだんだんと元気になられてきた。この前のダンスのレッスンの時、あなたと踊るあの方の笑顔を見たのです。嬉しかった。あの頃の旦那様にもどったと…。あなたには、旦那様の傍にいつまでもいて欲しい、押しつけですがこの話をさせて頂きました。」
アビーは自分が旦那様に良い影響を与えられている事は嬉しかった。そして決意を込めて。
「私に出来る力でお仕えいたします。ですが、まだまだ未熟者でどうか一緒お手伝いして頂けると嬉しいです。」
アビーが照れながら微笑むと、ハンスは安心して、
「私こそよろしくお願いします。」
と言って涙を流した。
そしてハンスに教えられた注意事項を思い出していた。
「アビー、よろしいですか?まず旦那様の事を呼ぶ時は、ケロウ様と。そして男性に話しかけられたときには、何も言わずに、目も合わせない事。」
「はい…でも話しかけられても無視していいものでしょうか?旦那様が悪く言われませんか?」
「大丈夫。旦那様も了承済みです。旦那様を信じなさい。」
「…はい。」
「後、衣装は当日届けさせます。それを着て玄関広場に行くように。よろしいですね。他には気になる事はありますか?」
「いえ、大丈夫だと思います。」
そうして会話が終わった。
その時のことを、頭で回想していると部屋の戸が鳴った。
戸を開けると、大荷物を抱えたケナと何人かのメイドが部屋に入ってきた。
ケナはアビーを見ると、
「久しぶりだね!元気だったかい?」
久々のケナの再会にアビーはうれしくなった。
「ケナさん!どうしてケナさんが?」
「旦那様が、アビーも私だったら安心するだろうと指名してくれたのさ!」
「嬉しいです。ありがとうございます。」
「お礼を言うのはまだ早いよ!さぁ綺麗にしてめいいっぱい楽しんできな!」
「はい!」
そう言うと、ケナは笑顔を返した。そして隣の箱をアビーに渡した。
「アビー、開けてみな。旦那様からの贈り物だよ。」
そう聞くと、アビーは恐る恐る箱と開けた。中には、アビーの瞳の色と同じ可愛らしい黄緑のドレスが出てきた。
繊細な刺繍が施され白い宝石が散りばめられていた。上に羽織れる様にとシルク素材のケープが入っていた。
「こんな素敵なドレス初めて見ました。でも私…似合うでしょうか…旦那様にがっかりされないでしょうか?」
アビーはドレスを見て気落ちしているとケナは笑い飛ばした。
「いいから来てみな。答えは鏡を見てからだよ!」
ケナを始め、傍に控えていたメイド達が、ケナを、綺麗に着飾っていった。
準備が終わり、アビーはケナの方を向き言った。
「ケナさん…どうですか?」
そういうと、ケナが笑顔のままアビーの手を引き鏡の前に立たせた。
アビーは、自分の姿をそっと見た。すると目の前には、今までの自分ではない誰か立っていた。
「…綺麗…これが私?」
そう問うと、
「そうさ!アビー誰よりも綺麗だよ。自信を持ちな。このドレスは旦那様が直々に作られせたんだ。」
「えっ?旦那様が?」
(旦那様が私の為にここまでしてくれたなんて…今すぐ会いたい。)
気持ちを熱くさせていると、顔に出ていたのだろう。ケナが笑った。
「アビー、お前は可愛いねぇ。めいいっぱい旦那様を夢中にさせてやりな!」
「ケナさん!…もう…。」
そう言ってアビーが照れていると、戸を叩く音が聞こえた。
外からハンスが入ってきてアビーを見た。
「アビーよく似合っていますね。早速で申し訳ないのですが、今旦那様の帰りがすこし遅くなると連絡がきました。」
「ありがとうございます。わかりました旦那様が帰るまで、お待ちしています。」
そう返すと、ハンスがアビーに告げた。
「アビー、少しだけ話をよろしいですか?」
「はい。大丈夫です。」
そういうと、ハンスはケナの方を見て、
「ケナさん、すまないが席を外してもらえますか?」
「わかりました。アビー楽しんできな。」
そう言って、アビーの頭を撫で他のメイドと共に部屋を出た。
暫くの沈黙の後、ハンスは口を開いた。
「アビー、あなたは旦那様に奥様がいた事を知っていますか?」
「はい…村では有名な話でした…。」
そういうと、ハンスは遠い目をして話しだした。
「旦那様と奥様は、政略結婚ではあったが、婚約する前から愛し合っておられた。小さい頃からいつも一緒で私たち使用人も微笑ましく見守っていました。」
アビーは、ケロウとカーラはそんな昔から一緒にいたのか、それなら絆は深いものだろうと思った。
「大きくなり、政略結婚で婚約してなお、2人は強い絆で結ばれていた様に思います。しかし結婚をしてこれからと言うときに、奥様は病で亡くなられ、旦那様の落胆ぶりは見ていられなかった。」
その事は、アビーも強く記憶に残っている。ケロウを哀れに思い、カーラに何故死んだのかと怒りを向けた事もあった。
「お忍びで村の見回りやパーティーの出席。どこへ行くのも当たり前だったお2人だったが、奥様が亡くなった事で、旦那様は引き籠ってしまわれ、私たちも心配でたまらなかった。」
その頃アビーも共に泣き、心配した。
家族を困らせてしまうほどに。
ふと、ハンスが何故今この話をしてくれるのか気になり口を開いた。
「私にとっても辛い思い出です。ハンス様、あなたは何故この事を私に話してくれたのですか?」
そう聞くと、ハンスは微笑みながら言った。
「あなたが、傍についてからケロウ様がだんだんと元気になられてきた。この前のダンスのレッスンの時、あなたと踊るあの方の笑顔を見たのです。嬉しかった。あの頃の旦那様にもどったと…。あなたには、旦那様の傍にいつまでもいて欲しい、押しつけですがこの話をさせて頂きました。」
アビーは自分が旦那様に良い影響を与えられている事は嬉しかった。そして決意を込めて。
「私に出来る力でお仕えいたします。ですが、まだまだ未熟者でどうか一緒お手伝いして頂けると嬉しいです。」
アビーが照れながら微笑むと、ハンスは安心して、
「私こそよろしくお願いします。」
と言って涙を流した。
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