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 目が覚めればまだ夜明け前の薄暗い夜だった。

 横では眠る彼を尻目に、脱ぎ捨てた服からブローチを取り出して、ベッドの横に座り込んで見つめていた。

 今まで自分が身を引く事に必死になって、ハリアの気持ちは無視していた事が、申し訳なく思えた。

 彼と離れて、どれだけこのブローチに気持ちを込めてきた事だろうか。

 そう思った見つめていると、腰のあたりを抱きしめられた。

 振り返ると、少しムッとしたハリアの顔があった。

 彼は不機嫌ながら眠そうにこちらをみている。

 その姿が可愛らしく想える。

 ハリアの視線の先は、わたしの手の中のブローチをみている。

 わたしは彼に本当のことを話そうと、抱きつく彼の手を解いて、彼の胸の中に入ってブローチを彼に見せた。

 ハリアは何も言わずわたしの動きを見ていた。

「これね、ハリアの元を離れた時に買ったの。」

「………。」

 ハリアは何か言いたげにしているが何も言わずにいてくれる。

「わたしが離れて身を引けば、あなたが幸せになれると思ってた。でもこれは偽善な言葉ね。本当はあなたがわたしを捨てて去ってしまうのが怖かったの…。」

「セレーナ…っ。」

 何か言いたそうにするハリアを私は見つめるが彼は押し黙ってくれる。

「あなたが他の人を選ぶ姿を想像して、その姿を見るのがいやで、屋敷を離れてみたはいいけど、実際は全然違った…。」

 わたしはブローチを見つめる。

「慣れない生活は大変だけど、苦にならなかったけどあなたが居ないのは辛くて、それでお店で見つけたの。」

 そう言ってブローチをハリアに渡した。

 彼は大切そうにブローチに口付けした。

 そんな彼の気持ちが嬉しかった。

「セレーナ、君の気持ちを聞けて嬉しいよ。僕だって同じ気持ちだよ。君のいない日々なんて地獄でしかなかったから…。」

 彼はそのことを思い出しているのだろう。

 目に光がなく何も映していない様子だった。

 わたしは胸が痛くなり、ハリアの瞳に自分を映して欲しくて瞳を見つめた。

「…ハリア…本当にごめんなさい。もうあなたの側を離れたくないっ…!」

 最後気づけば涙が流れていた。

 そんなわたしをハリアは優しく撫でてくれる。

「きみがそばにいてくれるなら、僕は幸せだよ。」

「わたしもよ…。」

 私達はお互い唇を重ね合わせて、互いの体温を確かめ合う様に抱きしめ合った。

 2人の気持ちが通じ合って幸せななか、ハリアは少し不満そうにいった。

「そういえば、きみが抱きついていたあの男は?君のあんなはしゃいだ姿が見たことないよ。」

 ハリアが不機嫌そうに伝えてくるので、わたしは嬉しくなりつつ、説明した。
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