愛情に気づかない鈍感な私

はなおくら

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 ハリアと共同でした投資も驚くほどうまく行っている。

 彼の予想が的中してあっという間に手元が潤ってきた。

 それからというもの長い年月をかけて、お金もだいぶ溜まりいつでも出ていける準備は決まった。

 私たちはついに20歳という年齢を迎えたのだった。

 今まで彼とは、仕事の話や好きなことを友人の様に話してきた。

 彼に好きな人ができたらお別れなのだと実感している。

 今ハリアは私の手を握り、ダンスを踊っている。

 呼吸の合うダンスに我ながら誇らしく思った。

 でもその時がついにきてしまったのだ。

 緑の艶がかったロングに黒色の魅惑的な瞳を持った令嬢、まさにハリアに用意された様な人だった。

 その令嬢にハリアと近づいて行った。

 その令嬢ハーブ様のお父様の会社に投資した事でできた縁だった。

 ハーブ様はにこやかに笑い、ハリアも他の令嬢には見せたことない程優しい笑みを浮かべている。

「プライアー公爵子息、子息夫人、お会いできて嬉しく思います。」

「ハーブ嬢久しぶりだね。」

 ハリアはそう返して私も続いた。

「ハーブ嬢お元気でしたか?」

「はい…。」

 彼女はと和やかな会話を楽しんでいると、ハーブの父ルーマー男爵がきた。

「プライアー公爵子息殿、ご婦人殿、お元気にされていましたか?」

「ああ、そちらは変わりないかな?」

「おかげさまで順調でございます。」

 ルーマー男爵も交えて話をしていると、何やらもじもじした様子のハーブ嬢をルーマー男爵は気づき、申し訳なさそうに私とハリアに言った。

「プライアー公爵子息殿、もしよければ娘と踊っていただけないだろうか?」

「……。」

 突然の申し出にハリアは黙った。

 私はすかさず、ハリアの裾を引っ張ると彼は私の方に顔を向けたので、私が踊ってはどうかと頷けば渋々と言った様子でハーブ嬢をエスコートして広場へと向かった。

 隣のルーマー男爵は私にお礼を何度も言うと、人混みへと去って言った。

 彼も娘の気持ちに気がついて親心が出たのだとわかっている。

 自分から促しておきながら、見つめ合う二人を眺めて、苦しくて息ができないほど切なかった。

 目頭が熱く涙が溢れ落ちる前に、その場を退場しようとしたその時、目の前に一人の子息が立っていた。

 この男のところにも投資活動を行っており顔見知りだった。

 こちらの事情がわからない様子で話しかけてくるが、それが今回はありがたかった。

 ダンスに誘われて途中から参加して踊った。

 横目で、ハリアとハーブ嬢を見つめてお似合いの二人にサッと視線を逸らした。



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