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王太子殿下に頼んだある事とは…。
私が望んで愛人になりジョセフ様を捨てる事。
そして最後に二人で合わせて欲しいという事だった。
護衛は私を案内すると、少し距離を置いたところで待機し出した。
目の前にいるジョセフ様は、貴族としての待遇はおろか、放置されていた事が伺えた。
ぐったりとしながら、壁に背を預けて横たわっている。
その様子に涙が出そうになる。それを堪えて私は冷たくジョセフ様の名前を呼んだ。
「……ジョセフ様。」
ジョセフ様はすぐに顔を上げて私の近くにやってきた。
檻越しでの再会に、彼に縋りつきたくなったが私は汚いものを避ける様な態度をした。
「ジェーンっ…‼︎」
驚く彼に私は彼の目を見れずに口を開いた。
「お別れに参りました。貴方とは離縁させていただきます。」
「…何をいってるんだっ…。」
「貴方にはもう興味もありません。それよりももっと贅沢をさせてくれる人がいるんです。」
傲慢なふりをするたびに自分が傷ついていくのが嫌というほどわかった。
目の前で傷ついた顔を浮かべるジョセフ様に心で詫びた。
「嘘だ…君は無理やり言わされてるだけだ!」
ジョセフ様が檻を力一杯握りしめるせいで、手から血が出てくる。
「これでお別れです…。」
私は近衛兵を呼び、ジョセフ様を檻から出してもらった。
「待ってくれ…!ジェーンっ‼︎」
兵士に強引に連れて行かれるジョセフ様を見えなくなるまで見つめていた。
ようやく彼の姿が見えなくなった瞬間、床に崩れ落ちた。
目から次から次へと流れる涙をそのままに彼に対する恋慕が顔を出したがる。
「ジョセフ様…愛してますっ…。」
変わらない愛を誰もいない場所でそっと口にした。
「ジェーン。」
名前を呼ばれたが、振り向く気力もなくそのまま過ごす。
相手は気にしてない様に後ろから抱きしめてきた。
嫌悪感を抱きつつも、もう自分には拒むことさえできないのだと理解した。
あれからジョセフ様とは一度も会っていない。
ジョセフ様から何度か会いにきてくれているが、会わない様にしている。
王太子は毎日顔を出しては、入れるときまで一緒に過ごす事が多い。
周りの使用人の話によると、王様やお妃様は王太子の言葉を信じた様で私に対して軽蔑の意を持っている。
故にここで誰にも会わずに日々を過ごしていた。
王太子に対して少しも情が湧かない。
ただジョセフ様やジョナサンがいる場所を空を見上げて、会いたい気持ちを紛らわせていた。
「君がいてくれて私は幸せだ…。」
王太子殿下はうっとりとした顔でこちらを見つめてくる。
私が望んで愛人になりジョセフ様を捨てる事。
そして最後に二人で合わせて欲しいという事だった。
護衛は私を案内すると、少し距離を置いたところで待機し出した。
目の前にいるジョセフ様は、貴族としての待遇はおろか、放置されていた事が伺えた。
ぐったりとしながら、壁に背を預けて横たわっている。
その様子に涙が出そうになる。それを堪えて私は冷たくジョセフ様の名前を呼んだ。
「……ジョセフ様。」
ジョセフ様はすぐに顔を上げて私の近くにやってきた。
檻越しでの再会に、彼に縋りつきたくなったが私は汚いものを避ける様な態度をした。
「ジェーンっ…‼︎」
驚く彼に私は彼の目を見れずに口を開いた。
「お別れに参りました。貴方とは離縁させていただきます。」
「…何をいってるんだっ…。」
「貴方にはもう興味もありません。それよりももっと贅沢をさせてくれる人がいるんです。」
傲慢なふりをするたびに自分が傷ついていくのが嫌というほどわかった。
目の前で傷ついた顔を浮かべるジョセフ様に心で詫びた。
「嘘だ…君は無理やり言わされてるだけだ!」
ジョセフ様が檻を力一杯握りしめるせいで、手から血が出てくる。
「これでお別れです…。」
私は近衛兵を呼び、ジョセフ様を檻から出してもらった。
「待ってくれ…!ジェーンっ‼︎」
兵士に強引に連れて行かれるジョセフ様を見えなくなるまで見つめていた。
ようやく彼の姿が見えなくなった瞬間、床に崩れ落ちた。
目から次から次へと流れる涙をそのままに彼に対する恋慕が顔を出したがる。
「ジョセフ様…愛してますっ…。」
変わらない愛を誰もいない場所でそっと口にした。
「ジェーン。」
名前を呼ばれたが、振り向く気力もなくそのまま過ごす。
相手は気にしてない様に後ろから抱きしめてきた。
嫌悪感を抱きつつも、もう自分には拒むことさえできないのだと理解した。
あれからジョセフ様とは一度も会っていない。
ジョセフ様から何度か会いにきてくれているが、会わない様にしている。
王太子は毎日顔を出しては、入れるときまで一緒に過ごす事が多い。
周りの使用人の話によると、王様やお妃様は王太子の言葉を信じた様で私に対して軽蔑の意を持っている。
故にここで誰にも会わずに日々を過ごしていた。
王太子に対して少しも情が湧かない。
ただジョセフ様やジョナサンがいる場所を空を見上げて、会いたい気持ちを紛らわせていた。
「君がいてくれて私は幸せだ…。」
王太子殿下はうっとりとした顔でこちらを見つめてくる。
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