12 / 22
12
しおりを挟む
小走りで人のいるところに行く途中、前からジョセフ様が現れた。
「ジェーン、どうしたんだ?」
「ジョセフ様、先ほど体調を崩された青年が身動き取れない様で、誰か呼びにきたのです。」
「わかった、すぐ知らせよう。」
ジョセフ様と近くの衛兵を呼んで一緒にその青年のところに駆けつけた。
青年は今も苦しそうな呻き声をあげている。
衛兵は青年の顔を見るなり声を上げた。
「王太子様、大丈ですか?」
「っ……あぁ…。」
衛兵の声に私たちも礼をした。
王太子は苦しそうに御礼を言ってくると、衛兵に連れられてその場を後にしたのだった。
「まさか王太子様だったとは、気が付きませんでした。」
「顔が見えなかったのだから仕方ない。ジェーン、君も疲れただろう…少し休もう。」
「はい。」
ジョセフ様に支えられながら、私たちは大広間へと戻っていったのだった。
数日後、王宮から呼び出しがあった。
いつもならジョセフ様だけの事なのだが、なぜか私まで呼び出しがあった。
二人で登城すると、王様と王妃様の横にあの時の王太子様がいらっしゃった。
「我が息子が世話になった様だ。心より感謝申し上げる。」
王様は人のいい性格でこちらに御礼を伝えてきた。
「当然の事をしたまでです。王太子様が元気になられて安堵しました。」
ジョセフの言葉と共に私も頭を下げた。
顔を上げると、王太子様からの視線を感じて彼の顔を見つめた。
彼は目を逸らして落ち着きのない態度だった。
気になりながらも、知らぬふりをしてジョセフ様や王様の言葉に耳を傾けたのだった。
王様から用があるとジョセフ様は呼び出された為、王宮の庭園で時間を潰していた。
よりどり咲くたちを眺めながら、頬が緩む。
「綺麗だ…。」
頭上から声がかかり頭を上げるとそこには王太子様がいらっしゃった。
「王太子殿下。」
慌てて頭を下げると、王太子は慌てて頭を上げさせてくれた。
「気軽にしてください。それよりこの前の御礼を言いにきたのです。」
私は首を横に振った。
「大したことはしていません。お身体何ともありませんか?」
私がそう聞くと王太子は恥ずかしそうに答えた。
「はい、おかげで助かりました。」
「それを聞いて安心しました。では失礼します。」
「あのっ…!」
下がろうとした私の手を王太子は掴んだ。
そしてあっという間に両手を包む様に掴まれた。
「もしよければ今後も会ってくださいませんか?」
驚いた私は断りを入れようと言葉を発したその時、目の前にジョセフが背を向けて立っていた。
「ジェーン、どうしたんだ?」
「ジョセフ様、先ほど体調を崩された青年が身動き取れない様で、誰か呼びにきたのです。」
「わかった、すぐ知らせよう。」
ジョセフ様と近くの衛兵を呼んで一緒にその青年のところに駆けつけた。
青年は今も苦しそうな呻き声をあげている。
衛兵は青年の顔を見るなり声を上げた。
「王太子様、大丈ですか?」
「っ……あぁ…。」
衛兵の声に私たちも礼をした。
王太子は苦しそうに御礼を言ってくると、衛兵に連れられてその場を後にしたのだった。
「まさか王太子様だったとは、気が付きませんでした。」
「顔が見えなかったのだから仕方ない。ジェーン、君も疲れただろう…少し休もう。」
「はい。」
ジョセフ様に支えられながら、私たちは大広間へと戻っていったのだった。
数日後、王宮から呼び出しがあった。
いつもならジョセフ様だけの事なのだが、なぜか私まで呼び出しがあった。
二人で登城すると、王様と王妃様の横にあの時の王太子様がいらっしゃった。
「我が息子が世話になった様だ。心より感謝申し上げる。」
王様は人のいい性格でこちらに御礼を伝えてきた。
「当然の事をしたまでです。王太子様が元気になられて安堵しました。」
ジョセフの言葉と共に私も頭を下げた。
顔を上げると、王太子様からの視線を感じて彼の顔を見つめた。
彼は目を逸らして落ち着きのない態度だった。
気になりながらも、知らぬふりをしてジョセフ様や王様の言葉に耳を傾けたのだった。
王様から用があるとジョセフ様は呼び出された為、王宮の庭園で時間を潰していた。
よりどり咲くたちを眺めながら、頬が緩む。
「綺麗だ…。」
頭上から声がかかり頭を上げるとそこには王太子様がいらっしゃった。
「王太子殿下。」
慌てて頭を下げると、王太子は慌てて頭を上げさせてくれた。
「気軽にしてください。それよりこの前の御礼を言いにきたのです。」
私は首を横に振った。
「大したことはしていません。お身体何ともありませんか?」
私がそう聞くと王太子は恥ずかしそうに答えた。
「はい、おかげで助かりました。」
「それを聞いて安心しました。では失礼します。」
「あのっ…!」
下がろうとした私の手を王太子は掴んだ。
そしてあっという間に両手を包む様に掴まれた。
「もしよければ今後も会ってくださいませんか?」
驚いた私は断りを入れようと言葉を発したその時、目の前にジョセフが背を向けて立っていた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

シークレット・ガーデン~英国紳士の甘い求愛と秘密~
東川カンナ
恋愛
とある事情から、しばし休暇を取るために幼少期を過ごしたイギリスの湖水地方を訪れた莉緒。
到着早々、ステイ先の知り合いと連絡が取れなくなり困り果てていたところ、その昔一緒に遊んだ少年・レオンと再会し、幸運にも彼の持つ別宅に置いてもらえることに。
英国紳士そのもの、非の打ちどころのないレオンと一つ屋根の下で過ごすうちに、二人の関係はどんどんと深まっていく。
けれど蕩けるように甘く優しいこの関係には、実はいくつかの大きな秘密があって―ーーー
甘く優しい英国紳士、美しい湖水地方、日本とはまた違う郷土料理。英国で過ごす特別なひと時を綴る物語。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

彼の親に振り回されました
しがと
恋愛
高校生で出会い一緒の時間を過ごしていくことでお互いに惹かれあっていった男女。告白直前まで行くものの、彼の父親によって2人の間に大きな距離ができてしまう。高校、大学を卒業した後もお互い想い合っていたが、彼女は彼を諦める決意をする。しかし、2人の友人の協力もあって、ついに再会して……。
初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉
濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。
一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感!
◆Rシーンには※印
ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます
◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる