再びあなたに会えて…

はなおくら

文字の大きさ
上 下
11 / 22

11

しおりを挟む
「ジョセフ様っ…⁉︎」

 シルフィ令嬢は先ほどとは違って、高い声で反応した。

 そんな彼女のことを睨みつけるジョセフ様に、私は声も出なかった。

「何をしている…。」

「いえ…何も…彼女に身の程を弁えてもらおうと…。」

 シルフィ令嬢の言葉に、ジョセフ様は掴んだ腕をさらに強めた。

 相当痛いのか顔を歪ませて涙目になっている。

「私の妻となる婚約者に、手を出しておいて無傷でいられると…?」

 ジョセフ様のその一言にシルフィ令嬢は怒りをあらわにした。

「その席は私がなるはずだったものです。途中から来た卑しい女にとられてたまるものですかっ!」

 シルフィ令嬢の睨みに、怯みそうになるが、手を握りしめて耐えた。

「身の程を知らないらしい。私の命を奪う様な者に顧みることなどしない…。」

「何故…それを…。」

 顔面を蒼白にさせたシルフィ令嬢は、狼狽出し震え出した。

「調べはついてる。これから抗議させてもらう…もう二度と私達の前に現れることはないと思えっ…!」

 最後力強く怒気の孕んだ声でシルフィ令嬢に言い放った。

 令嬢は何も言わずに、近くの傭兵に連れて行かれた。

 彼女の後ろ姿を眺めたまま茫然としていると、目の前が真っ暗になった。

 気づけばジョセフ様の腕の中にいた。

「すまなかった…怖い思いをさせた…。」

 彼が心底心配してくれ嬉しくなり、首を横に振って彼の抱擁に手を回した。

 私の花嫁修行も無事終わり、ついにジョセフの妻として認められる日が来た。

 目の前で頭を下げる領地の人々を見回し、見る目が変わったことを感じる。

 これからは、弱気でいるわけにいかない。

 腕の中で、ニコニコしてるジョナサンを見てより想いが強くなっていったのだった。

 ジョセフは私に寄り添ってくれている。

 そして親子での幸せな時間が訪れていた。

 私とジョセフ様は、ジョナサンが寝静まって寄り添うことが増えた。

 ただそばにいて同じ時を過ごすことが幸せでたまらない。

 しかし一難去ってまた一難。

 時間は起きた。

 それは王太子の戴冠式のことだった。

 常に共にいるジョセフと少しの間離れていた時だった。

 目の前でうずくまる青年がいた。

 慌てて近寄ると、彼は深く険しい表情を浮かべていた。

「ううっ…。」

 苦しむ青年の元へしゃがみ込み声をかけた。

「どうされましたか?」

「っ……。」

 事情を話せないほど苦しんでいる。

 私は、汗をかいている彼の顔をハンカチで拭き背中をさすった。

 少しマシになってきたのか、落ち着いた様子になったので、彼にハンカチを持たせて人を呼びに行くことにした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

シークレット・ガーデン~英国紳士の甘い求愛と秘密~

東川カンナ
恋愛
とある事情から、しばし休暇を取るために幼少期を過ごしたイギリスの湖水地方を訪れた莉緒。 到着早々、ステイ先の知り合いと連絡が取れなくなり困り果てていたところ、その昔一緒に遊んだ少年・レオンと再会し、幸運にも彼の持つ別宅に置いてもらえることに。 英国紳士そのもの、非の打ちどころのないレオンと一つ屋根の下で過ごすうちに、二人の関係はどんどんと深まっていく。 けれど蕩けるように甘く優しいこの関係には、実はいくつかの大きな秘密があって―ーーー 甘く優しい英国紳士、美しい湖水地方、日本とはまた違う郷土料理。英国で過ごす特別なひと時を綴る物語。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。 一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感! ◆Rシーンには※印 ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます ◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

彼の親に振り回されました

しがと
恋愛
高校生で出会い一緒の時間を過ごしていくことでお互いに惹かれあっていった男女。告白直前まで行くものの、彼の父親によって2人の間に大きな距離ができてしまう。高校、大学を卒業した後もお互い想い合っていたが、彼女は彼を諦める決意をする。しかし、2人の友人の協力もあって、ついに再会して……。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...