再びあなたに会えて…

はなおくら

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「ジョセフ、すっかり戻った様だな。」

「はい、父上…。」

 ジョナサンとは違って、当主らしく厳しい声色でジョセフに話しかけた。

 私は混乱しながらも2人の会話に耳を傾ける。

「それで、何かようかな?」

 当主の威厳ある言動に、2人で意を決して口を開いた。

「父上、彼女をここに呼んでいただいたこと感謝しています。おかげで私自身決心が固まりました。」

「………。」

 親子の睨み合いが始まった。

「彼女と結婚します。」

 ジョセフと父親の間に沈黙がしばらく過ぎていた。

 私自身、同じ気持ちなのだと彼の隣に立っている。

「わかっている。ここまできて反対するつもりはない。ただ…。」

 旦那様は私の方を向いて口を開いた。

「ジョセフの隣に立ちたいならここでのルールに従ってもらう。本来であれば出生は貴族となっているが今回は違う。他のものに見下されない様にしなさい。」

「はい…っ!ありがとうございます。」

 返事をする頃には涙が溢れていた。

 ようやく私たちの間が認められたのだと実感した。

「2人でやってみなさい。」

 そういう時旦那様はまたジョナサンと遊び始めたのだった。

 私達は手を取り合って喜んだ。

 そしてジョナサンは気になる事を言った。

「父上、そういえば何故ジョナサンのことを?」

「………。」

 旦那様は何も言わずに黙ったままだった。

 その様子がおかしく、ジョナサンと共に笑い合ったのだった。

 それからは忙しい日々を送っている。

 ジョセフは跡継ぎな為、夫人としての花嫁教育が実施されている。

 初めて見るものばかりで慣れない事ばかりだったが、ジョセフが隣でサポートしてくれる。

 今はダンスの練習を付き合ってくれていた。

「そうそう、ゆっくり…ゆっくり…。」

「はい…。」

 密着する身体から彼の体温を感じる。

 早鐘打つ鼓動に気づかれたくなくて、儀仗なふりをしているが、彼にはわかる様でクスリと笑われると腰を引かれて尚高くに引き寄せられた。

「……からかわないで…。」

「愛らしい君のせいだよ。本番では誰もが君に目を向けそうで心配だ。」

「そんな事ありません。」

 まるで美女がいる様な事を言われて恥ずかしくなった。

「くくっ…。心配しなくてもぼくが必ず隣にいるから安心していい。」

「はい…。」

こうして彼に翻弄されながらダンスのレッスンが終わった。

あれから半年の歳月が流れた。

日々の積み重ねのおかげか、花嫁教育も無事終えることができた。

これからは、茶会や夜会…たくさんの招待を受けなければならない。

それが慣れ出したら結婚式を挙げる事になったのだった。





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